14.長野のあんずの里
あんずの里へ散歩に出かけた。前方から下りてくる女性二人組が大きな声でしゃべくっていた。
可憐な花を見ながらなぜ愚痴をこぼす気分になれるのか、甚だ疑問だ。白い無垢な花を前にして薄汚い自分に辟易しないのか。美味しいご飯を食べながら人の悪口を言うのと同じように、自分自身への裏切りを感じはしないのか。
高級ホテルのラウンジで汚い言葉を吐く気にはそうなれないだろう。愚痴をこぼすならチェーンの大衆居酒屋で。愚痴を言わないよう口をつぐむ必要もないだろうが、かわりに場所を選ぶ。それが三流