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【政策参与のおはなし(その23)】答申案に対して意見を述べる(2024年6月4日第7回吉野町行政サービスの変革・新庁舎整備検討審議会)

これは何?

※以下、テンプレ的に吉野町審議会の場合は同じ記載です
2023年11月から設置された奈良県吉野町の審議会「吉野町行政サービスの変革・新庁舎整備検討審議会」の委員になりました。

参与としての肩書で、他自治体の審議会に参画することになったので「政策参与のおはなし」という括りの中で審議会で活動を記録するものです。

審議会では議事概要なども公開されていますので、基本的にはそこの私パートの抜粋を中心にしつつ、最低限の編集(見出しをつけたり、適宜段落分けを追加したりなど)をしています。

意見を述べました

6月25日に会議録の速報が掲載されました。第7回審議会は「吉野町新庁舎整備等基本構想案の策定について(答申)案」をテーマとした回で、久しぶりになりましたが現地参加した私も各委員順で意見を述べています。

各委員からのコメント、委員同士の議論も行った流れで私からも意見を述べました。

答申案についての意見

細かい文面については、事務局にも意見を提出させていただき、適宜、お取り計らいしていただくということですので、共通する骨格的な内容について、幾つかコメントしたいと思います。

構想案の位置づけをどう捉えたらいいか

他の委員からもご意見があるかと思いますが、まずは、構想案の書き方です。「これは一体、主語が誰なのか」、一瞬分からなくなりました。改めて、要綱を拝見して、報告書を作成することが本審議会の立ち位置であり、構想案がそれに当たるものだと理解しました。

(参考)吉野町行政サービスの変革・新庁舎整備検討審議会設置要綱
第3条 審議会は、町長の諮問に応じ、次に掲げる事項について所掌する。
 (1) 新庁舎整備等に係る調査及び検討を行い、その経過及び結果並びに
  基本構想案等を記載した報告書を作成し、町長に答申すること。

第1回審議会資料

従って、構想案を出した後、町で最終的に決定する位置付けになるものを審議会として積み上げてきたということだと思います。

さらに、これまでの審議において各委員から様々なご意見が出ていたと思いますが、それらが構想案の中では、「審議会のその他の意見」という形で網羅されているものもあれば、本文に含まれている意見もあります。また溶け込めなかった部分や補足する意見等、これらの意見を今後、町がどのように受け止めて、整備を進めていく時の指針とするのか。留意すべきだという意見等、多様な意見があり、それぞれに意味があると思います。委員から出された意見もあれば、それを相対化して盛り込んだ意見もありましたが、そのような意見を構想案にどれぐらい盛り込むのか。

このような書き方がどう受け止められるかについては、各委員からあると思いますので、そこは明確化するべきだと思いました。

構想案の構成について

2つ目が構想案の構成です。私が、最初読んだ時に、「ん?」と思ったのが、構成の順番です。「4.新庁舎の移転候補先の絞り込み」と「5.新庁舎整備の基本理念」の順番は、逆にした方がいいと思います。そうでなければならない訳ではありませんが、議論の順番として、基本理念は、集中化or分散化や最終的な候補先をどこにするのかといった考え方には中立だと思います。

また、継続して議論するべきとした、上市地区のまちづくりの観点等、庁舎の場所と別の観点で考えることもあります。これが、構想案のいわば、町長から諮問を受けて、本審議会で導き出した考え方の付加価値にあたる部分であり、皆さんと作り出したことだと思います。必ずしも庁舎だけではなく、まちづくり全体で考えることにより、上市地区の価値を再認識し、どうしていくべきかが同時に考えられなければならないことが含まれていると思います。

このような経緯もありますので、まず基本理念を検討し、次に移転候補先について、資料を交えて、再度幅広に調査して来ました。今後、追加の情報が出てくるケースもあると思いますが、調査したことをきちんと反映させて、最終的に落ち着く所に落ち着いたと受け止めました。ですから、構想案の順番は、そのような自然の流れで、4と5を入れ替えた方が、構想案を読む人も分かりやすいと思います。

DXという言葉について

それから、3つ目は言葉の問題です。『DX技術』という言葉が各方面に出ていますが、『DX=変革』を意味しており、デジタルを活用した変革です。「DX技術の変革」や「DX技術の恩恵」等と書かれている部分は、「デジタルを活用した変革」や「デジタルの恩恵」という言い方だと思います。

また、吉野町に先進的な「デジタル変革条例」というものがありますが、「デジタル化の推進」と「デジタル変革」は、言葉を区別して制定されていますので、それを合体させたような「DX技術」という言葉は、違和感があります。条例の言葉遣いに合わせて、構想案も取り扱うべきです。

「アナログかデジタルか」なのか?

最後に、変えるべきこととして、「アナログな業務をデジタル化しましょう」と書かれている所で注意していただいきたいことがあります。デジタル変革という意味では、アナログとデジタル、あるいはデジタル化を対比させることは、不適切だと思います。

本審議会でも、デジタル化を進めるべきことは、当然進めるべきだが、アナログと呼んでいるもの、いわゆる役場が今まで住民サービスとして丁寧にやってきたことや役場が大切にしてきた価値観がデジタル化により消えてしまうのではないかという議論が多くあります。しかし、デジタル化やDXは、そうではなく、業務の最適化を図るという意味であり、本審議会でも出ていますが、コストをちゃんと切り詰めてやらなければいけません。

ですが、役場の職員が働く場としては、今のようなものではなく、良いものであって欲しい、町民あるいは事業者が来た時に安らげる場所であって欲しい、町の誇りであって欲しい等、いろいろな思いがある場所や働き方になると思います。

ここに書かれているアナログとデジタルは、両立するべきものとして捉えたらよいのではないかと思います。

行政サービス・庁舎として考えることを、対比させるような形やそれをデジタルに変えてしまおうとすることが、今回の趣旨だと受け止められる必要はないと思います。またアナログな業務も、デジタル化される業務も、制度が縦割りであったり、結局手間がかかったりする等、デジタル化されても発生する無駄は、移行期に起こります。

これを安易に「これをやることにより、良くなる」と受け止められると、継続して考えるべきこととして書かれているデジタルのサービスを生み出すという方向性とは矛盾した書き方になるので、注意しなければいけないと思いました。

表現の修正については、細かい所になりますので最終的にもう一度、「最終これでいいですか」という構想案があれば、その時にコメントさせていただきます。

デジタル化に関する委員からの懸念について

答申書案で私が指摘したことは、辻委員のご懸念である、何でもかんでもDXでお金をかけて取り組むという方向性は止められないかもしれませんが、使えない人たちは果たしてどうするのか、と捉えられる方針ではないし、むしろそうしたやり方はよくないということだと思います。

私が先ほど申し上げた、「アナログな業務をデジタル化する」に、そのように受け取られる要素があり、であるからこそ、そのような解釈とならない書き方に答申書案は変えるべきだと思います。

本審議会の議論で、スマホでデマンドバスを呼ぶときの課題を委員からご紹介いただいたと思います。そのような仕組みがあるものの、使っていただくために役場が取り組まれていることがどれぐらい伝わっている等のご指摘があったと思います。それも踏まえて、きちんと他のサービスを設計していかなければいけない時に、「アナログな業務をデジタル化する」という一面的な取り組みが、今回目指している行政サービスの変革ではありません。

アナログな業務を残して、高齢者が安心できる役場サービスの在り方を考えることが、構想案に書かれている内容や総接触時間を増やす面でサービスを充実させることです。

つまり、デジタルを購入するお金をどんどん入れるということではありません。人件費がかかるかも知れませんが、余計な人件費をカットし、不要な仕事に手を取られることなく、もっと職員がやりがいのある仕事に就いて、町民と相対して、充実したサービスを提供することで、成り立つ線が出てくると思います。

先ほど申し上げましたが、デジタルとアナログを二項対立にする議論に絡め取られないようにする議論をして来ましたので、そこは丁寧に変えた方が良いことだと思いますし、そう考えれば恐らく両方が重視しているところの意味合いは、両立すると思います。

追加の情報提供

地方自治法の改正に伴う「指定地域共同活動団体」について

新たな議題を追加するわけではなく、先ほど、委員長もおっしゃった住民自治の関係です。まさに今、国会で審議されている地方自治法の改正の中で、そのような地域団体を市町村長が指定することにより、例えば行政財産を貸し付けられるようになる、事務を委託する際の契約の仕方が簡易になる、国として様々な財政支援を行うようにしていく、等の方針も出ています。

将来に渡り、今、取り組まれていることを活性化する時に、そのような国の運用も見据えて、様々な取り組みを活用し得るタイミングだと思います。そのような内容を盛り込んで欲しいということではなく、情報として、ご提供します。

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