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バーナム効果|占いにハマる心理と詐欺師の常套手段

「あなたは自分らしく自由であろうとしてますが、周りとの調和を大切にするので輪を乱すような発言や行動は控える傾向がありますね。

好奇心が強い反面、いろいろなことに目移りしてしまう一面もあるのでは?」

もしあなたが占い師から
こんな風に言われたらどう思いますか?

「私のことを見透かしている!」と、その言葉に妙に納得してしまう人もいるのではないでしょうか。

しかし冷静に考えてみてください。この占い師の言葉は、多くの人に当てはまる曖昧で一般的な指摘です。

こうした誰にでも当てはまることを自分ごとだと思い込んでしまう現象を「バーナム効果」と言います。

例えば宝くじであれば当たる確率は極めて低くても「自分だけは当たるかもしれない」という期待を抱いてしまう。恋愛ならふとした瞬間に目が合っただけで、自分に気があるのではないかと錯覚してしまう。

みたいな現象も一種のバーナム効果です。

今回はバーナム効果の仕組みと、この心理作用とどう向き合っていくべきかを考察していきます。

バーナム効果:万人に共通する「私だけ」の幻想

改めてバーナム効果とは、誰にでも当てはまる曖昧で一般的な描写や未来予測を、自分だけに当てはまる特別な情報だと受け取ってしまう心理現象のことを言います。

1948年、アメリカの心理学者バートラム・フォアが行った実験によって、この「 思い込み 」のメカニズムが明らかになりました。

彼は被験者たちに心理検査を実施した後、全員に全く同じ内容の診断結果を与えました。

「 あなたは外向的でありながら内向的な一面もあり、理想を追い求める心と現実に妥協する冷静さを併せ持つ人ですね。ある程度の変化や多様性を好み、制約や限界に直面したときには不満を抱きます。(以下略)」

このような曖昧な評価を与えたところ、被験者のほとんどが、その評価は「自分に非常に良く当てはまっている」と回答しました。

この実験結果は、人が自分自身に関する情報に対して、いかに「都合の良い解釈」をしがちなのかを如実に示しています。そして、この「都合の良い解釈」こそがバーナム効果の根幹を成すものといえます。

「世界で最も有名なショーマン 」: 名前の由来とその巧みな手口

ちなみにバーナム効果は、映画『グレイテスト・ショーマン』でも話題になったP.T. バーナム氏(Phineas Taylor Barnum, 1810-1891)に由来された言葉です。

彼は19世紀アメリカで活躍した興行師、政治家、作家で、巧みな宣伝と演出で人々を魅了し、「あらゆるものの中に、誰にととっても何かがある」という信念のもと、サーカス、博物館、興行など、様々なエンターテイメント事業を成功させました。

彼はショーの最中で誰にでも当てはまるような曖昧な表現を巧みに用いて観客一人ひとりに「自分だけに向けられた特別なメッセージだ」と感じさせるのが大変上手く、会場を熱狂させていたとか。

例えば、「あなたは冒険心が旺盛で、未知の世界へ憧れを抱いていますね。でも時に慎重さに欠け、無茶をしてしまうなんてこともあるのでは無いでしょうか?」といった具合です。

『うわあ、当てはまる〜』って感じですよね。

バーナム効果を加速させる3つの心理学的背景

なぜ僕たちはこれほど簡単にバーナム効果の影響を受けてしまうのでしょう?密接な心理学的背景を紐解いていきます。

⑴確証バイアス:都合の良い情報を集める
人は誰しも自分の考えや信念に合致する情報ばかりを集めそれに反する情報は無視したり批判したりする傾向があります。

例えば 、
・ダイエット中の人が自分がやってみたいダイエット法のメリットばかり情報として集め、逆に失敗例やデメリットを指摘する情報には目を向けようともしない。

・簡単にお金が稼げるという副業の情報に興味を抱いている人が本当かどうかも分からないのに儲かったと豪語する赤の他人を盲信して、逆に批判してる人のことを一切信じない。

これらはいずれも
確証バイアスが働いている事例です。

バーナム効果を促進させるのは確証バイアスが重要なフィルターとなっているからです。

曖昧な記述の中から自分に当てはまっている部分だけピックアップし、都合の悪い部分はもみ消してしまうことで「私のことを言っているんだ」という結論を導く情報処理を行うわけです。

⑵自己中心性バイアス:世界は自分を中心に回っているという錯覚

自分が世界の中心であるという感覚は誰しも多かれ少なかれ持っています。子どもの頃はこの感覚が特に強く、周りで起きる出来事は全て自分が原因であるかのように考えてしまっていましたよね。

このバイアスは人生をプラスにする効果もありますが、バーナム効果を発生させる要因でもあります。

曖昧なメッセージであってもそれを自分だけに向けられた特別なメッセージだと解釈することで「自分は特別な存在である」という優越感を得られるのです。

⑶権威バイアス: 白衣を着た人の言うことは信じてしまう?

人は権威があると思われる人物や専門家の意見を鵜呑みにする傾向があり、これを権威バイアスと言います。

このバイアスの検証として特に有名なのが、1961年にスタンレー・ミルグラムによって行われた「ミルグラム実験」でしょう。

ミルグラム実験では白衣を着た医者(権威者)の指示であれば人はどこまで他人に電気ショック(危害)を与えるのかを明らかにしたものです。

被験者の多くは苦しむ相手の姿を見て葛藤しながらも、権威者である医者が電力を上げることを指示すると逆らうことをしなかったそうです。
(実際はこの話は嘘でちゃんと抵抗したという事実があった説の方が僕は好きですが)

ミルグラム実験の真相はさておき、僕らが権威に対して弱く、多大な影響を受けることは確かです。

この人は資産が1000億ありますとか、この人はハーバード大学を主席で卒業した人ですなどと言われたら多くの人は萎縮しますよね。これもまさに権威バイアスが働いている証拠です。

このような心理背景やバイアスが組み合わさるためバーナム効果の呪縛は強力なわけですね。

バーナム効果に満ち溢れる現代社会

バーナム効果は現代社会において様々な場面で利用されています。

営業マンやカウンセラーも自然と使いますし、詐欺師や占い師は達人級に上手いです。

また相手の表情や言葉遣いから情報を引き出す「コールドリーディング」という技術を組み合わせることで、よりパーソナルな情報のように感じさせ、信憑性を高めるテクニックが使われることもあります。
(これまたすごーく奥が深いスキルなので今回は割愛しますが。)

「バーナム効果」を見破るためのトレーニング

バーナム効果は良い面もあるんですが、詐欺に遭ったり、人生を狂わされたりするケースも多い代物です。

バーナム効果に惑わされず、感情に流されずに物事を判断するために、今日からできる具体的な方法を3つ紹介します。

1. 真逆の思考実験で視野を広げよう!
例えば、あなたが新しいビジネスを始めようとしていて、「この商品は絶対に売れる!」と確信しているとします。(バイアスにかかっている)

「もし、この商品が全く売れなかったら、なぜだろう?」

  • ライバル商品が魅力的すぎる?

  • ターゲットとなる顧客層のニーズを捉えきれていない?

  • 価格設定が高すぎる?

このように、あえて逆のネガティブな視点から考えてみることで、見落していた問題点に気づくことができ、より現実的な判断ができるようになります。

2.より当てはまる人と自分を比べてみよう!
「自分は今不幸のどん底にいる」と思っているとしましょう。

そんな時はキラキラしてる上の存在ばかり見るのではなく今の自分の方がまだ恵まれていると思えるような人を思い浮かべてみてください。

彼らと自分を比較した時に、
・自分には何があるのか?・どんな点が幸福なのか?
などを考えてみれば今のままでも十分幸福感を感じることができますし、改めて努力を始めることができるはずです。

3. 何気ない行動を意識して言葉にしてみよう!
例えば、朝起きて顔を洗う時、

  • 「蛇口をひねって水を出す」

  • 「両手で水をすくって顔にかける」

  • 「タオルで顔を拭く」

といったように、普段無意識に行っている行動を一つ一つ意識してみましょう。最初は面倒に感じるかもしれませんが、この習慣によって、自分の行動を客観的に見つめることができるようになり、衝動的な行動や判断を減らすことができます。

まとめ:バーナム効果と上手に付き合っていく

・バーナム効果とは、誰にでも当てはまる、起こり得ることを過度に特別視してしまう心理のこと。
・バーナム効果は自分を特別扱いする人の本能により発生する
・冷静な判断力を身につけてバーナム効果に惑わされない自分を手に入れろ

というわけでバーナム効果解説していきました。

結論、『グレイテスト・ショーマン』を見てない人は見なさいと言うことですね。(違う)

まあ映画は美談にされすぎですが、バーナムさんがどんな人だったか知るきっかけにもなるので普通にオススメです。

バーナム効果ぜひ頭の片隅に覚えておいて日常生活や仕事に上手く活かしてみてください。

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