「約束」

おはようございます。
公響サービス、代表のシンジです。

 約束は守らなければならない。でも、いままで守れなかった約束は数多い。思い出すと赤面してしまうようなことも多くある。みなさんも思い当たるのではないでしょうか?忘れたい思いが強く、普段は忘れているけれど、心の中で魚の小骨のように、つかえていることは、誰でも一つや二つあると思います。今日は個人的なつまらない話をさせて頂きます。

 オーストリアのムードリングというウィーン郊外に住んでいた頃、その小さな街には日本人は私の他には一人しかいなく、私は日本語に飢えていた。数少ない日本人の友人は、皆お金持ちでウィーンの天井の高い広いボーヌング(借家)に住み、グランドピアノを借りて、学校へ行き、毎日外食をしていた。正直、貧乏人で一緒に食事にも行けない私のことなど、1mmも興味がなかったのだろう。きっと憐れんで付き合ってくれていたのだと思う。
 20代の私はまだそんなことも分からなく、友人が私の街に遊びに来る日を楽しみにしていた。ところが、約束の時間になっても彼は現れない。私は外へ出て公衆電話から電話をした。(私のアパートにも電話はあったが、共同アパートの共有電話だ。基本的に緊急時しか使わない)電話に出た友人は、約束を忘れており、今日は来られないと言った。別に私のことを重要に思っていなかっただけのことだが、その時の私は怒りに任せて、彼を罵倒しそのまま絶交をした。その後一度も会っていない。電話の受話器を叩きつけると、私はそのままスーパーでゼクト(シャンパンのドイツ語)を買うと、ビンのまま飲みながら、街の高台にある教会へ散歩に出ました。その先には山の山頂に昔の砦があり、とても好きな散歩道(実はベートーベンの散歩道でもあります)があり、気分転換に歩き出した。
 しかし、酔いも回り考えれば考えるほどその友人のことが頭にきて、結局熱が冷めるどころか、余計にヒートアップした状態で下山してきました。教会まで降りてきて、そのまま真っすぐ行くとその街の市庁舎がある。そのころにはゼクトのビンも空になっており、私はフラフラしながら、市庁舎の裏側の道を通る時、窓めがけてこぶしを突き出してしまったのでした。

「バリーン」

けたたましい音がして、窓ガラスが割れてしまいました。
 私の頭からは一気に血の気が引き、酔いも一気に冷めました。その場で謝るのが大人のすることですが、すでに夜のとばりがせまっており、既に市庁舎には人影がなかったのですが、周りを確認して人がいないことを確かめると、私は一目散に逃げだしてしまったのです。
 立派な器物破損の犯罪をした上に、逃げ出すという卑怯なことをしてしまった。本当に人生の汚点だと思っています。アパートに帰ると、右手のこぶしから血が溢れていました。床にも血が点々と落ちており、驚いて血はふき取りましたが、外はすでに暗く血の有無は判別できませんでした。その日は、警察が血の跡を追ってくるような気がして、手の痛みも気づきませんでした。
 私は人を殴ったことがない。物も殴ったことはあまりない。そもそもそのような行為が嫌いだった。そんなことをしても、得ることはなく、失うだけと知っていたのに、大好きな街を傷つけてしまうことで、自分の心を傷つけ、何かを失ったように思う。ひどくバカげた話だと、笑ってください。

 結局、何事もなく数日後に新しいガラスがはまっていました。手の傷は1週間で治りましたが、心の傷は25年経ったいまも癒えていません。私の好きだったムードリングという街に、申し訳ないことをした。そう思うと、傷は深くなるばかりです。その後、私は何も出来ないまま、誰にも言わずに帰国したのでした。

 死ぬまでにもう一度ムードリングを訪れ、今更だが謝罪と弁償をしようと思っているが、まだ日本に縛られ動けない自分がいる。これは自分との約束だから、きちんと叶えたいと思っている。この話は家内にしかしたことのない話だが、自分の「約束」が果たされるよう、ここに公開しようと思った次第です。「約束」を破られて、失敗をした私が、いつか謝罪したいという「約束」をした。私事の話しにて、すみませんでした。

 いつも読んでいただき、ありがとうございます。本日も皆さんにとって良い一日でありますよう、祈っております。

シンジ

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