8.上野に向かう新幹線の中
大宮から上野に向かって走る新幹線から、人の暮らしが細部まで見えた。
米粒のような家や車、歩く人の景色はお馴染みの光景だろう。
しかしその時見えたのは、朝けだるそうな顔でアパートのドアを施錠する、黒い傘を持った女性の姿だった。
目が合うんじゃないかと思うくらい目線の高さが同じで、爆速で進む新幹線の近くに人の生活があることにひどく驚いた。
目線を移すと、無限に続くのではないかと思わせるビル群に鳥肌が立った。
ここに無数の人がぎっしり詰まっていて、その一人一人に今がある…。
そ