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フォーカシング・イリュージョン|あなたの幸せを阻む「思考の盲点」

今回のテーマはフォーカシング・イリュージョンです。

フォーカシング・イリュージョンとは、特定の側面に過度に焦点を当てると全体像を見誤ってしまうバイアスのことで、いわゆる『木を見て森を見ず』ってヤツです。

例えば、「お金さえあれば、きっと自由な人生になるはず!」誰もが一度は夢見る経済的自由と成功。しかし、現実はそんな単純なものでしょうか? 高収入を得ながら過酷な労働環境や人間関係に苦しみ、心の豊かさを失ってしまう人は少なくありません。

フォーカシング・イリュージョンは人生の様々な場面で顔を出します。昇進、結婚、マイホーム購入…人生の転機となるようなイベントでさえ、僕らを幸せの絶頂へと導くとは限りません。

なぜなら人はその出来事がもたらすであろう幸福を過大評価し、その裏に潜む影の部分を見過ごしてしまうからです。

今回は、「フォーカシング・イリュージョン」という幸せを阻む見えない壁を具体的な例を交えながら解き明かしていきます。そしてこのバイアスの罠に陥ることなく、真の幸福を手に入れるためのヒントを探っていきます。


世界一のスリ師から学ぶ人の注意力の偏り

フォーカシング・イリュージョンの根底には、「人の注意力は限られた資源である」という事実があります。僕たちは、周囲の膨大な情報の中から、ごくごく一部しか処理することができません。ここで1つ興味深い動画をシェアしましょう。

この動画は世界一のスリとして名高いアポロ・ロビンス氏が人の注意力がいかに狭く脆いものなのか素晴らしいパフォーマンスと共に解説してくれている内容です。めちゃくちゃ面白いですよね。

スキルが素晴らしいという理由もありますが、「人の注意力には偏りがある」という現実があるからこそ成せる技です。注意力は脆弱であるがゆえに操ることすら可能なわけです。

フォーカシング・イリュージョンに陥りがちな3つの罠

僕たちが日常でこの心理効果と出くわすタイミングはある程度パターン化されています。ここからフォーカシング・イリュージョンを発生させやすい3つの罠について紹介します。

⑴所有の罠:「ブランド品さえあれば、もっと充実した毎日が送れるはず」
人は新しいモノを手に入れることで「満足感」「優越感」「幸福感」を得ようとします。最新のスマートフォン、スタイリッシュな家具、憧れの高級車… 消費社会は、僕たちの欲望を刺激する魅力的な商品で溢れかえっています。しかし、物質的な所有がもたらす幸福感は想像以上に短命です。その興奮は数週間もすれば薄れてしまうでしょう。

最新の脳科学の研究では、人が「欲しい」と感じた時、脳内では快感物質であるドーパミンが分泌されることがわかっています。しかし実際にその「欲しい」ものを手に入れてしまうとドーパミンの分泌量は減少し、すぐに慣れてしまうのです。つまり、『モノを買う』という行動は、一時的な快感をもたらすものの、長期的な幸福には繋がりにくいと言えます。

⑵変化の罠:「結婚さえすれば、悩みも消えて幸せになれるはず」
結婚、転職、引っ越し…人生における大きな変化は、僕たちに興奮と期待感をもたらすと同時に、「変化の先にある理想の未来」を過剰に期待させることがあります。しかしほとんどの場合、ネガティブな部分にスポットライトは当たらないため現実はそう甘くありません。

例えば結婚生活なら恋愛のような甘い時間ばかりではなく、家事分担や子育て、親族との付き合いなど、新たな課題に直面することが多々あります。転職なら収入が増えたとしても、仕事量やストレスが増えたり、人間関係に悩まされることもあるでしょう。変化の先にはすぐさま理想が待っていると考えていると予想外の現実が待っていることも多いです。

⑶比較の罠:「なぜ隣の芝生はあんなにも青く見えるのか」
SNS全盛の現代において、僕らは他人と自分を比較し、劣等感や焦燥感にさいなまれる機会が増えました。

「友だちは、素敵なパートナーと結婚したのに、私はまだ独身…」
「あの人は、経済的に成功し続けてるのに自分は何も成し遂げていない…」

一見すると羨ましい世界ばかり広がっているかもしれませんが、SNSに映し出される姿はあくまで「切り取られた一面」でしかありません。他人の輝かしい部分だけを見て、自分の現状に不満を抱くのはまさにフォーカシング・イリュージョンに翻弄されてると言えるでしょう。

フォーカシング・イリュージョンから抜け出すための3つの習慣

フォーカシング・イリュージョンは、僕たちの心に潜む根深い思考の癖のようなものです。しかしそのメカニズムを理解し、意識的に行動を変えることで、人はこのバイアスの呪縛から解放され、より本質的な幸福を手に入れることができるはずです。その方法論についても考えてみましょう。

①「陰の部分」にも目を向ける
これまで解説してきたようにフォーカシング・イリュージョンで目を向けがちなのは、概ねメリットの部分です。しかし現実は何事も「陰と陽」つまりメリットとデメリットが存在します。そのため日頃から「デメリット」に注目して物事を捉える癖を身につけることでバイアスを回避することができるようになります。

②「精神的価値・経験価値」を重視する
流行りの服やブランドバッグといった物質的価値よりも、アート、哲学、大切な人たちとの時間など、「精神的な成長や思い出につながる経験」に価値の比重を置いてお金と時間を投資することです。

時代論の本を何冊か読めば分かることですが、これからより一層、精神性の時代になります。次世代で活躍するためにも自分が何に価値を置くべきかを見誤らないようにしたいものですね。

③「今」に意識を集中する: マインドフルネスの実践
瞑想やヨガなどのマインドフルネスの実践を通して、「今」この瞬間に意識を集中すると、フォーカシング・イリュージョンに陥っている自分を俯瞰したところから気づけるようになります。

またマインドフルネスはGoogleやIntelなどの企業研修にも取り入れられており、ストレス軽減、集中力向上、創造性向上などの効果も期待できますよ。

まとめ: あなたの「幸せ」は、あなたの心が決める

・フォーカシング・イリュージョンとは、注意力の偏りが生み出す思考の盲点のこと。
・フォーカシング・イリュージョンを引き起こす代表的な事例として所有、変化、比較への羨望がある。
・3つの習慣を身につけてフォーカシング・イリュージョンを抜け出せ

フォーカシング・イリュージョンは本来、人を不幸にするために存在するわけではありません。むしろ脳が複雑な世界を生き抜くために編み出した、一種のサバイバル戦略です。しかし現代社会においてこの戦略が時に誤った方向へと導き、真の幸福から遠ざけてしまうこともあるわけです。

重要なのは「何にフォーカスするか」を自分の意志で選択できるようになること。フォーカシング・イリュージョンの罠に陥ることなく自分の「幸せ」を自分で定義して掴み取っていきたいものですね。

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