「リストラ」

おはようございます。
公響サービス、代表のシンジです。

 リストラとは、英語のリストラクチャリングの略であり、意味は「再構築」となる。つまり、固定費などを見直し、収益構造の再構築をすることを意味し、結果的に不要な人材も整理される。人は感情の生き物だ。そのため、整理される人のことを勘案し、「リストラ=人員整理(首切り)」という様相が呈されているのだろう。あながち間違いではない。

 大会社の場合、経営者が全てに目を配ることが出来ず、人事部による定期採用が行われ、多くの人が入社し、そして辞めていく。そのため、全体的な人数や平均年齢などを把握するだけで、本当にその人物が必要かどうかで採用しているわけではない。そのため、不要な人材もある程度存在してしまうのが現実だ。
 業績が悪くなれば、固定費圧縮のためにその不要な人材を切り捨てようとする。大企業の場合、ある程度の整理解雇は仕方ないと思うが、我々中小企業の辞書に「整理解雇」の文字はない。何があっても、「整理解雇」(首切り)をすれば、組織は瓦解し、どんなに説明をしたところで、理解は得られないだろう。そして、その企業が永続することはあり得ない。では、我々中小企業における、本当のリストラの仕方を考えてみようと思う。

【1、間接部門の縮小】
 まず、リストラするにあたり、人件費は削ることが出来ないため、考えるべきことは間接部門の人員を、稼げる部署に異動させることが重要です。経営管理や総務など、必要なことなのだけれど、お金を生み出さない。付加価値を生み出さない人員を減らし、付加価値を生み出す部署へ移動してもらうのだ。
 例えば、経理が二人で行っていたことを、デジタルITを駆使して一人に出来ないであろうか?仕訳の入力をやっている者が、1日8時間、週に40時間行う程あなたの会社は仕訳の量が多いだろうか?請求書の発行や、請求書の受領を「紙と印鑑」をやめて、PDFにて送付に切替えたら、プリントアウト費用や、スキャンの手間などがなくなり、一人で可能な業務量になるのではないか?印鑑がなくてもご安心頂きたい。メールでの送信記録は、裁判の証拠にもなるため、上司を含めCCに必要な者を加えれば、会社の承認が得られたことになる。お客様にも説明し、協力メーカーにも徹底してもらえば、紙の資源を減らすことが出来るし、間違いがあっても、差替えはあっという間に完了する。
 給与計算が複雑な場合は、人事評価の仕方そのものを変更することをお勧めしたい。毎月変動する給与をいまどき誰が喜ぶであろうか?我が社は月給だが、金額は年俸制だ。1年を通じて金額が同じため、給与明細は毎月、出勤日数を数えるだけだ。金額はずっと変わらない。給与明細など一人数分で作り終える。そして、年間を通じての評価を積み上げ、年度末の点数評価を面談にて来期の年俸を決定する。どうしても、残業代という古い習慣をやめられない場合には、給与計算などアウトソーシングすればいい。些細な計算ミスなどを怖がり、チェックに時間をかけるのも無駄だ。外注にすれば、社労士が保証してくれる。変動費が増えてしまうが、業績不振のときは、間接部門の縮小の方が近々の課題と考える。社内の固定費で、現金を稼ぐ額を増やすことが先決だと思う。

【2、在庫処分と固定資産の圧縮】
 次に行うべきは、在庫処分と固定資産の圧縮です。売れていない在庫や、もう売れる見込みすらない在庫などが、倉庫に眠っていないだろうか?壊れたけれど、修理すれば直るから、という理由で捨てていない設備なども、倉庫に眠っていないだろうか?本来のリストラとは、そのような無駄な資産を捨てることにある。
 不要な固定資産に、有価証券も含まれる。無駄な保険に入っていないか?会社のお金で投資をしていないか?無駄なゴルフ会員権を買っていないか?個人に属する物で、会社に買わせたことで、会社の資産になっているものは、早めに処分しなければなりません。
 特に在庫はバランスシート上では流動資産になっているが、実際には1年以上滞留している在庫は、固定資産扱いになる。しかも、会社に何ら現金をもたらすことなく、無駄に総資産を膨らませていることになる。総資産を整理すれば、全体が肥大化されていた、メタボB/Sがダイエットされてスッキリする。そうすると、分母の総資産が減って分子の純資産が変更ないのだから、自己資本比率が上がるので、銀行の覚えも良くなる。自己資本比率=純資産÷総資産。更に総資産回転率も上がる。総資産回転率=売上÷総資産、すべての資産を用いて、年間にどれだけの売上を上げているのか?一体回転率は何回回っているのか?自社の回転率をご存知だろうか?中小企業が生き残るには、仕事の回転率を上げることはとても重要です。回転数の把握をしてみてはいかがだろうか?
 更に、在庫は売れた場合に売上原価に入るのだから、利益が減る。要するに利益が増えた年にしか、在庫は減らせないのだ。在庫を増やすと利益が増えて、法人税が高くなる。在庫が減ると、赤字になる。これでは「いたちごっこ」だ。
 それならば、いっそのこと在庫はサンクコストとして、感情を捨てて、すべて捨ててしまおう。不要な固定資産も同様だ。会社に現金をもたらさない物は、一切合切すべて捨ててしまうのだ。それをすべて特別損失に算入するのだ。特別損失は、経常利益の確定した後に、税引き前利益の前に計上される。銀行は経常利益が黒字であることを重視し、その後に特別損失が出て最終赤字になったことは不問に付してくれる。そうすると、税引き前利益が赤字になり、法人税も払う必要がない。純利益も赤字になるが、手元の現金は減ることがないので、キャッシュフローは改善される。正直、良いとこ取りになると思っている。
 逆に、特別損失を計上しなければ、わずかな黒字になっても、在庫増加に使用した分お金が減り、法人税の請求が来て結局運転資金が不足する。現金を残すことを考えなければ、会社は立ち行かなくなる。これは当然粉飾ではない。本物のリストラである。
 もしも御社が製造業などを行っており、工場をお持ちなら、リストラをするなら工場の掃除を全員で行って、不要な物を徹底的に捨てる。業者を呼んで、廃棄証明を取り、写真を撮って証拠を残し、特別損失に計上できるように税理士にも立ち会ってもらおう。 必ず驚くような良い結果が待っている。肥大化したB/Sはかなり危険だ。

【3、財務見直し、契約見直し】
 最後に行うリストラは、財務の見直しと契約の見直しだ。毎年、もしくは毎月支払っているもので、不要な損金はないであろうか?先代からの古い習慣などは見直すべきだ。家賃は下げてもらえないであろうか?交渉はいつからしていないか?契約更新はいつなのか?
 会社工場の土地や建物を、社長個人の名義にして、会社に賃料を払わせているなど、言語道断だ。会社に譲渡、もしくは買取できるよう、整理が必要だ。会社がお金を垂れ流している部分には、栓をしなければならない。名義が入り組んでいると、会社の売却も出来ないし、事業承継も出来なくなる。要は出口戦略を自ら潰していることになる。会社を買い取ろうと活動していた時、ほとんどの会社がこのパターンで、危なくて買えない状況だった。B/Sに不審な点がある時、登記簿を取ると一発でばれる。

 契約書は締結時には一生懸命読み込むが、その後は内容を忘れてしまうものだ。業績の悪い時に、契約書を読み返し、自社に都合がいいのに、行ってこなかったことはないのか?もしくは、自社にとって締結時に気づかなかった不都合はないのか?見直しを行い、顧客や協力メーカーと協議し、契約の変更や覚書の追加などを行うと良い。意外と、口約束で行ってきたことや、実態とは乖離していたことは多く出てくるものだ。より早く多くの現金が手元に来るためには、小さなことから変更していかなければならない。
 また、いままで契約をしていなかった協力メーカーと、年間仕入れ量を決めて、価格を契約するなども大事なことだ。そうすれば、原材料費の高下に惑わされることも無くなる。
 もしくは、他社と手を結び、戦略的な契約を行うのもまた良い方法だ。それらはきちんとコピーをして、銀行に持っていき、どのような戦略で契約を行ったのかを説明することで、お金の借主(あなたの会社)が、信用に足る会社であるかどうかが分かる。というものだ。

◆リストラは、首切りではなく、「再構築」である。肥大化しているB/Sをスリムにして、人件費を変えずに、会社の資産を圧縮すること。また、全員で掃除をして不要なものを捨てることで、一体感が生まれ、新たな気持ちで仕事に向き合えるようになる。従業員から見ても、経営者がやる気になっていることが目に見えてわかるのは良いことだ。そして、B/Sの圧縮に成功すれば、銀行からの評価も上がる。例え赤字になっても、特別損失なら評価が下がることはない。これが本来のリストラクチャーの求める行動だと思う。みなさんの奮起に期待する!

 いつも読んでいただき、ありがとうございます。本日も皆さんにとって良い一日でありますよう、祈っております。

シンジ


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