【コントラクトブリッジ】NTのアティチュードシグナルを考える【2023前期日本リーグ1部3日目②】

読書の秋ということで、最近は読書にハマっているKKTです。


3日目の続きから振り返っていきます。1位に復帰して中盤戦、オポーネントはブルークラブを使うレギュラーペア。

R10 vs Sakura

こちらだけバルの時のプリエンプト判断

あなたはサウス

#2 we vul 2nd

QJ976542
J
8
J43

(1NT)-?

1NT=14-16

アクションはどうしますか?













テーブルで考えたのは、

・選択肢はパス、2D、3Sの三択。
・パスは大量失点を回避できるので無難な選択。様子を見て後からスペードをビッドできそうならビッドする。例えば(1NT)-P-(2D)-P;(2H)-? で回ってきたら2Sをビッドすれば、パートナーに弱くて長いスペードが伝わる。一方で、出遅れた結果こちらの4Sが見つからなくなったり、プリエンプトできず相手のスラムトライが簡単になってしまうリスクも有る。
・2Dでメジャーワンスーターのオーバーコールをするには点数が足りないし、枚数も少なく伝わるのでイマイチ。パートナーがパストハンドだったら安く買うのを狙えるかもしれないが、アンパストハンドだとパートナーが10点くらい持っているときにオーバーランするかもしれない。また相手の3NTとか4Hになったとき、パートナーがダブルして困るかもしれない。
・3Sは弱くて長いスペードを伝えることが出来る。こちらに4Sがあるときは見つかる。また相手にスラムがある時はビッドスペースを奪えるからスラムトライが難しくなるかもしれない。一方で、こちらだけバルなのでペナルティで大量失点があるかも。相手にはゲームまでしかないのに3Sxで800とか取られてしまうリスクが有る。

パスと3Sで迷ったが、ちょっと頑張って3Sをビッド。スペードはどこにいったの?となるのが嫌だったので。オポーネントがいつも3Sxを捕まえてくるとも限らない。










実際のハンドと展開は、

ウエストにダブルされてイーストに流されて3Sxになりました。ダイヤリードから3Sxが3ダウンで-800。R9の4Hxに続いて裏目を引きました。裏は1NT-(2D)-3C-(P);3NTでイーストの3NTになってジャストメイクだったので9IMP取られでした。


終わった後パートナーに聞いてみると、「このバルはパスが良いと思います。3Sx捕まるとまずいですし、相手にスラムがあっても800取られたらだいたいマイナスなので。」と言ってました。たしかに、相手がノンバルで500とか800とか簡単に取られてしまうと悪いスコアになりがちです。パスしておくのが安全でした。自分たちだけバルはあまりプリエンプトで頑張り過ぎないのが吉です。

裏の2Dオーバーコールは自分なら選ばない選択なので、裏のプロに2Dオーバーコールについてどう思うか聞いてみたら、「2D有りだと思いますよ。1NT-(2D)-?ってなったときのディフェンスビッドが曖昧なペアも多いのでプリエンプト効果狙えますし、2Mはなかなか捕まらないのも良いです。」と言ってました。たしかに、1NTに絡まれた後のビッド展開はアーティフィシャルな約束にしているペアも多いので、相手が慣れていなさそうだったら効果的かもしれません。相手の不慣れによるプリエンプト効果を狙うのはエクスプロイト的な発想であまり良い感じしないですが、スコアを稼ぐために一番良いと考えてれば立派な戦略ですし、日本リーグ1部なら文句も言えないでしょう。

他にも3Sビッドして800取られたペアはいるかなとトラベリングを見てみました。

3Sダブルで捕まったのは我々の他にはもう1テーブルだけでした。みんな回避したのか、、と思ってよく見るとNSとEWのハンドが逆になってました。我々と裏以外のテーブルは(1C)-1H-(X)-?とか、(P)-P-(1NT)-?とかで回ってきたみたいです。そういう展開だったらNSの3Sxにはなりにくいです。次の日ダメ元でディレクターに調整をお願いしてみましたが、裏と同じハンドをプレーしたのでスコアはスタンド。3Sオーバーコールした自分が悪いですが悲しいです。


続いて、

ディフェンスのアティチュードシグナルを考える

あなたはサウス

#3 they vul 1st

43
QJ5
T7
875432

P-(1NT)-P-(2C);
P-(2H)-P-(3NT)///

1NT=14-16

左の3NTになって、パートナーのオープニングリードはCK。

T1:CK-H2-?

リードの約束は普通、シグナルの約束はUDCAでアティチュード優先です。何を出しますか?











実際のハンドと展開は、

T1:CK-H2-2-9
T2:C6-S2-3-Q

C2を出したらクラブスモールが来てそのままCQ勝って4メイク。自分視点ではクラブが打ちぬけないとダウンしないと考えたので、そのまま続けて欲しい意味でカモンしたのですが、パートナーはクラブアナーを期待したようです。なお裏は6Dメイクだったので12IMP取り。裏が6Dに到達したビッドは、
1NT-2H;2S-3D;3H-4C;4S-5C;6D///
でした。3Hがハートコントロールを保証するかどうかは取り決め次第ですが、個人的には保証する方が良いと考えてます。理由は、既に3の台に到達しているのにフィットも示せてなくてスラムトライするスペースが厳しいので、イーストができるだけ早い段階でウエストの手の雰囲気を知りたいからです。イーストの手が3NTと5Dを判断したいような弱いFGの場合にはハートとクラブのどちらかが弱いアンバランスハンドになりますが、3Hをアートなダイヤフィットにしたとしてもイースト視点ハートかクラブが不安な状況は解決しません。それなら、オープナーの3H、4Cをそれぞれキュービッドにした方が良さそうです。オープナーの3Hの後にハート不安な手は3NTを置けるので、ハート不安なときの3NTは救えます。そういえばお世話になっているプロが「アマチュアが陥りやすい罠の一つは全てに対応しようとし過ぎること」と言ってたのを思い出しました。ビッドスペースが足りないときは対応できないことは切って、対応できるものに集中するのが大事です。裏のナイスビッドでした。


話しをディフェンスに戻して、パートナーに何出せば良かったか聞いてみると、「C4が良かったです。ボロ6で打ちぬけるような持ち方、AKQxとか、KQJxとかならどんなサイン出しても続きます。C2はQかAを持っているでしょう。」と言ってました。たしかに言われてみれば、ノース視点はサウスにアナーがあるかどうかが大事なのでカモンが出るときにはアナーを期待しそうです。長くてアナーが無い時は、真ん中~少し小さい数字くらいでソフトカモンを出すのが良さそうです。もし相手に手番が渡ったら、リバーススミスエコーでオープニングリードしたスーツのカモンを出して長さを伝えるという感じで捌くのが良いです。

そういえばワールドユースでも似たようなハンドがありました。

ワールドユースペア決勝ラウンドのハンド

このハンドについて有識者に聞いたときは、HTをプレーすればアラームクロックでTxxxを示せるという意見と、ノンカモンしてからスミスエコーでハートカモンして枚数を示せば4枚のJ無しを示せるという意見がありました。個人的にはスミスエコーを使うのが良いと考えてます。コンベンションで一般化できるから理解しやすいですし、柔軟に応用できるのが良いです。


続いて、

メイク目を追う

あなたはサウス

#5 we vul 3rd

92
KQ9
AQT43
QT7

P-(P)-1D-(P);
1H-(P)-1NT-(P);
2C-(P)-2D-(P);
2NT-(P)-3NT///

ウエストのオープニングリードはS6。

A43
JT76
J6
AJ52

92
KQ9
AQT43
QT7

T1:S6-3-J-9
T2:SK-2-7-?

プレーの方針はどうしますか?














テーブルで考えたのは、

・トリックは1011で6個足りない。ハートはエスタブリッシュすれば3個取れる。ダイヤはフィネスが効けば2つ増えて、フィネス効いた33ならさらに2つ増える。クラブはフィネス効けば2つ増えて、33ならもう1つ取れる。
・スペードの数字が上がったので44ブレークの可能性がある。53ブレークの場合は左の方が長そう。
・もしウエストが5枚スペードの時にメイクするとしたら、①ダイヤフィネスが効いてダイヤが33かつクラブフィネスが効いて1053取る。もしくは、②ダイヤフィネスが効いて、ダイヤは33じゃなくて、HAをイーストが持っていてハート3つ取れて、クラブはフィネス効いて2つ取れる。

いずれにせよスペードはダックして3巡目を勝って、ダイヤ試してクラブ試してハートを試すという順番でプレーすることにした。







実際のハンドと展開は、

T1:S6-3-J-9
T2:SK-2-7-4
T3:SQ-HQ-5-A
T4:DJ-K-A-2
T5:CQ-K-A-4
T6:D6-7-Q-5
T7:DT-H2-C2-9
T8:HK-A

フィネスの関門は突破したものの、ダイヤが33じゃなくてHAをウエストに持たれていたのでダウンしました。


あと一歩だったのに惜しいなあと思っていたらパートナーが、「スペード2巡目で上がってハート負けに行けばメイクだったのに」とコメント。言われてみればたしかに、スペードブロックを狙うという第3のメイク目がありました。しかもスペードは1巡目にSJが出て2巡目にSKだったので、53ブレークならイーストのスペードはKQJ濃厚でした。テーブルでは気付かなかったです。


日本リーグ前半戦で同じチームで対戦したときにも、別のメイク目を考えていて第3のメイク目に気付けなくて3NT落としたハンドがありました。

日本リーグ前半戦のハンド

メイク目はできるだけ広く追うように考えるのが大事だと改めて感じた2ハンドでした。でもテーブルでできるだけ広くのメイク目を追うのって思ったよりも難しいし時間がかかって大変なので、プレーの本読んだりブリッジマスターで練習しておきたいです。


次は我々が上手くビッドできたハンドを紹介します。

自分はサウスで1Cオープンからスタートして下のように展開しました。

1C-(X)-2D-(P);
2S-(P)-4H-(P);
4NT-(P)-5C///

2D=C5+,FG
4H=SPL

パートナーの2Dでクラブの9枚フィットが分かりました。自分のハンドはハートとダイヤが止まっていないので3NTよりは5Cとか6Cの方が良さそうに見えます。ただ、バランスハンドでミニマムレンジなので自分から決め切れないので2Sでバリューを示しました。

2Sに対してパートナーからは4Hが返ってきました。3NTを越えたSPLなのでエクストラバリューが有りそうです。こちらはハート0点でクラブも厚い良い手なのでスラムが近いと考えました。SA,SQ,HA,Hボイド,DA,DK,DQあたりから3~4枚あれば6Cが良いコントラクト。エクストラバリュー+ハートショートのパートナーなら十分期待できそうです。もう6Cを置いても良さそうですが、RKCBをして5Cが返ってきた場合はストップできるのでRKCBしました。パートナーはまさかの1keyだったので5Cでストップ。

ダミーが開かれると想定より弱かったですが5Cはナイスコントラクト。パートナーの2Dレイズが良いジャッジで、我々だけ5Cに到達できました。

試合的には5Cに到達できたのでOKなのですが、個人的には1C-(X)-3HでSPLした方が良かったんじゃないかと思ってます。パートナーの手はサウスにエクストラバリューが無いとスラムが厳しいようなカツカツのFGで、エクストラバリューを想定されたくないはずだからです。1C-(X)-3Hはゲームチョイスのような使い方もしますが、1C-(X)-2D-(P);2X-(P)-4Hはゲームチョイスにはなりません。だから、エクストラバリューがあるとすれば後者のはずです。

パートナーの意図を確認するために聞いてみました。「3Hの方が強いから2Dから入りました。1C-(X)-3Hは16HCP以上くらいのバリューが必要です。実際のビッドはハートストッパー無いのが分かったからようやくSPLできたハンドになります。」と言っていました。理にかなっている説明ですが納得はできないです。1Mオープンの時と同じようにハイカードバリューのあるSPLハンドは2NTから、カツカツのFGだったら即SPLするとした方が覚えやすいですし、SPLの狙いであるコントラクトチョイスは弱い時にこそ必要なので、弱い時に早くSPLを示した方が有利そうです。


ジャッジが難しいので有識者にも聞いてみました。

「2Dではなく3Cをビッドします。ちなみにこの話しは監督にも聞いたことがあって、すぐのSPLは6枚保証、後のSPLは5枚保証としていました。」
「2Dではなく3Cをビッドします。SPLはすぐの3Hの方が強い派です。あとからのSPLを弱いハンドでも行きがけの駄賃でビッドできる方が良いかなと考えてます。」
「2Dではなく3Cをビッドします。ギリギリのFGと一人で越えていける手は3Hから、超えて良いか分からない微妙な手は2Dから入って4HのSPLを狙う感じかと考えます。」
「2Dではなく3Cをビッドします。SPLはすぐの3Hが弱くて、2Dを挟んで4Hが強い派です。弱い手がビッド展開上でSPLできなくなるリスクを負う必要は無いという見解です。」

3C派が多数でした。言われてみればサポート枚数とバリューがあと一歩足りてないので自分もテーブルで持ったらINVの3Cを選んでそうでした。今回は2Dが当たりですが。

どっちのSPLが強いかについては意見が割れましたが、個人的には2Dからの4Hはある程度バリューを期待されても大丈夫な手でビッドしたいです。理由は、3NTを自分から超えていくのは直感的に強そうなビッドかつ、取り決めが無い展開なので強いと捉えられる可能性があるからです。昔ユースの監督が「どんなに素晴らしいビッドやディフェンスもパートナーに伝わらないなら、シンプルなビッドやディフェンスの方が良い」と言ってました。パートナーに誤解される可能性があるなら代替のシンプルなビッド展開を選ぶのが実戦的だと考えてます。


続いて、

ディフェンスのアティチュードシグナル②

あなたはサウス

#12 we vul 4th

イースト(右)の1NTになってオープニングリードはSQを選びました。

T1:SQ-3-5-2

シグナルはUDCAです。次に何を出しますか?















実際のハンドは、

T1:SQ-3-5-2
T2:SJ-H3-K-A
T3:ST

という展開になってジャストメイクされ。テーブルではパートナーの5枚スペードを想定してアンブロックのためにSJを出しましたが、5枚持っているのはディクレアラーの方で作戦失敗でした。


後から考えるとスモールスペードを出す方が良かったです。理由は、
・カモンシグナルは枚数じゃなくてアナーを示す。
・パートナーが5枚でブロックしたとしても、サイドにエントリーがあれば5枚目を取れる。
・パートナーがKxxxのときもSJを出すと損する。SJを出すと損する配置が多い。
こういうのテーブルで上手く考えられるようにしたいです。


最後に表裏でゲームスイングしたハンドを紹介します。

自分は一番手のサウスにいて、

P-(1H)-1S-(2H);
?

で出番が回ってきました。ネガティブダブルにはちょっとハイカードが足りないですが、S2枚、ハートシングルトン、マイナー55で2Aで良い手です。パートナーが良い手なら4Sや5mがあるかもしれないと考えて、ちょっと頑張ってダブルしました。

P-(1H)-1S-(2H);
X-(P)-4S///

パートナーは4Sまでジャンプしてくれてジャストメイク。作戦成功でした。


裏のビッド展開は、

P-1D-1S-P;
P-X-P-2H;
P-P-2S///

でノースの2Sになりました。サウスで1NT繋ぐかどうか難しいジャッジです。我々の10IMP取りとなりました。


R10は開幕3Sxが捕まって、第三のメイク目に気付かず3NTを落として、NTのアティチュードシグナル関連でミスしたり、あまり内容良くなかったです。でも後半11番の5Cと15番の4Sで返して、16ボードでデータムは+24でした。裏もアベプラスのスコアで25IMP勝ちは16VP弱取って1位継続。3日目のラストラウンドはお休みして4日目へ。


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