【230101】この部屋から東京タワーは永遠に見えない / 麻布競馬場 (集英社)

珍しく父がエンタメ色の強い本を買ってきて、おすすめされた。
新聞の広告で紹介されていて、気になったらしい。動機は反前衛的だ。
中でも「30まで独身だったら結婚しよ」の一文にグッときた、と熱弁された。かなり毒の効いた言い回しのもので、娘としてこういうのに心が動く父が意外だった。

基本的には、地方から東京に出たけど、それだけで何かが劇的に変わるわけではなく、あの頃の自分が見ていた大人と同じ感じになってしまっているなあ、という短い話が並んでいた。
神奈川県で生まれ、気づいたら東京に住んでいた私よりも、熊本で育ち、就職とともに東京にやってきて、職場で知り合った母と結婚して、子どもを二人育て、東京に小さくとも土地を買って家を建てた父のほうが共感性が高いのもなんとなく理解した。

私はわりとコスパの悪い人生を送っていると思う。
受験はことごとく第二希望だし、必死こいて掴み取って就職したと思ったら罹患のため退職。
何もかも中途半端、燃費がよくない。そんな自己評価をしていると、周りから「そんなことない」と声がかかるのはまだ幸せなことだ。ただ、それのはずで、無理なときほど無理でないように振る舞っている結果である。大丈夫でないから、平気な顔をするのだ。人間、そんなものだ。

新年だからと盛り上がるけれど、ただ一日が始まっただけで、それに勝手に区切りをつけている人間のお遊び。
そんなことを思ってしまう、そういう自分がまだいるという麻薬。創り上げてしまったからには、責任持って付き合っていかなければいけない自分。

なんだか、書くのをやめたらその瞬間に、自分のこれからの人生が、なんの価値も期待もないものに感じられる気がして、自傷行為見たいな創作活動がやめられなかったんです。
この部屋から東京タワーは永遠に見えない/麻布競馬場 (集英社)  p.69

まさに、その通りである。

これからも古傷を掘り返して、擦り傷だらけの身体でのたうち回るのが、私らしくて、いい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?