短編映画『リップクリーム』(2008年)の解説

※※ どうぞ動画を見てからお読み下さい ※※

短編映画『リップクリーム』
監督・脚本 高山 銀平

2008年6月 PPOI喜劇祭にて上映
(『カカフカカベストコント円熟編』に収録)


カカフカカ企画で唯一の短編映画です。
パロディ映像に限界を感じ、終わりの終わりを何とか存命させようと足掻いての短編映画という選択なのでした。
長尺ですが、どうぞ最後までご覧頂けましたら幸いです。


当時のカカフカカ企画は年に1回ほどのペースで慰安旅行に行っていました。

多い時で年3回の本公演と企画公演を1、2回、更に2か月に1回のペースでコントライブを主催していましたので、
メンバーは常に何かに追われ休む間もなく、不満で爆発寸前の状態、ガス抜きが必要なのでした。

ただ残念ながら、普通に行くのでは勿体ないと持ち前の貧乏性が発揮されてしまいましたので、ではロードムービーでも撮りながらということになり、
これまた僕の悪い癖でプロットもろくに思い付いていないのに伊豆へ出発する当日を迎えてしまったのでした。

メンバーが観光をしている様子を漠然と撮っていると、

「次はどうしますか?」

と期待に満ちた目で支持を待つ演者たちの声、
(それはそうです、パロディ映像以外の撮影なんてメンバーにとってはどれだけ新鮮であったか)

言い出しの僕がまさかプロットが浮かんでないなんて口が裂けても言えません。

「え、えーと、あ、A(男)とB(女)が二人きりで抜け出してキスをするシーンだな」

悪戯書きさえもろくに書かれていない紙の束をそれっぽく捲りながら何とか答えました。

メンバー同士でキスという何とも照れくさい展開に皆がざわめき、どうやら上手く誤魔化せたようです。

次の撮影でも同様に問われ、

「えーとね、今度はなんとA(男)とC(女)がキスしちゃうんだよ」

この時点で僕の心の中は軽くなりました。
「よし、ロケ地が変わる度に順番にキスさせて時間を稼ごう」と、僕はきっと悪い顔をして企んでいたんだと思います。

女子メンバーの弾を撃ち尽くし、ならば今度は男子だと何とか旅は続けられ、
途中、《一人の男子が自分だけキスされずに旅は終わってしまう》というアイデアを何とか捻り出して慰安兼撮影旅行は無事に終わりを迎えたのでした。

東京に戻り、追加となった後半のシーンを撮影しながらリップクリームの演出を思い立ち、ついでにタイトルにもしたのでしたが、
取って付けたような感じになってしまったのは前半の旅パートにリップクリームの前振りが全くないからです。


団体だった頃の気の置けないメンバーと撮った思い出深い作品になりました。
最近の常連の役者たちとも何か撮ってみたいなと考えております。

考えているだけですが。

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