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書籍『現代短歌』とは

 光森裕樹さんのサイト「tankaful」の「資料室」で「『現代短歌』関連書籍」「日本抒情派」の目次が公開されました。

http://tankaful.net/reference
http://tankaful.net/reference/r2
http://tankaful.net/reference/r3

 これは「Tri」第5号(ろんそう!号)に掲載した総目次のデータを加工してもらったものです。

https://note.mu/klage/n/n6dd95b0f8d84

 紙はパラ見できたりして楽しいのですが、検索という意味では使い勝手がよろしくありません。

 もともと光森さんは「季刊 現代短歌雁」の総目次を公開されていました。冨士田元彦さんが関わったというつながりで「Tri」掲載の『現代短歌』関連書籍総目次の掲載を打診し、ひきうけていただきました。ありがとうございます。

 と、いっても書籍『現代短歌』が出て、いきなり「季刊 現代短歌雁」へとつながる訳ではありません。ネット公開にあたり、簡単に紹介します。

 『現代歌人文庫 冨士田元彦歌論集』(国文社)(以下冨士田論集)と「「律」の歩み」(深作光貞/『律’68』 p.238)をもとに「律」と『現代短歌』関連書籍の刊行順を整理します。「Tri」第5号のスクショ貼ります。

※「律」は「リトム」と読みます。現存する「りとむ短歌会」とは直接の関係はないけれど、主宰の三枝昴之さんは『現代短歌』に複数回執筆しているので、存在は念頭にはあったと思われます。

 この他にもシンポジウムで律がかかわっていたり、冨士田さんが協力したものはいろいろあるようですが、キリがなくなるので省略。刊行物としてはこれでだいたいあってると思います。活動としては他にもあったと思っていただければ。

 冨士田元彦さんは1960年に角川書店に入社、「短歌」の編集をされていた方です。1978年から2008年まで歌集歌書を主力とする出版社・雁書館を営んでおられました。

 最初の「律」は、「「詩と詩論」のような雑誌が歌壇に一冊くらいあってもいいのではないか」(「律 短歌と歌論」創刊号「後記」(前田透)p.78)ということで「律 短歌と歌論」というタイトルで1960年12月に刊行されました。主宰、編集長、代表といった肩書は設けられていません。誰が、というよりあのころのあのへんの人たちの活動の結果出たものと考えられます。
 創刊号は書肆ユリイカから、2号(1962年6月)は桜楓社出版から、3号(1963年9月)は「〈律〉発行所」からの刊行です。3号になると表紙デザインも変わり、深作色が強くなります。
 創刊号編集は「近藤芳美・森岡貞香・前田透・深作光貞」(「律 短歌と歌論」前田透「後記」p.78)。
 2号は、「編集担当は近藤芳美、森岡貞香、前田透、深作光貞、篠弘と小野茂樹が実務」(「律 短歌と歌論」2号「後記」(前田透)p.90)。
 3号は「『律』編集会員(五十音順) 岡井隆 近藤芳美 篠弘 塚本邦雄 中井英夫 深作光貞 前田透 森岡貞香」(p.59)とあり、担当編集というかたちの記載はありません。深作光貞、中井英夫が「後記」を執筆。おくづけ(p.98)に「発行人 深作光貞」「編集人 中井英夫」と記載。

 その後、1964年に「フェスティバル律」が開催され、1965年に「ジュルナール律」が刊行されます。「ジュルナール律」は2002年に冬花社より全号復刻されましたので、ご存じの方が多いと思います。
 「律 短歌と歌論」3号から「ジュルナール律」まで、深作さんが中心となって進めたものと考えてよいと思います(冨士田さんは関わりなし。少なくともクレジットされるほどではない)。「Revo律」は三枝浩樹さん編集。深作さんが発行人。冨士田さんよりさらに若い世代に編集を渡すことが目的だったので、冨士田さんの協力なし。

 一方、1961年4月に東京歌人集会が発足。1966年にはすでに活動なく、名前だけになっていました。『現代短歌 '66』はその名前をつかったほうが通りがいいということで「発行 東京歌人集会」となったとのことです(冨士田論集p.52)。『現代短歌』になったからといって深作さんがいなくなる訳ではないです。『現代短歌』は「律」の発展形とらえるべきではないでしょうか。深作さんは『現代短歌 ’72』まで執筆というかたちで関わっておられます。『現代短歌 ’74』以降は執筆なし。

 『現代短歌 '66』の時点では、冨士田さんは委員として名を連ね、「あとがき」を執筆(発行者は藤田武)。『律 '68』になると発行者として名前が記載されています。以降、『現代短歌 '78』まで発行者は変遷がありながら後記にあたる「巻末小記」「巻末記」は冨士田さんが執筆されました。

 そしてこの並びで気になるのは『北の会 '76』ですよね。1960年代前半の若手の動きのなかで北海道で発足したのが「現代短歌・北の会」。
 もともと『現代短歌 '76』という書籍は刊行される予定でした。が、編集作業の遅延により、結果として『現代短歌 '78』として刊行。たまたま『北の会 '76』に冨士田さんが協力したことにより「肩代わり」(冨士田論集p.149)ということになったとのことです。

 『北の会 '76』は当時の一連の動きのなかで生まれた書籍ではあるけれど、『現代短歌』ではありません。なので、このならびで目次を公開するのは適切ではないのかもしれません。
 「肩代わり」という記載にこじつけてねじこんだようなものですが、当時の動きの一端が見えるものとして入れました。

 ……というようなことは冨士田論集でだいたいわかるのですが、ネット公開にあたり流れを示すものが必要と考え、この文章を公開します。冨士田論集に記載の少ない「律」についての比重をおおめにしています。『現代短歌』各号の事情についてはぜひ冨士田論集を御覧ください。
 
 
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関連リンク
 
『現代歌人文庫 冨士田元彦歌論集』(国文社)
http://www.kokubunsha.co.jp/archives/ISBN4-7720-0215-4.html
 
「律 短歌と歌論」創刊号
http://id.ndl.go.jp/bib/000000023997
 
「ジュルナール律」(冬花社のサイト)
http://www.toukasha.com/
 
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「日本抒情派」については下記にて紹介。

https://note.mu/klage/n/na595c2fadf17

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