マスク物語



2020年5月、緊急事態宣言が解除さた。これにより休館だったスポーツクラブの営業が再開された。その後、業界団体の対策方針がまとまったのか、6月中旬から、スタジオレッスンが再開された。参加人数が制限され、参加にはマスク着用が求められた。

この時点ではまだマスクは貴重品だった。実店舗にはほとんど皆無だった。ネットで注文するも、何時手元に届くのか定かではなかった。在庫として50枚程度はあったが、日々使うとなると足りなくなるのは確実でした。
アベノマスクにヒントを得て、布製の手作りマスクを作ってもらうことにしました。しかし、ベースとなる生地は古着で何とかなりましたが、耳にかけるゴムひもが手に入りません。こちらも実店舗は品切れ状態でした。ネットでいろいろ探し、なんとか入手でき数枚の手作りマスクが準備できました。

いよいよ運動開始。その結果日記にも何度か愚痴のように書きましたが、マスクをしての運動は、物凄く息苦しいものでした。特に汗でマスクが鼻や口の周りに張り付くような状態になり口呼吸する度にピタッとくっつき空気が入ってきません。これが気になり運動に対する集中力を奪っていきます。

実体験はありませんが、知識としての高地トレーニング『酸素濃度が薄くなる高地でトレーニングをすることで、身体が効率よく酸素を取り入れられるようになる』をやっているかのような苦しさです。

アスリートを目指すわけではなく、日々の時間潰しと健康維持が目的で身体を動かしているのに、何故こんな苦しい思いをしなければならなか・・・。これがマスク物語の始まりでした。


最初は「ウレタン製のマスクが息苦しくならない」という話が広まり、早々に買い求めました。マスクが増産され、市場に出始めた頃で割高に感じましたがネットで購入できました。不織布のマスクや手作りの布マスクよりは少しマシですが、発汗後に口の周りに張り付くような感覚は無くなりません。息苦しさもほとんど改善されませんでした。何度か洗って使いましたが、
布製のものほどの耐久性もありません。

ここから手作りマスクの改良が始まりました。当初は布地を二重にして、間に紙製のフィルターが入るような構造にしていました。それをジム専用、要するに感染症対策よりもマスクをしているアピールだけ出来る薄っぺらなものを作ってもらいました。結果は余計に張り付いてしまい失敗でした。

さらに、鼻と口のところに空間ができるような立体的な縫製にしてもらいました。結果は汗をかくと布地だけでは立体感を保つ力はなく、空間を確保できませんでした。

「鼻と口のところにテグスを入れるといいですよ」そんな話を聞きつけて、不織布のマスクの鼻の部分に入っている針金を捨てずに利用して、立体縫製を補うようなものも試作しました。これは、息苦しさが少し緩和され効果がありました。しばらくはこれを愛用していました。しかし、洗濯の回数が増えてくると中の金属が布を破って飛び出してきてしまい、耐久性に難ありでした。


マスクの品不足状態が解消されました。注文していたマスクが次々に届きました。布製のマスクに装着するフィルターもこの時期に届きました。一方で進化系のマスクがいろいろ出回るようになりました。ファッションの一部となってカラフルな色や柄、装飾付きのマスクが登場しました。店舗にはマク専用の売り場が出来ました。そんなマスク売り場で「マスクフレーム」なる一品を見つけました。

これは、マスクの中に入れるプラスチック製の物。不織布製でもウレタン製でも布製でも中に入れれば鼻と口の部分に空間ができます。不織布マスクの折り目に引っかかるような構造です。ウレタン製や布製の場合はゴムを少しきつめにしないと、運動中にずり落ちてくる心配だ有ります。それでもこれは画期的でした。効果絶大でした。マスクの材質、形状は無関係に息苦しさが解消できます。現在も愛用しています。これのおかげで、服装やイベントに合わせた手作りマスクが使用できるようになりました。ハロウィンやクリスマスで重宝しました。


さらに各社から工夫された多種多様なマスクが発売されました。スポーツ関連の会社が出しているスポーツ用のマスクをいろいろ検索しました。各社とも長短ありで、今一つインパクトに欠け決めかねていました。そうしているうちにスポーツクラブで「ニンジャシールド」というスポーツ用に特化したマスクが売り出されました。早々に購入したジム友さんが「これはいい」と大絶賛、「全然息苦しくない」そんな感想も聞こえてきました。


1枚990円(税別)です。格安の不織布マスクなら100枚以上買える値段です。欲しいのはやまやまですが、まず詳細を調べてみました。


医療用、産業用ではありませんと注意書きがある。マスクの機能としては内側から外側への飛沫防止効果はありますが、外側から吸い込むほうは、ほとんど効果が見込めないという代物でした。自分の飛沫は飛ばさないけど、誰かが飛ばした飛沫は吸い込む可能性ありということ。まぁ、手作りの薄い布一枚の「マスクつけてるよ」をアピールするだけのマスクよりは効果がありそうです。

思い切って1枚購入しました。早速使ってみた。まずは臭いが気になった。布の臭いなのか、消毒臭なのか。厚手のメッシュと内側の薄いメッシュの二重構造。透かして見ると向こう側が見える。これで、飛沫防止効果が期待できるのか?息苦しさは全く感じません。汗をかいても張り付いてくるような
不快感もない。価格に見合うだけの効果、所謂コストパフォーマンスを満たしている一品でした。あとは運動で発汗してその後洗濯、これを繰り返すので耐久性があるか否かです。


臭いは一度の洗濯で消えました。その後も何度もネットに入れて洗濯機で洗濯をしています。型崩れもなく、通気性も保っています。耐久性の問題もクリアです。


こうして2020年6月から始まったマスク物語が半年間かかって一段落しました。しかし・・・冷静になって考えるとマスクをつける意味は感染予防でした。外からのウイルスの侵入を食い止めること。内側からの飛沫を防止すること。これにつきます。

息苦しさを感じないことや、耐久性、通気性やファッション性は二次機能、三次機能です。快適性を追求した試行錯誤は、マスク本来の機能からすると本末転倒でした。無駄な努力だった。しかし運動して体力を維持することも立派な感染症対策のハズ、自分でそのように慰めています。


半年間の試行錯誤の副産物として、不織布のマスクが100枚以上、ウレタン製のマスクが20枚ほど、手作りの布マスクも30枚、マスク用フィルター紙数百枚、マスクフレーム2個、不織布の針金多数のストックができました。
そしてジムで運動するときは、ニンジャシールドと手作り布マスク+マスクフレームを併用しています。これはマスクしているアピールが優先の状態です。ボランテイア活動は不織布製、この時は感染症対策が最優先、そして買い物などには必要に応じてフィルターを装着した布製のマスクを使用するようにしています。

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