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生物のサイズはなぜ今のサイズなのか?(2)

初めての方は 前回の容内 からお読み下さい。 

  ヒトは、受精した卵細胞が分裂、増加を繰り返し、体の各器官を作り上げ、最終的に自分の体をつくっていきます。その細胞の総数は、60兆個といわれています。一番大きな細胞は卵細胞で、その大きさは約200μmです。一番小さい細胞は精子で、約2.5μm。

※ それぞれの細胞の大きさは、こちらのホームページを参照下さい。

  体の中で一番多い細胞は赤血球で、その数は20兆個、なんと細胞全体の3分の1を占めています。ご存知の通り、赤血球は、体の各器官に酸素を届ける役目を担っています。その大きさは、約10μm。

  血液というと液体というイメージが強いと思いますが、血管の中を赤血球とその他の細胞が連なって動いているというのが本当の状態のようです。

※ 毛細血管を血液が流れる模様は、こちらのホームページで見ることができます。

  酸素を受け取った赤血球は、動脈ではものすごく速い速度で移動し、血管が細い部分に入ると速度を落としていきます。毛細血管に至ってはベルトコンベアで運ばれているぐらいの速度まで減速します。毛細血管の直径は、赤血球の大きさよりも小さいので、血管に赤血球がこすられ、そこで酸素はこすり取られて各器官に受け渡されます。そして、赤血球は、静脈へと移動し速度を上げて、ものすごいスピードで心臓へと戻っていきます。

  ほとんどの細胞は、早いものは二三日、長いもので一年間ぐらいで新しい細胞に入れ替わります。一生涯使われる一部の細胞(心筋細胞と脳の神経細胞)を除いて、ほとんどの細胞が三年以内に入れ替わるそうです。例えば、紫外線でダメージを受けた皮膚も新陳代謝を利用して新しい細胞へと変わり、古い皮膚は垢となって捨てられます。

  最も短命の細胞は、小腸のひだの細胞で二三日で入れ替わり、その死んだ細胞は便とともに体の外へと捨てられます。小腸では、胃酸で溶かされてドロドロの液状になった食物から体に必要な栄養分を吸収するという結構過酷な仕事を行っています。おそらく小腸が体の中で一番ダメージを受けやすい器官であるため小腸の細胞は、短命なのだと思われます。

  ヒトは空気中から酸素を取り込み、二酸化炭素を排出します。食物を食べ、体に必要な栄養分を取り入れ、それ以外を排出します。そして新陳代謝というシステムを使って古くなった細胞を捨て、新しい細胞を利用して体自体を作り変えることで、自分たちの生命を維持しています。

  生き物以外のものは、すべて時間が経過するのに従い、静止状態へと移行していきます。沸騰したお湯も、熱を加えずに放置すれば、気温と同じ温度まで下がり水の状態で落ち着きます。もはや自分の力では動けない状態に落ち着いてしまうのです。

  ところが生き物は、上手にこの状態になるのを逃れています。それは、先ほど書いたようにいらなくなったものを上手に外へ捨てることで動ける状態を維持しているのです。

  このシステムのことを物質代謝(メタポリズム)というそうです。この物質代謝こそが、生き物の源であるといえるのです。

 体の中で起きているこの物質代謝は、化学反応を利用して行われています。酸素の受け取りも、栄養分やエネルギー源の吸収もさまざまな化学物質(分子)を化学反応を介して各器官が取り込んだり、排除したりしているのです。

 体内部で起きているこの化学反応は、常に正しく行われているのでしょうか? たまにはエラーを起こしていないでしょうか? 答えはYesですが、エラーに影響を受けないしくみを細胞はもっているらしいのです。そのしくみに、実際の細胞の大きさが係わっています。

  さて、次回は、原子や分子が単独で動いている場合と集団で動いている場合の違いについて述べます。実は、原子や分子が単独で動く時の振る舞いから身体を守るために、我々の体は今のサイズである必要があるらしいのです。

※血液の描写は、NHKスペシャル班著『人体ミクロの大冒険』を参考にしています。

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