【京都大学公共政策大学院・地方行政実務実況シリーズ】「初回ガイダンス」(第1回授業:2019年4月8日)

初めまして、2年前から非常勤講師をしています東といいます。
上半期に地方行政実務を開講するのは、初めてでして、これまでの下半期よりも多くの方が来られているので少々勝手が違うなと思いますが、よろしくお願いします。

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1. 自己紹介

今日は、シラバスやお配りした資料の中身を見て、「どういう授業だろう」とお感じかもしれません。
この授業は3年目になりますが、アプローチは様々でして、毎年似たようなテーマについて考える授業ということで、これから紹介もしますが、過去の授業も踏まえながらやりたいと思います。
初回は、14回分の授業を概観して全体像をご理解いただくこととしています。

まずは簡単に自己紹介です。現在、京都府の情報政策課に属しておりまして、この部署は2年目です。担当が「AI・IoT活用・共同化担当」ということで、AIとかIoTについて毎日のように報道されていますが、担当の名前が示すとおり、行政においても、AIとかIoTとか活用しましょうということを、名前をつけてやっている訳です。

ITと言われたときに、「攻め」と「守り」ということが言われますが、新しいことを創っていくことを「攻め」だとすると、「守り」は、例えば個人情報をきちんと守りましょうとか、決められたルールの元でインターネットを使いましょう、といったことですが、その両方を担当しています。そして、「攻め」の一環と言えるかもしれませんが、2017年度からこの授業も担当しています。

元々は、大学を卒業してから5年間、東京の民間企業で働いていました。その時は、投資家向け広報を担当していましたが、その後、京都に移住して、京都府庁に勤めることになりました。公務員の場合は、定期的に異動しますので、私の場合は、広報を皮切りに、秘書、防災、霞が関・内閣府の地方分権改革推進室への出向を経て、現在所属する政策企画部にいます。

霞が関から戻ってきて、最初にやったこととして、知事に事業提案をする制度がありまして、今後のAIとかIoTの活用を見据えて、とは言えAIとかIoTという言い方は、あまり私はせず、むしろ「データ利活用」という言い方をこの授業でもしますが、これを進めるべきだと提案して、予算をつけていただいてその担当になりました。その提案にあたっては、本大学院の学生さんたちと当時いろいろ検討をして、その成果として提案した訳です。後の回でそのあたりもご紹介するかもしれませんが、それを踏まえて、京都府庁としてアクションプラン「スマート京都推進プラン」という形でまとめて、2017年度からオープンデータの公開、データサイエンスの推進を進めています。

2. 地方行政実務とは

こういった私が担当としてやっていることを、そのままお話することが、すなわち「地方行政実務」であるということです。そして、こういった場で、みなさんと議論していくことも、また実務そのものだと思っていまして、それは2つの意味があります。

①行政のデジタル化について考える意味

1つは、この「データ利活用の取り組み」、あるいはシラバスでは「行政のデジタル化」と言っている事柄、まだできていると言えるものではありませんが、これから先進める上で、みなさんのような世代と議論することが重要だということです。これから社会に出て、活躍されていく皆さん方にとって、こうしたテーマがどのようにお感じになるか。どのような点が面白いと思われるか。これから当たり前になっていく世の中において、みなさんにとって「これはイケてるな」とお感じになること、これが重要です。私なり、他の自治体なりの取り組みを紹介することに対して、面白いかどうか、「何だろう」とか、いろいろな反応が行政にとってよいインプットになる。

②走りながら考える意味

もう1つは、こうした「走りながら考える」類のことは、決まっているものがないような状態です。授業には、いろいろなことを持ち込みます。こういった活動そのものにおいて、言い換えれば「攻め」の取り組みについては、しっかりインプットをし、みんなでシェアをして、どれがいいのかなと吟味していく、こうしたプロセスがますます重要になってきます。また、シラバスにあるとおり、自治体の職員さん、しかも京都府庁以外の自治体職員さんにもご参加いただき、お互いいいとこ取りしましょうということを考えています。

③過年度の授業の紹介

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こうしたやり方で、この3年やっていますが、平成29年度の授業では、オープンデータのサイトを作ったところでしたので、このサイトを使ったらどういうことができるのかなということを、学生のみなさんと考えるものでした。その成果は、サイトに掲載していますので、ご覧ください。

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昨年度は、そこから抽象度は少し上がりましたが、「データ利活用」広くは「行政のデジタル化」について考える授業としました。この「デジタル化」は、行政に限らず、民間企業においても急速に取り組みが進んでいるものです。「行政は関係ないよ」とすることも、もちろん可能なのですが、それによって迷惑を被るのは行政サービスの受け手である住民の方々です。ですので、必要なことはやろう、ということですが、何をやればいいのか。それを考える上で、資料にまとめているいくつかのテーマ、すなわち

・デジタルトランスフォーメーション
・データサイエンス、データ利活用
・標準化、システム改革、BPR
・オンライン化、マイナンバーカード
・デジタルデバイド、セキュリティ

これからの世の中で、新しい価値を生み出すもの、また進めば進むほど守らないといけないもの両面で考えるような授業となりました。これらの新しい言葉を理解するために、写真にあるとおり外部の様々な方々とディスカッションする形をとりました。

この成果は、今年度も次回以降の授業でも取りあげますが、国もそうですが、法律で地方において官民データ活用推進計画を作るべしとなっていて、京都府も準備をしています。その中のテーマの1つでもある訳で、みなさんと議論することで、私自身がこの計画のドラフトを作るのが仕事ですので、そのアイデアを授業に持ち込んで、議論した訳です。そして、その成果としては計画に対する提言として、「国内外のオープンデータ状況に基づく提言」など様々な点について提言をいただいたということです。

このように平成29年度と昨年度は、取り組みのベクトルは微妙に違っていますが、今年度はちょうどこれらの中間のようなものをイメージして授業計画を組み立てています。

④授業の目標

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ですので、授業の目標はこれまでとあまり変わっていません。
地方行政実務という授業が、この京都大学公共政策大学院で提供されている意味を、私なりに理解してやっています。
例えば、これまでの授業ですと、オムニバスで京都府なり京都市、他の自治体の職員を呼んで話をするというものでしたが、これは同様に自治体の様々な分野の実務を理解することが目標とされていた訳ですし、私が担当することになっても、それは変わりません。

その上で、他の授業との大きな違いはその「実務そのもの」を理解するということにあるかと思います。そのために、実務教員として、現役の地方公務員が授業をするという形をとっているのだとすると、体系立っていないかと思いますが、試行錯誤していること含めてお話することで、みなさんの学習にも意味があるのではないかと考えるものです。

メタ理解への眼差し

ただ、その際に注意したいことは、メタ理解が必要だということです。働いた経験がある方は別ですが、そうではない学生さんには、地方行政の実務と聞いたときに「あれ?思っていたイメージとなんか違う」と思われることがあるということです。

また、私が「情報政策課」の職員であり、「データ利活用」とか「行政のデジタル化」いう話をするのであれば、「これはITの授業で、ITスキルを身につけるのか」と思われるかもしれません。それは違います。とはいえ、ITに対する苦手意識が、もしあれば授業はある意味でハードかもしれませんが、理解していただきたいのは、なぜITスキルというようなもの、が業務に必要になっているのか?ということです。

それが、行政のデジタル化が必要になっており、そのために何をすべきかと考えるときに一番必要な観点です。
というのは、行政という組織があり、私のような人間が職員として仕事をする訳ですが、その人がITと呼ばれているものを全く使わなくて、行政のデジタル化ができるか?それはできませんよね。
では、行政にはよくある「誰かにお願いするとして、その仕組みは職員が作ろう」と考えるのでしょうか。それだと、その職員には、実はその仕事のことは分からないままでしょう。私が言いたいのは、決してITのプロになる必要はないのですが、そのことが何なのか理解をしないと、この手の話について噛み合わないものになるということです。

自分の手でやってみる

そのために、ポイントとしては、「自分の手でやってみる」ということです。その過程でITスキルの習得みたいなものはどうしても出てきますが、困ったときには「なぜこうしたことが必要なのか」ということで考えるとよいのではないかと思います。

こういうことを考える上で、重要なのは、表面的にはITっぽいことを話しますが、「なぜ必要か」と「どうやってやるか」が、実務そのものです。この「どうやってやるか」すなわち、業務の遂行そのものを、理解いただくために、いくつかのツールを触っていただこうと思っています。

その際、この授業で取り扱うことが全てではありませんので、必要な参考文献をお示ししますし、さきほど言ったとおり毎日のように報道されています。そういうものを目にしたときに、「ああ、こういうことなんだ」ということが書かれていますが、それには注意が必要です。

要するに、「ここで書かれていることがこうなので、行政においてもこうするべきだ」と結論づけることは、確実に間違っています。気づくきっかけではありますし、「そもそも行政はそういうものではないので、適用できない」という意味で言っている訳でもありません。大抵報道されている別の意味、思惑、例えば業界の振興のために「流行っている」と取りあげられ方がされることもあります。まあでも、そうやって裏事情に詳しくなって何でも疑いの目で見るような、擦れた人になってくださいではないです。新しいと思われるようなことの世界には、その手のことがありますので、報道で出たことには注意しましょう、というだけです。

問いを立てること/課題とテクノロジーとの「いい関係」

また、同じような話ですが、ツールですとかテクノロジーの話をしますが、やはり重要なのは問いを立てることです。行政でも、新しい言葉を言うのがよいのではなくて、あくまで何のためにやっているかが先にあるべきです。解決すべき課題があるから、行政のような組織があり、私のような職員が働いている訳ですね。何を解決しないといけないのか、それを何によって成し遂げる(業務を遂行する)のか。その際にテクノロジーがあるので、そのためにしっかり使いましょう、ということです。

ですので、何でもかんでも最新のテクノロジーを使うことがそのソリューションではないということですね。また、現状もそうではありません。例えば、保育所で考えてみましょう。今、保育需要の高まりがある一方で、保育士不足が言われていますね。そうしたときに、人手不足を解消するためにテクノロジーを使いましょうというのはありうる考え方ですが、ではロボットを使ったりAIで何か必要な業務を代替してもらうとしたらどうでしょう。その際に「どこまでが保育士のやるべき領域なのか」ということが考えられないといけない訳です。テクノロジーで代替できることは多いと思いますが、それを全て任せてよいのか、他方でまったく任せない、子どもはすべて人が全部面倒をみないといけないんだ、ということも違う訳で、答えはその間のどこかにあります。それを考えるときに、どのように考えるか、そのためにテクノロジーも理解する必要がありますし、保育の現場への理解も必要です。
そのための「課題とテクノロジーとのいい関係」を理解する必要があります。

「テクノロジーの民主化」がもたらす働き方・マインドセットの変化

みなさん、学生さんで現場にどこまで行けるかはあるかと思いますが、何事も自分の目や耳はもちろん、特にテクノロジーについては、手を動かして理解するということが重要です。そうした理解できたことを使うべきでありまして、これは行政がなかなか苦手なことでもあります。ここでは「テクノロジーの民主化」と書きましたが、今日の授業もGoogleドライブに資料を掲載してペーパーレスで行うとか、出欠や質問を無料のサービスを活用して取りまとめるといったことができるようになるなど、無料ないしは極めて安価で、「誰でも」できるようになったことを、現在当然のこととして前提にしています。今は、これが当たり前になっていますが、行政はまだまだ当たり前ではありません。

こうしたことを考えると、コミュニケーションのあり方も変わりました、というのが一番大きいですね。例えば、新歓コンパの季節ですが、集合場所を連絡する方法は、この10年で様変わりしたのではないでしょうか。もちろん、今でも百万遍なり出町柳の駅前にプラカードのようなものを掲げて案内している学生さんを見ますが、SNSを使って告知をしたり、連絡を共有しているのではないでしょうか。
そういうことが、会社で働く上でも、誰でも安価に使えるようになったテクノロジーが変えたことがあり、それをまとめて「働き方」とりわけ「マインドセット」、考え方・心の持ちようですね、それが変わっているということが、取り上げる内容に含まれています。
こうした観点から考えると、行政に対するイメージも変わると思いますし、中で働いている人間の考え方、意識も変わってくるし、もっと言えば、そうしたところから変えていく必要があると思います。私が持っている問題意識は、このような仕事をしていることの意味が、このあたりであるということです。

⑤授業を通じたアウトプット

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次に、そういったテーマで授業を進めていく先のアウトプットとしては、2つです。
まず、みなさんが面白いと思ったことを、深堀りしてみたいことに取り組んでもらって、ぜひ一定のゴールにたどりついてもらいたいと思います。それはデータ分析でもいいですし、何かのサービスのアイデアの提示といったものがあります。また、その面白いと思ったことが、いろいろな事例としてどのようなものがあるかを調査することも意味があると思います。

また、もう1つは、自治体職員さんにもこの授業には開放しています。組織は違いますし、都道府県や市町村といったように、規模や地勢上、成り立ちも違いますが、それぞれ実務を担っている職員さんが、いろいろ考えていることなど、この場でも是非シェアいただきたいと思っていますので、みなさんでもそれについて考えてみてください。その対話ができるような授業にもしたいと思いますし、それが地方行政実務を理解することにも資すると思います。

 ⑥参考文献

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次に参考文献の紹介です。
シラバスに記載の他、まさに今校正をしている最中ですが『プロ直伝 伝わるデータ・ビジュアル術ーExcelだけでは作れないデータ可視化レシピ』を挙げます。データの可視化というのは、データを活用をする上でのファーストステップに当たるもので、数字の羅列が何を意味しているのか理解する上で、重要なものですが、その一節を私が担当しています。そのツールを授業でも使う訳ですが、この1つのツールだけでなく、まさに本では12のツールをそれぞれ分担して取りあげています。その他のツールも含めて、ご覧いただくのが重要です。ツールはこれだけ、ということではなくていろいろあること、それによって何ができるのか、可視化という意味では、何が分かるのかということを理解するためのレシピということで、そうした本も参考にしてください。

また、「テクノロジーの民主化」といった小難しい言い方をしていましたが、読み物として最近出た本としては、『ファクトフルネス』、みなさん知っていますか?読んだことありますか?今、本屋で平積みになっていますが、これはお勧めです。いくつかの質問が出てくるのですが、これ大抵間違うんですね。私は、これは間違った方がよい質問なんだと思いました。それと、トーマス・フリードマンの『遅刻してくれて、ありがとう』も挙げておきます。著書としては、別の方が有名かもしれません。『フラット化する社会』という本も出しています、ジャーナリストの方です。題名の意味は、読んだら分かりますが、副題となっている「常識が通じない時代の生き方」というのがミソでして、それについて考えたルポというか、人のあり方、生き方も含めた考察が散りばめられたものです。それは先ほど言いました「テクノロジーと課題のいい関係」を考える上でも、よい本かと思いますので、お時間があれば是非読んでみてください。

⑦授業全体のアウトライン

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次に、授業のアウトラインです。
14回の授業になりますが、1回完結型でもありますが、後に行けばまた話が戻ってくるような形になっています。
最初の数回は、履修登録をするかどうか検討されると思いますので、しばらくは概論的な話をします。実際に手を動かしはじめるのは、5月に入ってからになります。5回目あたりかと思います。それまでは、なぜそうしたことをやるのかを議論していきます。

手をガリガリ動かすのは、5から9回までかと思います。また、12回については、後でご説明しますが、パソコンというよりも、模造紙・マジックを使うようなワークショップになるかと思います。

それでは、回ごとにかいつまんで説明します。

第2回:行政におけるデジタル化・サービスデザイン・データ利活用

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まず来週第2回は、さきほどから「行政のデジタル化」と何回か言っていますが、それって何ですか?ということを説明します。
その際のスタートは、まさに今検討中のものですが、国でも新しいIT戦略を、来月・再来月あたりには出てくると思いますが、現在進行形の話です。
ここにあるとおり、「デジタル時代に対応した”新たな社会システム”への移行」が必要で、そのためにIT戦略が必要です、とあります。
その検討をしている流れで、左側のように、現行の戦略を、右にあるような視点で考え直そうとしているものでして、左の中に「地方のデジタル革命」とありますが、そのテーマとして、自治体が自ら何を遂行していくのか、そのための計画が冒頭申し上げた「官民データ活用推進計画」です。法律によって、都道府県はその策定が義務付けられたもの、市町村については努力義務なのですが、国の補助金を活用する際には計画を策定し、それに位置付けてくださいと言っているように、これ事実上の義務付けじゃないのかなと思いますが、そうした補助金を活用して事業を遂行するといった形になっています。そうした計画が、現時点では都道府県では5つほど、市町村ではもっとたくさん策定されています。京都府は、今年度中には、というのは私がドラフト書かないといけないので、書いていますが、そうやって策定していこうと考えているところです。

で、その中で、結局ITみたいな話になっていますが、国や地方と言っていますが、誰がやっているか関係ない場合が多いと思います。あるいは、法体系においてもそうであるように、国と地方の仕事は連続している、そのお金をどこから調達するのか、その区分によって地方分権なり国主導なり言う訳ですが、とにかく国と地方はつながっている訳で、こうした戦略によって、国が先に変わる、あるいは地方から変えていくことで国全体もということもあります。自治体が1800近くあるように、それぞれのやり方がある訳ですね。それをどのようにデジタル化するか、個別の業務というよりも、まずはこうしたトレンドをどのように戦略として立てようかというものです。
その際に、重要な視点が「デジタル化」と「サービスデザイン」というものです。とりわけ、後者については今年度流行ってくる言葉かなと思いますが、行政でも民間にならって、特に「デザイン」という言葉について意味について注意が必要ですが、データをどう活用するかということを含めて議論していきます。

授業の実況はこちらからどうぞ。

第3回:データ利活用による行政の効率化・高付加価値化

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3回目は、それでは、そうしたことを京都府においてどうやっていますか、ということで、今年度の予算として「府庁生産性向上推進費」という形で予算にしています。その中には、業務プロセス改善、業務をもっと効率的にしましょうということ、そしてこれもトレンドになっていますが、データに基づいて、これはEBPMという言葉でこれも流行りつつありますが、「データに基づく」ということが重要です。そして、クラウドサービスの利用、ということで、現場における即時・即座の住民対応という言い方になっています。これはすなわち、今「即時・即座」になっていないことを示してはいる、あるいはこうしたことが求められているので、クラウドサービスを使いましょう、これらによって、行政の生産性を上げていこうということを議論します。

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第4回:オープンデータとデータ利活用概論

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その上で、個別にデータを使うということについて、考えます。第4回は、オープンデータとデータ利活用の概論ということで、どういったデータを使うか、どうやって使うか、ということになりますが、それを今自治体職員が一生懸命勉強しています。
スライドでご紹介したのは、左側はポータルサイト、右側は研修の場として用意されていて、これに多くの自治体職員が取り組んでいるものです。
特に左側はサイトがあって、それを見ているということで、その意味も含めて議論します。

授業の実況はこちらからどうぞ。

第5〜6回:オープンデータ(カタログサイトの操作・公開手順)

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そして、まずはオープンデータから取りあげますが、5回、6回は、では京都府はどうやってオープンデータについて取り組んでいますか、と言うことを取り上げます。そのためのオープンデータのポータルサイトになります。では、ご紹介としては「これをどうやって作っているのか?」ということを、テストサイトを使って、みなさんにも触っていただきながら、実務としてオープンデータを公開することの意味、その一連の流れをみなさんにも体験いただくことで理解を深めていただくことを2回授業を使ってやっていきます。

授業の実況はこちらからどうぞ。


第7〜9回:データラングリング(データを飼い慣らす)

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7回目以降は、「データラングリング」という聴き慣れない言葉、これは「飼い慣らす」という意味ですが、どちらかと言えばITエンジニアの方に馴染みがある言葉ですが、他で言い換える言葉を思い浮かばなかったので、これをそのまま使っています。簡単に言えば「データをどう扱っていくか」ということになります。着目すべきポイントとして、データの可視化、そしてその可視化するプロセスをTableauを使いながら体験いただきます。それを通じて、どういうことが必要なのかということを理解いただこうと思っています。また、気をつけていただきたいのは、可視化を綺麗に作ることが目的ではない、ということで、株式会社Agoopさんにご協力いただいて、ビッグデータ、具体的にはスマホから取得した人流データを活用した可視化サービスをご紹介いただきながら、みなさんにもサービスを使ってみていただいて、こういうデータを取り扱うことで、どういうことが分かるのかを実践的にやっていただきます。

Tableauの習得に時間がかかるようであれば、じっくり3回のうちたくさん時間を使うとか、そのあたりは臨機応変にしながら、ただテクニカルに寄りすぎないようにしたいと思います。

授業の実況はこちらからどうぞ。

第10〜12回:多様な主体との連携による地域課題解決

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10回から12回については、もう1つ重要な点であるとシラバスに書いた「ともに考え、ともに作る」ということを取り上げます。
地方行政ということで、私のような公務員だけがするのではなくて、地域の方、それを生業としている方も含めて、様々な方と一緒にそのスキルや資源を活用して課題解決をしていく動きがあります。データとどう繋がるのかは、授業を通じて理解いただきますが、例えばコンテスト、これはこうしたことを加速するための取り組みですが、その他にもオープンデータソンと呼ばれるウィキペディアやオープンストリートマップを編集するイベント、このウィキペディアをみんなで作ろう、作ることができる、ということを実際に作っていきます。そのプロセスがみなさんにもオープンになっている訳ですので、それを使ってどうするかの前に、どうやって使うかを理解いただくというものです。

最後が、ファシリテーションの話です。こうした様々な人たちと一緒に考え、意見集約をしていく際に、模造紙やマジックを用意して、それを可視化したり、まとめていく力があるということ、例えばグラフィックを使って多様な意見をまとめていくファシリテーションが重要になってきます。ここでは、「そうしたものが重要だ」と言うだけでなくて、みなさんもできるようになりますので、やってみましょう。実は、私も自分でやりたかったので授業でやってみようというものです。

第13〜14回:まとめ・成果共有

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以上、授業としてあちこちに飛ぶようなものになっていますが、最後のまとめ・成果共有の場で理解いただけるようになっていると思います。
最終的には変更になるかもしれませんが、期末レポートに向けた検討をお話いただく、それを別の方でグラフィックレコーディングしていただく、そしてそれをベースに議論するといったような、この手のワークショップでよく使われるプロセスを、授業でもやってみれればと思っています。
そして、そうしたプロセスを準備する場をどう作るか、ということにも留意したいと思います。これは、自治体職員にとっては必ず必要となるスキルだと思っていますので、ぜひ自治体職員の方も体験してみてください。

14回の授業は、以上のとおりですが、毎回授業の最後に次回授業の紹介をして、次に臨んでいただくことを予定しています。

⑧次回授業について

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では、その第2回授業について説明しますと、行政におけるデジタル化・サービスデザイン・データ利活用について概説します。
参考文献として、シラバスに載せられなかったもので、特許庁のレポートをご紹介します。特許庁含めて経産省が、デジタル化については精力的に活動されています。昨年度経産省の方にもテレビ会議で入っていただいて議論しましたが、他方でそうした国内外の動向については、なかなかまとまった文献がないということもあります。その中で、このたびまとめられた中山郁英さんの論文がひとつのベースになったかなと思います。ですので、中山さんにお越しいただいてお話いただきます。

なお、解説抜きでご覧いただくと分かりにくいかもしれませんが、この論文や特許庁のレポートの末尾にも用語集が丁寧にあります。カタカナの言葉は、行政に入りがちですが、これらの概念がなぜ重要なのかを考えていきます。それは、京都府の官民データ活用推進計画でもまとめていかないといけないのですが、それに先立ち他の自治体の計画含めて参考になるのが政府CIOポータルです。そこには計画策定にあたっての手引きがありますのでどういう内容を定めることをが予定されているのか把握できるかと思います。

こうしたドキュメントで読んで、新しい言葉を理解いただくこと、また経産省サイトではキーワードについての解説も、職員の声を含めて載っており、全体でまずまずボリュームがありますが事前に読んでおいてください。

質疑

Q 昨年度のレポートでどのような提言があったのか?

A 国内外のオープンデータ状況、というのは、もともとオープンデータは2013年くらいから海外の取り組みが入ってきた動きです。それまでのアメリカなりヨーロッパのトレンドを整理いただいた上で、日本では現時点では自治体の26%程度しかやっていないのですが、オープンデータで自治体がやるべき9つの提言をいただいたものです。これは、京都府の官民データ活用推進計画においても反映させていければと思っています。

また、他のレポートでは、オープンデータを活用して、いろいろな人たちがデータや課題を共有して、一緒に解決していこうというオープンガバナンスについて取り上げられたものです。オープンデータの前提となっているオープンガバナンスについて考察されてものもありました。

この他、オープンデータに近い取り組みとして、面白かったものとして、オープンサイエンスについて調査されたものもありました。実は京都はこの手の活動が盛んなところなのですが、例えば、ナメクジについて、ある新種のナメクジがいる訳です。それをどこで見つけたか、リサーチャーの方が調査する訳ですが、見つけた人は、Twitterなどで共有してほしいとした上で、種の同定は専門家が行う訳ですが、そのエビデンスを蓄積するのは、一般の市民も参画して進めていくというものがあります。この他、ヒアリでもそういう活動があると伺っていますが、オープンデータがまずは行政が公開するというところからだとすると、オープンサイエンスは一緒に作っていくというところにウエイトがあるかと思いますが、そうした整理の上で、日本海側で発生するイルカの座礁を事例にして、それを沿岸の地域でどう対応していくべきか、これはイルカにとっては自治体境界は関係なく、また海上保安庁なり警察なり、地元の方も含めていろいろな方が関わっているのですが、費用分担など課題があります。それに対して、座礁場所の共有やツールの活用によって何をするか、その際にオープンサイエンスの取り組みを参考にしながら、どのように課題を共有すればいいかについて考察をいただいたレポートもありました。

最後の「官民協働のデータ・プラットフォーム構築」というものは、授業で取り上げたマイナンバーカードを端緒として、民間では情報銀行というものの実証実験など取り組みがはじまりつつあります。例えばライフログのような個人の生活情報をどう集めて、保存して活用していくかについて検討すべきことがあります。そうしたものの整理をされたものもありました。

Q 京都府のオープンデータの取り組みは100%ということだが、進んでいるのか?

A 実はそうではなくて、府内では京都市さんが先んじてされていました。その後がなかなか続かなかったというのが実態です。

もともとオープンデータが日本において取り組み始められた2013年時点で、すぐ取り組んだ自治体もありますし、様子見をしている自治体もありました。後者は、「それをやってどうなるの?」ということについて答えが出せないこと、また「そもそもホームページでいろんなデータを公開しているよね、それと何が違うの?」ということもあります。そうしたことでなかなか進んでいなくて苦労しているのですが、重要なことは「データをきちんと使うこと」が先にないといけないということです。

京都府の場合は、先人の苦労を見ていたので、さきほど亀岡市さんからご紹介いただいたとおり「テクニカルなやり方」が必要だった訳です。今、国が自治体に対してオープンデータの研修を開始していますが、それが示しているのは、それによってデータを使うようになろう、というためには時間がもともとかかることだったということ、そしてそれを急いでやり始めていると言ってよいかと思います。私は、また授業のときにご説明しますが、急にオープンデータをするという話ではなくて、元々そうすべきだった、決して遅れていると評価すべきというよりも、きちんと理解できればすぐ話が進むのではないかと思いますので。

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