「形式」

おはようございます。
公響サービス、代表のシンジです。

 「形式」。個人的にはかなり気にすることだ。特に音楽では顕著だ。当然、仕事の仕方や「道」とつく「剣道」「柔道」「茶道」「華道」などもそうだが、必ず「型」というものがあり、その型から学んでいく。最初から独自色を出そうとすると「形無し」になってしまう。変更していくのであれば、守破離の順序で行うものだというのは常識だろう。

 西洋音楽の型は、8小節を基本のテーマとして終止することが基礎で、日本語では大楽節という。半分の4小節を小楽節という。大楽節の8小節だけの曲を一部形式という。
 そこにもう一つのテーマを大楽節で加えると2部形式になる。最初の大楽節を「A」として、次の大楽節を「B」とすると、ABという2部形式になる。
 人は循環形式を好むことが多いため、繰り返しを行う。そのため、最初の大楽節に戻って、ABAとなる形式は3部形式という。
 もっと複雑にしたものも存在する。複合三部形式といって、AB-CD-ABとなっており、ABの2部形式を大きな「A」と考え、CDという新たなテーマ部を大きな「B」と考え、元の大きな「A」に戻る形式だ。
 カノン(輪唱)はカエルの唄でも分かるように、同じメロディーを追いかけていく曲だ。簡単そうで、これは難しい。不協和音が発生しないようなメロディーを考えるのに、何度も何度も変更を余儀なくされる。まだ、マスターしたとは言えない形式だ。
 フーガはもっと複雑だ。同じメロディーを繰り返すのは同じだが、調性を都度変更するのだ。ハ長調で始めたテーマ(ドゥックス)への応答(コメス)は5度上のト長調(ドミナント)もしくは5度下のヘ長調(サブドミナント)から始めなければならない。という決まりがある。まあ最後の音をつないでいくので、それ以外に合う音がなくなるからだ。曲の最初も主音である「ハ」から始める必要がある。第5音の「ト」から始めることも可能だが、その場合はサブドミナントへの転調は出来なくなる。非常に多彩に色の変わる形式だ。極めて難しく計算力が必要になる。現在はかなり廃れてしまったが、個人的には極めて好きな形式の一つだ。

 私が一番好きなソナタ形式は、2部形式の発展形となる。しかし大きく分けると3つの部分から出来ている。提示部―展開部―再現部という3部構成なのだ。しかし、基本は2部形式の発展形になる。
 提示部と呼ばれる最初の部分では、Aのテーマの後、BのテーマはAとは異なる調性にする。シャープやフラットの数を変えると考えて頂ければいい。要するにAとBは対立した関係だ。
 次に展開部といって、AとBもしくはどちらか片方をまたもや転調させて調性を変えるわけだ。展開方法が作曲家の色が出ると思う。2小節のモチーフ(動機)を変化させていく場合や、速度を変える人もいる。フガートなどのポリフォニーを使用することもある。
 最後に再現部として最初のテーマAとBのテーマに戻ってくるのだが、ここでは調性を同じくして、AとBには対立関係がないように処理しなければならない。
 つまりAという男性とBという女性がいて、展開部で笑ったりケンカをしたりして、二人は仲良くなりました。というストーリーが見えてこなければならないのだ。そういう意識をして作曲をしなければ、曲は盛り上がらないし、規律も無くなってしまう。それを可能にしているのが「形式」なのだ。つまり形式とは「物語」のことなのだと私は思っている。
 その形式を軸として、まずは教科書通りに書いてみることです。慣れてきたら、色々と変化を付けて行けば良い。それでも、基本は押さえておく。私はいつもそうやって作曲をしています。

 例えば交響曲第3番は提示部のAをホ短調(♯1個)で始め、B主題はト長調(♯1個)にしている。♯の数は同じだが、短音階と長音階で対比をさせている。
 展開部は、ホ短調(♯1個)に戻るがすぐにホ長調(♯4個)に変わり、またすぐに嬰ハ短調(♯4個)に変わります。ここでは第一主題Aのテーマを繰り返しますが、途中からAのリズムを分解してリズム中心にします。第一ヴァイオリンと低弦でテーマをつないでいく展開部は、とても盛り上がる部分です。その後、ホ長調で終止し、第2主題Bをホ短調にして展開される。
 そして、再現部は1オクターブ低くメロディーをビオラに持って行って再開される。楽器の使い方などを変えて、最後に第2主題のBに戻ってくるが、当初ト長調で明るい調性だった主題が、Aの影響で同じホ短調になります。まったく新たなメロディーではないのに、雰囲気が一気に変わります。コーダ(終止形)を設けず、そのまま全曲を閉じますが、他に方法がないと思えるほど気持ちの良い終わり方だと思っています。
 交響曲第3番なので「3」にこだわった作りです。4拍子の曲なのに音符が3個になるようにしたメロディーで、ハ・ニ・ホの3番目であるホ短調を選択し、ホ短調の3番目の音であるト音(G)からメロディーはスタートしています。3連符なども使用し、徹底的に「3」にこだわっています。第2主題は対比するように「4」にこだわっています。ソナタ形式を教科書通りに行うと、この曲のようになると思っています。どうぞお聴きください。

https://www.youtube.com/watch?v=fg5MJcbbnlk

 いつも読んでいただき、ありがとうございます。本日も皆さんにとって良い一日でありますよう、祈っております。

シンジ

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