【政策参与のおはなし(その19)】これまでの議論を踏まえた意見を述べる(2024年3月24日第5回吉野町行政サービスの変革・新庁舎整備検討審議会)
これは何?
※以下、テンプレ的に吉野町審議会の場合は同じ記載です
2023年11月から設置された奈良県吉野町の審議会「吉野町行政サービスの変革・新庁舎整備検討審議会」の委員になりました。
参与としての肩書で、他自治体の審議会に参画することになったので「政策参与のおはなし」という括りの中で審議会で活動を記録するものです。
審議会では議事概要なども公開されていますので、基本的にはそこの私パートの抜粋を中心にしつつ、補足があれば追記する(今回も小見出しをつけました)スタイルでと思います。
意見を述べました
4月15日に会議録の速報が掲載されました。第5回審議会は「第4回審議会の論点の整理」をテーマとした回で、オンラインで参加した私も各委員順で意見を述べています。
事務局の論点整理を踏まえて、各委員からコメントをするという流れで私からも意見を述べました。なので、意見を述べた対象である論点整理の資料も掲載しつつ以下にまとめてみました。
ポイント1:分散型か集中型なのか?
今回もオンラインで失礼します。3点コメントさせていただきます。
まず1点目として、分散型と集中型についてメリットとデメリットを整理していただきました。この整理について、違和感はありません。資料のP.9 に強調されている通り、一旦整理した上で比較しながら、みんなが合意できる答えを目指すことが大切です。それは、「総論賛成・各論反対」でもなく、皆さんがそれぞれ妥協する訳でもありません。それぞれが思う所を十分議論していくことが大切だと思います。これは、「分散か集中か」のどちらかを採用するかというような二者択一の世界ではありません。
第3回審議会に私も申し上げた通り、デジタルによる行政サービスの変革と
は、例えばデメリットがメリットに転じ得るような取組みとして取り上げられる事柄です。デメリットが多いからやめようではなく、それをメリットとして活かすには、どうしたらいいかを将来に向かって考えることが大切だと思います。
より具体的に、かつ類型化して考える
ただし、資料にまとめられている内容について、例えば、所属別やサービス内容、あるいは町民や事業者にとって、そのようなサービスや働く職員の姿がどのように受け取られているのか等の定性的なところは、より具体的に細かく分けて考えないといけないと思います。
つまり、役場の仕事は、多様であり、限られた体制ではありますが、多くの職員がおり、町民にサービスを提供します。何か大きな「あるべき論」で全部決めることでもないし、かといって全ての業務について、議論を尽くされないといけないわけでもありません。ある程度、類型化し、もう少し細かく見た上で、例えば、それが分散されたらどうなるか、集中することによりどうなるか、のようないくつか類型を考える必要があると思います。
件数ベース
そうした観点から類型を考えますと、例えば、これまで資料をお示ししていただいている手続き件数を基準で見て、「数が多いかどうか」というのは1つあると思います。また、数が少ないですが、町民や事業者にとって、それがきちんとできないとクリティカルに深刻な影響を受けるようなものが区別の中にあると思います。
手続きが多いものであれば、デジタルによって、効率化を図ることや今まで出来なかったことがもっと出来るようになります。処理速度も上がり、町民目線だと、手続きにかかる時間が相当短くなることや何回も行かなくていい等の効果があります。このように、その数が多い手続きは、分散・集中でどのような形でできるかを考えることが挙げられます。
内容ベース
あるいは、一見、数が少ないので見落とされがちですが、それが上手く出来なくなると、相当深刻であるような内容も審議会できちんと見定めておく必要があると思います。
その典型的な話が、災害時です。わが国でもすでに顕在化している課題でありながら平時にイメージしにくいことです。しかし、これは今回のように役場の大転換となるような時に、改めて事業内容を見直すことや具体的な訓練を実施し、本当にできるのかを現状の体制で見定めることが、こうした検討の中に入る必要があると思います。
ポイント2:アウトリーチについて
2点目がアウトリーチについてです。この整理の仕方としてイメージされているものは、現場に出向いて行くような話でした。私の説明の時にもあった鹿児島県の肝付町です。動画でお示しましたが、気を付けていただきたいのは、現場に出向く職員だけがアウトリーチ型ではありません。分かりにくいと思うかもしれませんが、説明時に言いたかったことは、各職員が自分の持ち場で最大のパフォーマンスを出すためにデジタルの力を借りましょうというお話でした。
動画では現場に出向き、問診等されている方が出ていたと思いますが、そこが自分にとっての現場です。役場に戻らなければ、他の連絡調整の事務や書類が書けないのではなく、あるいはスケジュール調整しなければ、会議ができないのではなく、オンラインで行い、書類も共同で編集すれば、自分の持ち場で仕事のパフォーマンスを最大限上げることができるので、これはすごく良いことだとおっしゃられていたと思います。
自分の持ち場でサービスの相手のことを考える
現場に出ず、役場で座って仕事をされる方も、そこが現場です。手続きがオンライン出来るようになり、町民が役場に来ない状況になったとしても、「目の前にいないから楽だ」「実際に来てもらわないとわからないことがあるから楽にならない」ではなく、それぞれ自分の持ち場で、どれだけ町民や事業者のことを考えられるかという仕事の向き合い方がアウトリーチ型という形で、もっと強調されてしかるべきかと思います。
つまり、現場に出る人だけで、サービスが成り立つと考えるのではなく、アウトリーチ型の行政サービスは、すべからく職員やサービスの受け手である町民・事業者にとって、それぞれ自分ごと化になるべき事柄だと思います。
ポイント3:庁舎スペースについて
3つ目は、庁舎のスペースの話です。追加資料を出していただいていますが、 結局、物理的にどうするかは、最後決めの問題だと思います。これまでの議論で、周辺の空き家活用も含めて、どのくらいスペースがあるのか明らかになりました。これは議論を進めていけば、決めていける内容の話だと思います。
ただし、講演の時にお話したポイントの1つが、「時間を活用しましょう」と いうことです。集中型あるいは分散型、いずれになるとしても、実際に体制が変わるまでの時間で、どのようなシフトチェンジするのか、変わっていく時の試行的な取組みを具体的に考えることです。
空き家を使ってみるのであれば、何の事業に使うかを、可能な限りお示しする必要があると思います。それは、職員側では、自分の働き方が一体どのように変わるかを具体的に考えることになります。この点では、職員と役場の調査等で、これまで仕事のやり方を抜本的に見直し、検討を進められ、職員から各種提案をされていますが、まだ形になっていないものがあると伺っています。ですから、そのような取組みを後押しする話として、審議会でも、仮にそのような取組みがあるとすれば、「それはもっと進めるべきだ」というメッセージを出す必要があると思います。
まとめ
「業務効率を上げて、コストを下げる必要がある」という意見をお持ちの委員もいました。「より良い環境で、職員が仕事をして欲しい」という意見もありました。この2つは言い方は違いますが、同じ所を見ているのではないかと、これまで繰り返し、強調されて来たと思います。既に役場の中で議論があるものは、どう具体的に進めるかということ、また所属やサービスの内容により違うところもあるため網羅できないかもしれませんが、出来るだけ類型化しつつ具体的に考えることが必要だと思います。
第3回審議会の補足
さらに付言すると、講演の後の議論の際に「インターネットが途絶した時に、何もできなくなるのではないか」という話がありました。吉野町内で使えない状況が仮にあっても、インターネットが全世界で止まるような事態が起こる可能性は少ないと思います。例えば、今般の能登では、罹災証明の発行の手続き等が現場で出来ない場合は、遠隔地で代行して、実施する試みが行われています。今後も、吉野町に限らず、他の支援する自治体が手続きを代行するような世界は、やってくると思います。
したがって、仮に吉野町内でしばらく通信途絶が起きた場合に「システムが使えないからデジタル化はダメだ」という考えではなく、それをどのように代替するかという観点で考えれば、補えると思います。その点だけ付け加えさせていただきます。
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