【ブリッジ】スラムのサクリファイス【ワールドユース2022ペア予選1日目②】

スプラ3のガチマッチの洗礼を受けているKKTです。


1日目のお昼ごはん明けの2ndラウンドを振り返っていきます。まず昼ご飯から振り返ると、会場付近は近くの店が少ないのでめちゃくちゃ混雑してました。しかも店内は冷房が効いていないし、外席で食べることも多いしで暑かったです。次もしサルソマジョーレで開かれる大会に出る機会があれば、昼食付のホテルを取ろうと思いました。

試合を振り返っていきます。


ビューグラフ2NT

#3 they vul

U26とU30混合の予選はビューグラフ中継もされていました。このハンドは我々ペアがビューグラフのテーブルでプレーしたハンドです。自分はノース、パートナーはサウス。

ビューグラフでプレーしたハンドはいくつかブリテンにも取り上げられました。このハンドはブリテンに乗ったので、記事を一部抜粋します。

http://championships.worldbridge.org/salsomaggiore22-files/bulletins-youth/Bul_02.pdf

イーストがテイクアウト?ダブルをしてウエストが2Sとビッド。サウスまでアクションが回ってきてバランシングするかしないかのジャッジです。

スペードは相手にとってブレークが良さそうで、2Sは良いコントラクトになっていそうです。相手の2Sが良いコントラクトの時にNSは3Hや3mが良いコントラクトになっていて、サクリファイスやメイクを狙えるかもしれない。

ということで、リオープン2NTを選んだのだと思います。実際にはノースとのハンドのかみ合いが良くなかったので2NTは4ダウンとなりました。


後から振り返ると、この2NTは良くなかったんじゃないかと思いました。理由は、
・こちらの3mまたは3Hが良いコントラクトという見込みがあまりない。相手のスペードがフィットしていないかもしれないし、こちらにフィットがあるかどうかも分からない。悪い場合には相手の2Sも、こちらの3m,3Hも、どちらも落ちることが有り得る。
・オーバーアクションによるパートナーシップへの悪影響があるかもしれない。2NTをビッドする標準的な手は、例えば2155とか、2164などのシェイプがあるオフェンシブな手。今回の手は10点くらいあればXがちょうど良いような、3145のシェイプをしている。Xして流されると嫌だから2NTにしたのだろうけど、それによって2NTのレンジが弱くなった。それを経験したノースが、「パートナーの競り合いビッドのレンジには標準よりも弱い手があるから、こちらは標準よりも控えめにアクションしよう」とアジャストする可能性がある。その結果として、レンジの中の強い手でビッドしたときにゲームルーズとかしてしまうかもしれない。


標準から弱い方向に離れた手であればあるほど、パートナーのアジャストはアンダービッドに寄っていきます。短い試合とか一回きりのパートナーシップであるならば、「迷ったらパス」みたいな感じで取り決めておくのがシンプルで良いのかもしれないです。
でも、長い試合なら標準から外れることによる当たり外れで少しずつ損していく可能性が高くなっていくから(長い試合の方が分散による影響が小さくなって実力が出やすいため)、長い試合ほどジャッジを標準に寄せた方が良くなります。これは長いパートナーシップでも同じことが言えます。

今回の試合は6セッションの長い予選だし、チーム戦含めて試合全体通して組むパートナーだから、そういった影響も加味して2Sはパスしてプラスになることを願うのが良さそうです。気持ち的な問題でも、「無理して大きく失敗するよりは、無理せず小さく失敗する」くらいの方が楽だし、国際試合みたいな長い試合はそういうペアの方がスコアが安定しやすいと考えます。

とりあえず思い出とブリテンに残ったし、自分も勉強になったから、ビューグラフ2NTはナイストライでした。


パートナーの良かったハンドも紹介します。

デイビッド・リード

あなたはウエスト

#6 they vul 3rd

97653
KT
92
Q765

P-(1NT)-P-(3NT)///

オープニングリードは何を打ちますか?














実際のハンドは、

パートナーはD9をリード。ディクレアラーはDAで勝って、クラブフィネス。抜けてダイヤコンティニューから1ダウン。ウエストにいた自分としては目の醒めるような素晴らしいオープニングリードでした。


「1NT-3NTにはメジャーをリード」みたいなありふれた格言に従えばスペードを打つのが普通ですが、なぜD9を打てたのかパートナーに聞いてみました。

パートナー曰く、「スペードよりもダイヤの方が打ちぬける可能性が高いからです」と言っていました。たしかに一理あるし、こういった妙技のような良いリードをパートナーから何回か受けているので説得力があります。もしかしたら10年後くらいには、ブリッジのGTO(Game theory opt)を計算できるAIが出てきて、「これはダイヤリードが一番良い」と出るような未来もあるのかもしれないと、そんな気がしたリードでした。

大会期間中、我々はこういった素晴らしいリードを「デイビッドD9」のように呼んでいました。ちょうどチームメイトがデイビッド・バードのリードの本を大会に持ってきていたので、ポストモーテムでは「デイビッド・バードなら何をリードするか?」という話しもよく出ていました。リードについてあれこれ考えるのも楽しかったし勉強になったので良かったです。


続いて、

MP戦でINVするかFGするか

あなたはイースト

#8 both non vul 3rd

K98652
K8
Q5
A84

1C-(P)-1S-(P);
1NT-(P)-?

アクションの方針はどうしますか?















テーブルの思考は、
・INVするか、FGするか。
・S5枚の11点がINVなのだから、S6枚の12点はFGというのはありふれたジャッジ。もし、チーム戦なら2DでFGしてスペードフィットを探しに行くのが普通だろう。
・でもMP戦ならどうか?例えば、パートナーがS1~2枚の12点とかであれば、3Sが良いコントラクトかもしれない。
・点数もバラバラしていてさえないし、DQダブルトンも役立たない可能性がある。
・我々は6枚スペードのINVを2種類用意していて、それが使えるかもしれない。
①1C-1S;1NT-2C;2D-3S
②1C-1S;1NT-2NT;3C-3S
①はスペードの内容が悪くて点数が多いINV、②はスペードの内容が良くて点数が少ないINV
今回、①を選ぶのに適した手を持っているのではないか? スペードコントラクトをプレーするには切り札の内容が不安というのが伝われば、できない4Sを回避して3NTをプレーできる可能性もある。

MP戦は3S4メイクでもそこそこスコア残る可能性もあるし、せっかく用意されたビッドもあるので、2Cから3Sをビッドしてみた。




結果は、

1C-(P)-1S-(P);
1NT-(P)-2C-(P);
2D-(P)-3S///

で3Sになって4メイクしてスコアは23%でした。


テーブルでは、フィネスめっちゃ効いてたし32だしまあ仕方ないか、くらいに考えていましたが、後から考えると2DからFGした方が良かったです。理由は、
・アナーがバラバラしていて弱いと思っていたが、パートナースーツにAの3枚、自分は6枚スーツ持ちなのでトリックが多いから強い。単純にハンド評価を低く見積もり過ぎた。
・スペード1枚分トリック多いので、良い11点以上ならFGする方がシンプル。「5枚は11点、6枚は10点でINVする」とした方が、パートナーから見たときもINVの基準が分かりやすい。INVの上限を広くし過ぎてしまうと、パートナーはゲームビッドする頻度を高く調整しないとスコアが悪くなってしまうかもしれない。

このハンドだけでなくて、大会全体を通してMP形式で自分が失点したパターンの一つが、「チーム戦ならFGだけどMP戦ならINVとしたらゲームルーズ」でした。結構頻度高くルーズしてしまったので、INV/FGの判断をアンダービッドに寄せ過ぎていたのでしょう。「チーム戦ならFGはMP戦もFG、チーム戦ならFG/INVどちらでも良いなら、MP戦はINV」くらいのバランスが良いと勉強になりました。


続いて、

スラムのサクリファイス

あなたはイースト

#12 they vul 3rd

7543
3
QJT85
J43

3S-(X)-?

相手はヨーロッパの強そうなU26のペアです。アクションはどうしますか?
















テーブルの考えは、
・こちらはとりあえず5Sくらいまではビッドして安全そうに見える。パートナーはthey vulで3Sオープンしているとはいえ、6枚スペードは持っているだろうし、ハートラフでいくつかトリックを増やせるかもしれない。500で済むときは相手にゲームが、800で済むときは相手にスラムがありそうだから、5Sはペイしている雰囲気。
・4Hや4NTで紛れを狙いに行く、いわゆるタクティカルビッドをしても良いが、相手にスペースを与えるだけになってしまうことも多いから、普通に5Sが良さそうだ。


ということで5Sを選んでみたら、

3S-(X)-5S-(6H);
P-(7H)-?

となって回ってきました。ここでどうするか?





・6Hだったら、6Hは出来てそうだから6Sをビッドするつもりだったが、7Hになると自信が無い。もしかしたらDQとかCQとか取れるかもしれないし、パートナーにJTxxとかQJxのハートがいて取れるかもしれないし、もしかしてSAが取れちゃったりするかもしれない。
・7Sは5~6ダウンくらいは堅そうだし、6Sxや5Sxで買えているところもあるだろうから、ビッドしたらアベマイナスは堅いだろう。それなら万が一のトップボードを期待してパスするのが良いのでは?

ということでパス。



結果は、

7Hは鉄板で15%しかスコアが残らず。トップオアボトムのパスを選んだ自覚はあったので致し方無しという感じですが、、


後から振り返ると、7Sをビッドするのが良かったです。理由は、
・7Sxはハートラフができれば、-1100とか-1400くらいで収まることも有りそう。6Hジャストメイクには勝つことができる。7Hができるときはもちろんプラスだし、7Hワンダウンだったとしても6Hジャストメイクには勝てるから、25%~アベマイナスでスコアをセーブできる見込みがある。
・7Hがかなりメイクしそうに見える。パートナーのスペードが長すぎるからスペードは取れないだろうし、ハートのマスターも期待しにくい。クラブはパートナーにCQあったとしても取れるかどうか微妙なところ。こちらで取れるとしたらDQだが、自分のダイヤが長いからダイヤも取れなさそうに見える。
・良いサクリファイスだった思い出に残る。

最後のは冗談だとしても、最初の2つを合わせて考えれば、7Hのまま売り渡すのはトップオアボトムのボトムを半分以上引くことになってしまうから、7Sxでスコアセーブするのが賢明な判断でした。


そして、7Sをビッドしたら相手の7NTになるエクストラチャンスも存在してました。トラベリングを見ると4テーブルが7NTで、なんと7Sxよりも7NTの方が多いです。これは7Sをビッドした場合にXよりも7NTを選ぶテーブルが多かったということ、にはならないですが十分有り得たと言えます。うちのテーブルでどうなったかは分からないですが、7NTワンダウンさせればトップボードです。このエクストラチャンスまで含め、鉄の7Sビッドだったでしょう。


2ndセッションは47%で少し沈みました。オーバーオールは53.5%なのでまだ大丈夫ですが、次にアベを割ると予選通過が怪しくなってくるという雰囲気でした。続く。






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