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ローカル百景

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地方を中心に文字で綴る100の景色。
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#寝床

13.午前2時半の寝床

夢路が通行止めにされた。 うっすらした意識で再び戻ろうとじれったく寝返りを打つが、張った糸のような田舎の静寂に聴覚が醒める。枕と頭に潰された耳から出る奇妙な音から逃れようと、もう一度仰向けになる。それでも耳だけがごうごうとうるさい。誰かが寝返りを打ち床が軋む音やいびきすら無い。 「目覚めた時に何の音が耳に入ってくるか」は贅沢ながらも結構重要な問題だ。 漁港の古びた民宿で聞く早朝の波音には、穏やかながらもちゃんと起こしてくれるような包容力がある。旅館だと高層だったり防音窓