エクセス コンプライアンス リザルト 4-4章
「・・・どうした?急に具合が悪そうだが・・」
老人の様子がいよいよ心配になった私はそう問うた。尋常じゃない汗が出てる。
「・・・・ーー」
なにか言っている。私は耳を澄ませた。
「ありえない。時間軸は1つ。症状が出るのは問診を受けた側のみのはずーーー。要素該当に私も含まれていた?・・・話が違う・・・」
前半の時間軸が1つ、というところは大よそ察せた。
要は、その仮定で進捗させた研究であり、この老人が巻き込まれるなら矛盾が生じる、とかそんなところだろう。
要素該当、というのは良く分からないが。
「・・・大丈夫か?」
そのワードが気になったのもあるが、その老人の様子が心配すぎてそっちが勝ってしまった。とにかく、今度は私ではなくこの老人を平静にさせるべきだろう。そして、この状況下なら、さらにこの研究の目的を聞き出せるかもしれないと考えた。我ながら、この状況下で冷静である。
「・・・ーーー」
老人、いまだ沈黙・・・と、思いきや、急に立ち上がりエレベーターに小走りで向かっていった。
「お、おい!」
すかさず私も後を追った。さっきまでは気が動転しそうだったので正直具合が悪い。
エレベーターは動いていたようで、老人はそこで待機していた。
ヘロヘロな状態だったが私は追い付き、老人の横に着いた。
「エレベーター・・・とにかく"3階"を確認せねば・・・」
「・・・4階じゃないかどうか確認するんだな?私も付き合う。」
「・・・」
あれだけ饒舌に話していた老人がここまで追い込まれている。かなりの異常事態なのだろう。・・・・老人?いや少女?まだモヤが晴れない。あの饒舌は少女だった・・・ハズ・・・。数分前の記憶なのに、こんな事があるのだろうか。・・・まあ、今はこの老人も同じ状態な訳であるが。
・・・ここが”7階"なのは間違いなさそうである。さっき出てきた医務室もある。・・・既に違和感がぬぐえないが、ここに来た時の事を思い出してきた。
さっきの意見と矛盾するが、確か7階もなかったハズなのだ。見上げたビルは5階建て。そう記憶してる。私はもう1度このビルを出て一度外観を確認してみたいものだが、それ以上に老人が倒れてしまわないかの方が気になる。自分よりも動揺している者を見ると、自身が動揺していたとしても割と落ち着いてしまうものだという話は本当みたいだ。
エレベーターが7階に着き、無言のまま二人は乗った。
「・・・」
「・・・大丈夫か?」
「・・・」
何も噺をしてくれそうにない。あの落語家のような口調はウソだったかのように。
・・・・
・・・・
・・・・
・・・・やはり、私はこの老人と話をしていたのだろうか?落語家、そう思うということはあの少女に対して言う比喩とも思えない。何となく、自分の中で整理がついてきている。後はタバコだけが腑に落ちないか・・・いや、それ以外にもありそうだ。
「・・・この施設は、複起点を捻じ曲げられた人への回復措置として
用意された場所です。」
突然、老人が張り詰めた声で話しだした。今にも発狂しそうな危うい感じだ。私は黙って老人の挙動を伺っていた。
「・・・・・それが・・・・私にも影響するということは・・・」
「・・・研究、という訳では無く、何かのセラピーのようなモノだった?
・・・そういう解釈で良いか?」
「・・・研究には違いありません。」
一言二言話し、4階に到着・・・書斎とサーバー。間違いなく、さっきいた場所だ。
老人は悟ったかのように無表情。
「・・・とりあえず、さっきいた部屋へ戻りましょう。事実をお伝えします・・・と言っても、今の不破さんにとっては意味のない事なのかもしれませんが」
よくわからないが、何も分からないまま帰るわけにもいかないだろう。
私だって未だ記憶が有耶無耶なのだから。
・・・・
・・・・
・・・・そういえば、知人の誘いを受けてここに来た、と思っていたが、その知人が誰なのかが思い出せない。ここには自分で来たのか?・・・それにしたって、何故だ?
そもそも私は、他に予定は無かったのだろうか?私の記憶・・・記憶?思ってるだけ?それにしたって、何故こんな思い違いが連続して起きる?
「・・・どうせ今のままでは、到底帰れそうにない。何でもいいから聞かせてくれ。」
私は投げやりに老人に答えた。
老人、リアクション無し。・・・まあ、しょうがないだろうが。
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