BEYOND、終わるってよ

4月22日BEYOND日光公演。愛の夢で田村岳斗さんを迎える恭廉くんの後ろ姿を見て胸が痛くなった。
人、美しいものを見ると胸が痛くなるんですね。

BEYONDを見るのはこれで何度目だろう。もう数えるのをやめたが、それなりに回数を重ねているのに毎回新鮮な感動を味わっている。
ありがとうございます、新鮮な感動はなんぼあってもいいですからね。なんぼあってもいいのに終わるんですよね、BEYOND。

やめるのやめてもらっていいですか?

いつか終わると思ってました、そりゃあもう。いつ中断するか分からないし、出演者の怪我の可能性だってあるし。いつ最後になってもいいように可能な限り足を運んできたつもりだ。

それなのに、いざ終わりを発表されるとこんなにも動揺するのか。未だに受け入れられない。
しかし、受け入れようが受け入れまいが何としても千秋楽公演に行かねばならない。無情だ。千秋楽公演のことを考えると「チケット取れなかったらどうしよう」という不安で頭がいっぱいになり心臓がバクバクしてピキピキする。そろそろ健康に支障をきたしそうだ。

私、BEYONDの山本恭廉さんが好きなんです。キャストの一人として、氷上で輝きを放つショースケーター。好きな選手が現役を引退したのち、浅田真央さんプロデュースのアイスショーBEYONDに出演するということ。ファンとしてこんなに幸運なことはない。私、実は前世でめちゃくちゃ善行を積んだんだと思う。自己肯定感まで爆上がりである。

終わりを迎えるBEYONDに思いを馳せながら、今改めて山本恭廉と、ショースケーターというものについて考えている。

現役時代、演技を披露する場こそ多くはなかったが、ローカルの試合では「さすがの表現力」という言葉とセットで語られた選手。
その演技は"山本恭廉らしい"と言う他ない個性を放っていた。

恭廉くんが引退後はショースケーターを志していると最初に見知ったのは、国体前の湖西市長表敬訪問時の記事だったと記憶している。(めちゃくちゃ余談だが先日仕事先で偶然湖西市長をお見かけした。本当に偶然にも関わらずパッと見でピンと来た自分が怖い。)

率直に「ショースケーターになりたいんだ!」と驚いた。自分はファンのつもりでも、彼のことを本当に何も知らないのだと痛感した。現役続行宣言以来の爆裂懺悔案件である。

おまけに全日本出場を目指して現役を続行するとまで言い出した。まじか。
私が感じていた違和感は、一瞬にして「罪悪感」に形を変えた。競技者として貪欲に上位を目指す恭廉くんと、成績には何の関心もない自称ファンの自分。現役続行宣言は私にとって鈍器で殴られたような衝撃で、同時にとても恥ずかしくて情けなくて心苦しかった。

私の私による私のためのBEYOND感想文|おいも 


もちろん同時に嬉しかったことは言うまでもない。「ショースケーターになってくれたらいいな」という思いは常に抱いていた。その一方で「でも、恭廉くんがやりたいことをできるのが一番良いよな」と自分に言い聞かせていた。その"やりたいこと"がショーである可能性についてはあまり考えないようにしていた。その可能性はそう高くはないと思っていたから。今思うと「あんたバカァ?」という感じだが、正直、本当にそう思っていた。
それは、まず大前提として私が見ることができた範囲、つまり試合で恭廉くんが"楽しそう"と感じたことが一度もなかったから。むしろいつも苦しそうで、苦しかった。

その恭廉くんが、ショースケーターを志していると。
恭廉くんの演技は格別だと確信していたものの、ショースケーターが向いていそうかは、よく分からなかった。

現役時代の恭廉くんの演技は良い意味でかなり個性的だったと思う。変わったことをしていたとかそういうことではなく、何もかも"山本恭廉らしい"のだ。(柿田コーチは「独特な間の作り方をする」と評しており、そういうところから来る印象なのかもしれない。)
外に向けてバシバシとエネルギーを放つというよりは、その感性を丁寧に磨き静かに燃やす芸術家のようなイメージを抱いていた。
恭廉くんの演技を見る時にひときわ力が入ってしまったのは、単に思い入れが強かったというだけではなく、本気で見つめなければ受け止められないような、一種の危うさがあったからかもしれない。

観客に"見られる"のが競技。一方でアイスショーは"見せる"ことが仕事だ。競技は客席から選手に矢印が向いているのに対して、ショーは演者から客席に矢印が向いているイメージだうか。ド素人の私が語るのも寒い話だが、競技で演じることに長けている選手がそのままプロの世界でショーマンシップを発揮するかというと、必ずしもそうではないような気がしている。逆もまた然りだ。
私は選手の恭廉くんに対して超一方的に強烈な視線を向けていた実感が強かったために、個人的にイメージするショースケーター像と素直に結びつかなかったのかもしれない。

散々御託を並べたが、恭廉くんが今どれほどえげつないショースケーターになっているかはBEYONDをご覧になった方には説明の必要はないだろう。しかし私はオタクなので喋りたい。以下オタク特有の早口でお届けする。

まず、自分の"見え方"に並々ならぬこだわりを感じる。故に一瞬の隙もなく美しい。
この美しさは恭廉くんが生まれ持った造形の良さとは別問題だ。確かにどこからどう見ても等身バランスが芸術的に良い。ついでに顔も良い。きっと神様がご機嫌な時にノリノリで造形したのだろう。しかしそれとこれとは別だ。明らかに考え抜かれたポージングはどの角度から見ても美しく、何度見ても感動を覚える。

そして表現力。これは選手の頃とは別次元にある。選手時代から評価されてきた曲を解釈し表現する上手さは今やその域を超え、エネルギーを帯びて"伝わる"ものになった。これぞショーマンシップだろう。

いつもどことなく不安そうで自信なさげだった選手がこうも化けるとは想像もつかなかった。
私が競技する姿を見ていたのは最後の5シーズンだが、今やBEYOND視聴時間が試合の視聴時間を余裕で上回っている。そのためつい「恭廉くんは氷の上でいつもニコニコキラキラしている妖精なのでは」と思ってしまいがちだが、たまに全日本の録画を見て「いやめちゃくちゃシビアな表情しているが???」と我に返る。それと同時に、ショーでの輝きを思い出し胸が熱くなるのだった。

ここに辿り着くまでに様々な試行錯誤や苦労や努力があったのだと思う。客船でのショーの経験も、今に繋がるものとなっていることは間違いないだろう。それらを全てひっくるめて、今、恭廉くんがBEYONDで輝きを放っている。それがとにかくめちゃくちゃ嬉しい。

この記事を何故かここまで読んで下さった方は、既にBEYONDの山本恭廉をご覧になっただろうか。BEYOND、終わるってよ。残りの公演は新潟、愛知、宮城、立川です。今一瞬のこの輝き、見た方がいいと思います。以上です。

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