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『東方紅奏論』補足


前置き

どうも、Klavierです。前の記事から結構時間が空いてしまってすみません。今回は先の例大祭で頒布した拙著『東方紅奏論』の内容の補足をしようと思います。この本に関しては今後機会があれば補足を書き加えて再版したいと思っていたのですが、いつになるか全く見通しが立たないので先んじて記事にしてしまいます。随時追記予定。

p.9 紅魔郷ピッチ

いわゆる「紅魔郷ピッチ」について、「A4=440Hzから四分音ズレたピッチ」と説明しましたが、実は曲によってはズレが四分音でないことがあります。具体的に羅列すると以下のようになります

そもそも紅魔郷ピッチではない曲(A4=440Hz)

  • 赤より紅い夢(タイトル画面)

  • ルーネイトエルフ(2面道中)

  • 上海紅茶館 ~Chinese Tea (3面道中)

  • ツェペシュの幼き末裔(6面道中)

  • 魔法少女達の百年祭(EX面道中)

  • 紅より儚い永遠(エンディング)

紅魔郷ピッチで、ズレが四分音の曲(A4=約452Hz)

  • ほおずきみたいに紅い魂(1面道中)

  • 妖魔夜行(1面ボス)

  • おてんば恋娘(2面ボス)

  • メイドと血の懐中時計(5面道中)

  • 月時計 ~ルナ・ダイアル(5面ボス)

  • 亡き王女の為のセプテット(6面ボス)

  • U.N.オーエンは彼女なのか? (EX面ボス)

  • 紅楼 ~Eastern Dream… (スタッフロール)

紅魔郷ピッチで、ズレが四分音でない曲(A4=約455Hz)

  • 明治十七年の上海アリス(3面ボス)

  • ヴワル魔法図書館(4面道中)

  • ラクトガール ~少女密室(4面ボス)

多分これで合ってると思うんですが、確証はないのであくまで参考程度にしてください。ズレが四分音だと普通のチューニングのちょうど中間の音を使うことになるんですが、ズレが四分音でない曲はおそらくA4=455Hzくらいなので、例えば普通のチューニングで言うとCとC♯の間の音を鳴らした場合、若干上の音(C♯)に近いピッチなのかなと思います。が、これもちょっと自信がないので有識者の方のコメントをお待ちしております。

p.16 「赤より紅い夢」拍子

冒頭のリズムが全然わからないって書いたんですが、その後原曲を聴きまくった結果、4/4拍子で始まっていて「いつもの曲」は連符で取るのが正解なような気がしてきました。でもやっぱりよくわかりません。

p.45「明治十七年の上海アリス」(2024/01/03追記)

6/8拍子なのにテンポ表示が「四分音符=144」になっています。6/8拍子は付点四分音符を一拍と数えるので、「付点四分音符=96」が正しいです。考え方としては、付点四分音符は音価が四分音符の3/2倍なので、「四分音符=」を「付点四分音符=」に直す時は「四分音符=」の値を3/2で割ればいいということになります。

p.51「ヴワル魔法図書館」(2024/01/03追記)

上記の「明治十七年の上海アリス」同様、この曲もテンポ表示が「四分音符=」になっていますが、正しくは「付点四分音符=100」です。もっとも、途中で4/4拍子となってからのテンポ表示は「四分音符=150」で合っています。しかし、拍子の項目で、12/8拍子は付点四分音符を一拍と捉えるといいということまで書いているのになぜこのミスを見逃してしまったのか…謎です。

p.75「月時計 ~ルナ・ダイアル」コード

idimがめちゃくちゃ珍しいコードだと書きましたが、このコードが使われている東方原曲の例としては「聖徳太子のペガサス ~Dark Pegasus」(鬼形獣)が挙げられます。この曲のサビは(多分)ⅰ/Ⅴ→ⅰdim/♭Ⅴ→Ⅳ7→Ⅰ/Ⅲ→Ⅶ/♭Ⅲとなっており、かなり変則的な聴き味がします。

p.80 「ツェペシュの幼き末裔」コード

コード[イントロ]で紹介したクリシェ的な進行ですが、色々調べた結果ペダルポイントの一種なんじゃないかと思えてきました。「亡き王女の為のセプテット」に登場する同様の進行も同じです。でも他にふさわしい呼び方がありそうな気もします。有識者の方教えてください。

コード[アウトロ]の部分で、「東方原曲で偽終止が使われるのは珍しい」と書いていますが、パートの終わりなどで偽終止が使われること自体は珍しくありません。ここで書きたかったのは「ループ前のような曲が終わるタイミングで偽終止が使われることは珍しい」ということです。言葉足らずでした。

p.100「U.N.オーエンは彼女なのか?」コード(2024/02/13追記)

原曲を聴き込んだ結果、[イントロ]の5,6小節目のコード進行はおそらくG♭→A♭/C→G♭→Cdim(♭Ⅵ→♭Ⅶ/Ⅱ→♭Ⅵ→ⅱdim)だろうということになりました。7,8小節目は正しいと思います。

[Aメロ]についてなんですが、ここは色々解釈のできる部分で、本書ではキーをB♭mにしているものの、実際の所DmやBmでも分析できます。コード進行の度数表記はキーをDmと捉えると♭ⅵ→v→♭Ⅶ→Ⅵとなり、キーをBmと捉えるとⅶ→♭ⅶ→♭Ⅱ→Ⅰとなるんですが、どれが正しいのかは判断に困ります。最後のコード(B)のルートを主音と捉えるならBmっぽいですが、イントロから転調している感じもないですし、無調になっていると考えるべきなのかもしれません。
なお、この部分のBのコードは、キーをB♭mと捉えるならばC♭とするのが正確です。しかし、色々ややこしいので本書ではBとしています。

コード[サビ]の部分で、「ここは普通のZUN進行です」と書いているんですが、8小節ごとにⅠが使われていてピカルディ終止になっているとも考えられます。「とも考えられます」と言っているのはどういうことかというと、私の耳ではこの部分(サビのラスト)、コードの第三音が聴き取れないんですよね…。というか本当に鳴ってないような気がしてるんですが、これによってiなのかⅠなのかが断定できないのです。個人的にはiだと思っているんですが、Ⅰにしても違和感ないのでもしかしたらⅠなのかもしれません。

p.111-112 統計

111ページの下の表なんですが、「ⅰdim 1曲」が抜けています。本来は右段の一番上に記載するつもりだったんですが、いつの間にか抜けてました。
また、112ページに「Ⅰは『紅魔郷』では一度も使われていません」と書いていますが、上記の通り「U.N.オーエンは彼女なのか?」でⅠが使われていると考えることもできるので、「『私(Klavier)の考えでは』一度も使われていません」と訂正させていただきます。
あと細かい話ですが、転調の統計の表に関して「減五度上」と「減五度下」は実質同じなので統合してしまえばよかったなあと思いました。再版する時は修正します。

p.123 「判読眼のビブロフィリア」コード

[Bメロ]に脱字があります。正しくは「バスがE(F♯)で固定されています。」です。

おわりに

今回の記事は以上になります。改めて見ると『東方紅奏論』の内容には色々不正確なところがあるなと思うんですが、そういった部分は発見次第こうして記事に反映しようと思います。
次回の記事はいつになるかわかりませんが、できれば今月中くらいにとある曲の分析記事を書きたいなぁと思っています。『妖々夢』曲の分析はもうしばらくお待ちください。
では今回はこの辺で。

2023/06/25 「明日ハレの日、ケの昨日」を聴きながら

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