「約束手形」

おはようございます。
公響サービス、代表のシンジです。

 ビジネスにおいてB to Bの支払は、即時行わない習慣がある。支払いの伝票などを増やすことなく、1か月分まとめて請求とするのが通常だ。細かな伝票処理が多く発生するのも、振込手数料が多く発生するのも防ぐのに、必要な措置だろうと思う。
 一般人には馴染みがないが、ビジネスでの支払いは「約束手形」というものを利用することがある。ボードゲームの「人生ゲーム」をされた方なら、借金=約束手形という意味でつかわれたことだろう。その約束手形だ。意味も同じものです。
 現金で支払うのはきついから、約束手形という「債権」を発行するから、約束の日に現金に替えてね。というものだ。通常60日、120日、180日など発行する会社が決めており、180日の手形は、現金になるのは180日後、つまり約半年も後になる。仕事をしてから、月末に締めて、翌月末などに手形を手に入れて、そこから180日後に現金になるようでは、中小企業はキャッシュフローが止まって潰れてしまう。「黒字倒産」の記事でも紹介した。
 中小企業が潰れる原因になっているということで、金融庁も手形を発行しないよう指導している。だが、昭和から続く事業の場合、この慣習から抜け出られない業界が製造業を中心に多く見られる。中小企業は、お客様から突き付けられた条件なので、仕方なく受け取っていると思う。経営者は、ここは断固とした態度を取らなければならない。なぜなら、仕事をした対価を払ってもらうのに、こちらが引け目を感じる必要などないのだ。
 しかも手形は、急にお金が必要で期日前に現金化することを、「手形を割る」という。手形を割ると、銀行に手数料を20%程度取られるのだ!ボッタクリも良いところだ。100万円の手形が80万円になってしまう。倒産する会社は、こうやって資産が目減りしていくのだ。だから、手形は絶対に受け取ってはならない。
 当然、手形を発行するのもNGだ。期日までに手形用の当座預金口座に現金がなければ、その時点で「不渡り」を起こして、ブラックリストに乗り、金融機関からの借入ができなくなる。現金が必要になると、闇金から借りる以外になくなる。そこから半年以内にもう一度「不渡り」を出せば、法的整理をされて倒産に至る。借金はしてもいいが、手形は絶対に手にしても、発行してもいけない。恐ろしいものだ。当然、税金の支払いは手形では行えない。税金の支払いができない時点で、手形の存在自体を認めてはならないものなのだ。手形があるのは、人生ゲームだけにして欲しい。

 我が社にもついに「手形」が来た。一部上場企業の経理部より「手形をお送りしたいので、切手と返信用封筒を送ってください」などと言ってきた。私は即座に「手形?!我が社はそんなものは受け取れません。現金で即刻お支払いください」と返しました。そもそも、支払う側じゃなく、受け取り側の我社が「なぜ、切手と返信用封筒を用意しなければならないのか?」全くもって意味不明である。お金を貸しているのは我社であり、借りている側が横柄に「返してほしければ、切手と返信用封筒をよこせ!」と言っているわけだ。しかも「手形だよ」と言っている。お話しにもならない。
 中小企業経営者は、お客様に「お金を払ってもらう」という考えをしていることそのものが間違っている。「振込手数料」の件でも述べたように、お金を貸しているのは下請け企業側で、支払期日までお金を無利息で借りているお客様が「振込手数料」を払うのが道理だ。手形の受け取りにしても同じだ。「切手と返信用封筒」を用意する必要はない。因みに振込手数料は交渉の末、すべてのお客様が支払ってくれるようになった。当然の結果である。

 こう考えれば簡単なことだ。あなたがコンビニで買い物をした際、あなたは「支払いは月末にまとめて手形で支払うから」と言ったら、当然「はあ?」と言われるだろう。即刻現金で支払うものだ。それが支払いを月末まで待ってあげているのに、手数料だ、切手だ、返信封筒だなど許せるはずがない。ましてや、手形で現金化が数か月後になるなど、まったくもってけしからんと思わないだろうか?それを一部上場企業は平気でやっているということが実態だ。当然、欧米にはそのようなシステムはない。

 我が社はこの後その会社とどうなるかは定かじゃない。動きの遅い連中だ、「手形受け取らないって言ってるよ?お金要らないの?」などと経理部で騒いでいるのだろうと想像ができる。上場企業側は手形で支払わなければならない理由など持ち合わせていない。ただ単に、いままでの慣習に過ぎず、特例を認めるわけにはいかない。という、自社都合の押しつけだ。
 下請法では支払期日から60日以降は年率14.2%の利息が付けられることになっているので、今月末には経理部あてに「早く現金で支払わないと、利息が付きますよ。それでも現金での支払いに応じないようなら、裁判所に告訴状を送る予定ですよ」という書簡を送る予定だ。やれやれ、殿様商売をしている人達は、常識のネジがどうも緩みっぱなしで良くない。そもそもネジが落ちているんじゃないかと思うことがある。今回は金額が140万円程なので、簡易裁判(40万円以下)はできない。徹底的に戦うなら民事訴訟になる。
 こんな企業がのさばっているようじゃ、日本の未来は明るくないな。兎(ト)にも角(カク)にも、「約束手形」は決して受け取ってはならないものなのだ。他の中小企業経営者のみなさんも、「約束手形」を受け取らない覚悟を持って欲しい。お金を貸しているのは、あなただということを忘れないように。みなさんの健闘を祈ります。

 いつも読んでいただき、ありがとうございます。本日も皆さんにとって良い一日でありますよう、祈っております。


シンジ

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