【政策参与のおはなし(その22)】地方自治法の改正案に対して意見を述べる(2024年6月11日参議院総務委員会・地方自治法の一部を改正する法律案に係る参考人質疑)
これはなに?
国会の参考人になった
第213回国会(2024年1月26日招集)に上程された「地方自治法の一部を改正する法律案」の審議の中で、参議院総務委員会での参考人質疑にお呼ばれしました。意見陳述で述べた原稿と配付資料(の一部)を再掲するものです。
最終的には議事録として確定する内容が正式ですが、ほぼ原稿のまま読み上げました。また、質疑については当日の動画をベースに文字起こししています。
なお、質疑の中で触れられていますが、2024年1月に日本都市センター「都市の未来を語る市長の会」で講演した内容をベースにしているところもありますので、より詳しい考え方を知りたい方は、そちらをご覧ください。
まあ、ともかく聞いてみて
これまで、このnoteの各記事でも書いていること(あちこちでしゃべっていること)の総まとめのようなものになっていると、自分で気が付きました。
そういうこともあって、個別の論点についてはやや概括的なものになっていて、参考人としてはもう少し踏み込んで話をしてもよかったかなと思うところもなくはないです(対総務省には伝わったところありつつも、後日の質疑での答弁で物足りないところがあったから、うーむとも思ってはいますが)。
でもまあ、ともかくも「言いたいことは全部言ったった」という形で、今後「おい、参与の言いたいことは何なんですか?」と言われたときに、「はい、15分で聞けるから、聞いてみてね」と言えるようになったのかと自己評価しているところです。
YouTubeでアーカイブが見れます。
意見陳述スタート
自己紹介
本日は、貴重な機会をいただきありがとうございます。
一般社団法人コード・フォー・ジャパンの東と申します。
Code for Japanは、東日本大震災の際の活動を契機とし、2013年に設立された非営利型の一般社団法人でありまして、いわゆるシビックテック、市民をはじめ多様な主体が連携しテクノロジーを活用して地域課題解決を行う活動をしています。その際、行政は重要なプレーヤーでありまして、その機能強化あるいは職員の能力向上としてDXの推進や、住民参加型のデジタルプラットフォームの活用を進めております。
また、滋賀県日野町で政策参与を務めております。日野町は人口2万人、職員数は230人ほどの小さな団体でありまして、古くは戦国武将・蒲生氏郷が生まれたまち、あるいは近江商人の1つであります近江日野商人のまちとして知られ、司馬遼太郎の「街頭をゆく」においても、その町並みが記されているところです。その日野町において、2021年度より地方公務員法における「参与」として、自治体DXへの対応と業務効率の改善を図ることを職務としています。
本日お話するのは、大小様々な自治体の現場の実情や自治体DXと呼ばれる言葉が捉えるべき事柄にも言及しながら、今般の地方自治法の改正を契機に議論がさらに進むことを期待し、課題や可能性について私個人の立場として意見を述べるものです。
意見陳述のまとめ
時間も限られていることから、資料をおめくりいただきまして、最終17ページにお話したい内容をまとめました。
自治体DXは、何を目指す事柄なのか?
1つ目は、「自治体DX」をどういうものとして考えるかという観点です。それは、我が国が目指すデジタル社会の実現・発展を持続的に可能にするための仕組み、アーキテクチャと言うことができると思います。
すなわち地方分権改革で目指してきた自治体の自律性の確保、より言えばそうした「自律性を強めた領域における意思決定メカニズム」に着目するものです。こうした意味から、今般の改正案は重要な意味を持つものと言えます。
情報システム全体最適・セキュリティ確保が地方自治の重要な要素に
まず、第11章を新設し情報システムの有効利用・自治体間や国と協力した最適化およびセキュリティ確保が地方自治において重要な要素であることを明示したことです。
情報システムはこれまでから自治体において活用されており、行政サービスの大量処理や高度化の要請に応じて順次整備されてきたもので、役所の仕事の多くは様々な情報システムが規定しています。その意味では第244条の5 第1項は、確認的な規定であることも確かですが、住民サービスの向上、行政組織の業務効率や職員の負担軽減などこれらを含めた最適化といった、住民・行政組織双方の意味で重要な役割を持つ情報システムと、第2項に規定する、それを本来あるべき機能にあらしめるところのセキュリティの確保が、実体としても自治体の根幹の1つであることを示していると言えます。
そして、同条第2項において、サイバーセキュリティの確保、個人情報の保護といった必要な措置の義務付けがされました。
セキュリティを主体的に選択し確保することの意識付け、個別法における情報システム含んだ全体最適化に対する「国の配慮責任」
前項で政府部門がネットワーク上で相互接続され今後も進展することから、どこかに脆弱な状態を作らないという意味で当然の措置でありますが、そうした措置は、自治体が自ら主体的に選び取ること、すなわち自治体の根幹である要素は自ら決めることが、自律的な存在である自治体に求められることであることを明確にしたものと理解できます。そして、情報システムの最適化・セキュリティ確保といった取組に対する支援は国の配慮責任として考えられるものです。この配慮責任については、のちほど少し触れます。
国と地方の役割分担について
次に、国と地方の役割分担に関することです。
個別法も含めた再整序を行ってきたもの
地方分権改革の取組は、いわゆる平成デモクラシーと呼ばれる統治機構改革と相まって整備されてきたものです。そこに自治体DXが合流しているのが現在地として理解するものです。その中で、地方自治法や個別法のあり方も含めた秩序が作られてきました。
この点で、「補充的な指示」についても、国と地方の役割分担として、法によって地域における事務を自治体が司り、国の関与と争訟の仕組み、いわば正・反・合で統合されてきたものの中で、極めて例外的な事象での関与を認めるものとして理解します。
平時において、個別法での適用にとどまらず国会での議論含めた運用に着目
その上で、修正案については、国会での平時の議論も含めた「法の運用」をこれまで以上に蓄積しなければならないという意味として、修正案により国会への報告の定めが入ったことも大きなことだと思っております。
地域コミュニティ/地方政府/中央政府は、自治法をどう具現化するか?
もう1つの観点は、
これまでの審議の中でも登場している「コミュニケーション」に関することです。
なぜそれが重要なのかと考えた際に、地方自治法の具現化をなす地域コミュニティ、地方政府と中央政府、ここでは政府という言い方をしますが、それぞれがどのようにコミュニケーションするかという観点になろうかと思います。
多機関連携がキーワードであり、調整と相互理解がその根幹
さきほどの情報システムも、関与の局面もそうですが、多機関が連携する局面を整序するものであり、調整と同時に相互理解がその根幹にあります。また、住民の暮らしを支える地域コミュニティの維持、地域課題の解決には多様な主体が連携することにも多機関連携がすでに数多く見られることです。
これらを一挙に解決するような「銀の弾丸」はありません。調整と相互理解を粘り強く続けることそのものが重要であり、具体的には人や機能としてのコーディネーターのふるまいが重要であると考えます。今回の改正案・修正案においてそうしたコーディネーターを中心に見た際には、これまでの諸制度との連携も含めて、うまく乗りこなす知恵が各主体に求められるのではないかと考えます。
指定地域共同活動団体に係る条例
そうした観点で、とりわけ第260条の49 第2項に規定された市町村長による「指定」をどう見るか。指定地域共同活動団体が、地域において重要な役割を果たすことを想定したものです。そもそも地域コミュニティの活動や組織は多様であり、それを一律に捉え平準化につながることや、指定をトリガーに地域における各主体間の関係性が変化することへの懸念があるでしょう。これらについては、規定としては市町村長が指定するものではありますが、その指定には、そもそも地域コミュニティへのリスペクトが必要だと考えるものです。
デジタル・トランスフォーメーションのポイント
駆け足なご説明になりますが、4ページにお戻りください。
デジタルトランスフォーメーションのポイントとして、何かデジタルのツールを入れることに着目する議論がどうしても多いのですが、そうではなく、いかに行政サービスを構築するかその手法をアップデートすること、そして同時に重要なこととして組織のあり方の変革、この両面からなるということを指摘したいと思います。
自治体DXと地方分権改革との関係
続いて、5ページですが、組織のあり方という点で考えるとき、これまでの地方分権改革とのつながりが見えてきます。これを改革の方針が具体的な制度変革につながっていくプロセスという意味で「土着化」と表現すれば、地方分権改革をはじめとするいわゆる平成デモクラシーの文脈で、集権化と分権化のベクトルあいまっての土着化の過程で不整合が生じ、今般の役割分担の再調整が求められていると理解します。
また、自治体DXという言葉が生まれてきた文脈も、地方分権改革以降進められてきた「自律性を強めた自治体における意思決定メカニズム」、これが現在自治体DXで言われている標準化やデータ連携、EBPM、組織変革など、本来は従前から取り組むべき事柄であったということになります。
自治体DXにおける配慮責任の登場
6ページです。そうしたとき、組織のあり方、コミュニケーションの話として、自治体DXをめぐって国と自治体がどうコミュニケーションを取ってきたか。それは地方分権改革における提案募集方式の中にも見られます。
自治体DXという言葉が登場する前は、国は「自治事務だから地方の責任でやるべき」という物言いをすることが多くありました。その際、とりわけ情報システムに関わる事柄で、国の配慮責任という考え方が示され、いわば地方分権の理念を具体化したり硬直的な議論になることへの歯止めとして機能するようになっていきます。近年の提案に対する回答ぶりを見ると、どのような事務であるべきかを考える、情報システムであれば最適化の思考ですが、そうした考え方に基づいて国・地方が噛み合った議論になりつつあることに注目しています。
ただし、解決策そのものが十分なのかはもちろんありますが、コミュニケーションが配慮責任という考え方が自治体DXの中に組み込まれていることが重要だろうと思います。
大阪府を例に都道府県の役割
7ページです。今回の改正で自治体間で協力して情報システムの利用の最適化を図ることが規定されますが、これまで自治体で取り組んできたことで、例えばシステムの共同調達が挙げられます。私は大阪府の調達に係る審査会の会長を務めておりますが、同時に府が共同調達したアドバイザーとして府内市町村を支援してもいます。
これをなぜ都道府県が行うのか、それは市町村の体制の問題だけにとどまらず、大阪府自身にも資する取組だからと言えます。ここでも「配慮責任」という言い方をするとすれば、「情は人のためならず」ではありませんが、責任を示すことは、その相手方との関係ではあくまで対等・平等であること、情報システムで言えば全体最適という言い方になろうかと思いますが、双方にメリットがあるという点は改めて指摘したいと思います。
日野町における取組
また、組織のあり方として、8ページから10ページでは、日野町の取組として、新型コロナウイルスのワクチン集団接種の事務に関する調査研究を大学と共同で実施しました。これは対応の是非を検証するというよりも、今後も起こり得る不確実な状況に対して我々がいかに適応できるか、そのための組織のあり方を考えるためのものとして10の洞察と3つの提言にまとめています。
ポイントだけでお話しますと、お互い手探りの状況にならざるを得ない局面ではお互いに抱く不確実性、これを恐怖と言っていますが、それを引き受け柔軟な意思決定を行ったりそのための平常時からの組織としての受容度を広げることの重要性が指摘できると思います。
自治体職員のマインドセット
続いて11ページですが、そう考えたとき、現在進行する自治体DXの取組について、自治体職員がどのように受け止めているかは注意深く見る必要があります。研究会メンバーを務めました日本都市センターによる自治体職員向けアンケート結果からは、DXの方針など総論は概ね賛同を得られているものの、職位別に見ると、デジタル化あるいはDXへの受け止めが異なる結果になっています。また、デジタル化を効率化の手段として用い、とくに住民参加に対する意識が弱いことが気になります。これは、自治体DXの取組がスタートして数年になりますが、その土着化が想定しているところと異なる帰結になるのではないかということが現時点で推測されるところです。
デジタルが可能にする新たな共創〜シビックテック〜
他方で同時に、異なる土着化の帰結を生む可能性もでています。
12ページでは、冒頭申し上げたシビックテックは、圧倒的なスピード感と評価された行政サービスの構築を自治体や国と連携するだけでなく、サービスの利用者である市民みずからが参加して改善する形を示しました。情報システムの規定の中にこうした運用を読み込み変革していく自治体が現れてくることを期待するものです。
デジタルが可能にする新たな共創〜住民参加型デジタルプラットフォーム〜
また、13ページではコロナ禍を経てデジタルを活用した住民参加が進んでいます。デジタルプラットフォームの活用も、情報システムの規定から、広域的あるいはテーマ共通で参加の仕組みを構築する視点が示唆されます。自治体が我先に独自に設置したがるものですが、住民参加の面でどのような参加の仕組みが適切なのか検討が必要とも言えます。
プラットフォーマーとしての行政〜デジタル社会における地方自治の構想〜
14ページです。こうしたことは、いわばデジタル社会における地方自治の構想として、サービスを市民とともに作り、自治体間で公開・共有する関係をつくる。その際に国あるいは広域自治体が配慮責任を持って取り組むということが、新たな土着化として構想できないかというものです。
コミュニティに係る日野町の取り組み
最後に、15ページ、16ページで日野町において取り組んでいるコミュニティに関することです。多くの自治体同様、自治会・町内会のみなさんと地域のあり方を考える場を持ち、一緒になって地域づくりをしています。また、地域において農村RMOの取組を進める動きが出ているほか、今後は地域における様々な主体と連携した重層的支援体制の整備にも取り組むこととしています。
こうした動きを参与として拝見しているとき、よく日野町の堀江町長が話す言葉で印象的なものがあります。
地域を支援する制度は、各省も用意をし、このたび自治法においても市町村が果たすべき出番を作っているとも言えます。しかし、ここまでお話したことと同様にそれぞれの主体に対するリスペクトをもってコミュニケーションを取ることの重要性が、自治法においてさらに明確になる、あるいはそのような運用を蓄積していく必要があるのではないかと考えるものです。以上です。
質疑
委員御指摘のとおり、そのデジタルプラットフォームの活用に期待と課題と両方あると思っておりまして、その表れの1つが参加率なのは間違いありません。
先ほど御説明したのは、広域化というのが1つのキーであると申しましたけれども、もういくつかありまして、一つはいただく意見の深さをどう捉えるかということだと思います。そこにおいては数が問題ではなくて、その人が抱えている事情、あるいはそれにサポートする人の背景も含めて、どれだけの意見が深掘りされるかというところをいかに行政が酌み取るかということかと思います。
もう一つは、これからの期待ということになりますけれども、デジタルプラットフォームが活用されるに至ったのはコロナ禍がきっかけでありましたが、同じく我が国でコロナ禍でそうしたものが広く伝わったのがGIGAスクール構想であります。学校現場で子どもたちが1人1台PC端末をインターネットを使って様々活動する中、こうしたデジタルプラットフォームの活用を進める自治体がいくつか現れております。それは、すなわちデジタルシチズンシップ教育ということで、デジタルを活用して様々な人と意見を合わせてこれからやりたいことを自分たちで実現する、そのためのデジタルとの付き合い方を学ぶ活動の場としてデジタルプラットフォームは活用されておりますので、そうした蓄積が進んでいくと、我々大人に対してそういった振る舞い方をもっとするべきだということが言わば当たり前になっていくと、そうしたことを期待しているものになります。
委員御指摘の点は、私も試行錯誤というか、分からないところも多いわけですけれども、今日御説明をした共同研究の中でもそうした人材をいかに育成するかというところがありましたので、それで御回答を申し上げたいと思いますけれども、やはり様々な経験を積まないといけないということがまず述べられています。
現在活躍されているコーディネーターの方も、様々なうまくいった事例、うまくいかなかった事例を乗り越えて、周囲の信頼を獲得をして、その地位あるいはそういった活動をいろんな方々とともにやっているというふうに認識しておりますが、そうした立場を肩代わりして少し経験をしてみるとかですね、それを日常の中でもそうなんですけれども、指摘されていましたのは、研修の中でロールプレイング的な形でやる、これ研修なので大丈夫なのかと思われるかもしれないんですが、そうした気軽な形で、そうしたシリアスな状況も含めてですね、やっぱり経験していくことを、最初からシビアな状況に置くんではなくて、まずはそういった気軽な形で乗り越えていくステップをこれまで経験者も取ってきたわけですので、そうした形を、どういった形でも、いろいろあると思いますが、取るべきだということが提言されておりまして、日野町においてもそうした、とりわけ若手の育成という観点で取り入れていきたいと思っております。
そういった意味では、今日御紹介しましたそのまさに多機関連携の仕組みの中にそうした機能が表れていると思います。それぞれの立場で参加する方々がほかの方々の振る舞いを見るということを通じて経験を学ぶということが元々ビルトインされている制度であり、財政的な措置としてもそういったものに支援をするということをうたわれていますので、それをもっと活用しやすくするとか、こういった事例をよく、「そういった意味合いがあるんだ」ということを広く伝えていくことも重要だろうと思います。
御紹介いただきました講演の中でも、今日述べさせていただきました共同研究を踏まえてのお話をさせていただいておりました。
確かに、想定できない事柄を、この場合は国のということだと思いますが、自らの責任でともかくもう対処しなければならないという事態は当然起こり得ると思っていまして、その際に必要なのは、恐らく先取り的なというかプロアクティブな対応が求められるというふうに言えるかと思います。
それが、お話ですと、コミュニケーションとリソースをきちんと確保する。それを具体的に私どもの日野町の振る舞いを検証いただいた中では、元々その当該組織あるいはその決定する主体ができる許容量を、あるいはそれをもたらし得るリソースの特徴をきちんと把握する、量と質、内容を把握しておくということがあってこその責任の果たし方ではないかと思います。
そうしたことを様々な情報を入手してリソースとして対応して、結果として国が乗り出さないということも含めた責任の取り方、持ち方ということも含めたお話なのかなというふうに受け止めました。
御質問は、どのように円滑に進めていくかということでありますけれども、そうした考え方に対しては、「円滑に進まないことを許容できるか」ということが1つポイントになろうかと思います。
現場、大変苦労しながら、ストラグリングしながら頑張っているわけですけれども、それは仮にうまくいかなかったとしても、どこがうまくいかないから「けしからん」みたいな話じゃなくて、あらかじめプランBなり、プランAダッシュでもいいんですが、きちんと検討しておくということが求められると思います。
なお、標準化の話になってくるんだと思うんですけれども、まずもって業務が止まらないということが自治体にとっては必要不可欠であり、大前提であります。現時点では、設計もできて、スケジュールも何とかめどが立ったと言っても、これを実際に実装していくときにまだ様々な問題が起こり得るということを現場としては想定しておりまして、それでもなお確実に実施するということをいかに担保するかということであろうと思います。
そうした際に、とりわけ国に対してではないですけれども、こうしたことは企業の情報システム、基幹系のシステムでも様々問題が生じていることを他山の石とすべきでありまして、そうした状況を国としても把握しているかどうかということは一つ論点になろうかと思います。
あと、御指摘いただいた市長との講演の中で、首長さんが不安と思っているのは、やはり我々のまちでそうした産業が持続できるかというエコシステムの話もあろうかと思います。必ずしも政府部門がそれを、どれだけ誘導できるかということもあると思うんですが、そうした取組もなお重要でありまして、ちょうどデジタル庁がデジタルサービスのカタログサイトであります「デジタルマーケットプレイス」、これもイギリスを参考にして作られておりますけれども、そうした産業を巻き込んだDXということも志向するべきでありまして、そうした観点から動向を見守っていきたいと思っております。
御紹介いただきましたワクチンメーターの取組もそうですし、そのセンシティブな情報も扱ってデータ活用をする、EBPMしていくということも、それによって住民あるいは国民でもいいですけれども、行政との間で信頼関係を持ってその政策を進めていくための手段であるということが根幹だろうと思います。
なお、そのデータの活用については消極的というか保守的になるということはもちろん必要だと思うんですけれども、解像度を高めて議論をしないと、本来そもそもできないことをできると言ったりとか、できることがそれによってできなくなるといったようなことになりがちなのも、やや懸念するところであります。
昨今であれば、著作権の話が大宗を占めている面もありますけれども、生成AIの活用がどこまで許されるかといったようなことが、言わば限界事例が日々生まれているような状況でもありますし、サービス提供側が非常に速い速度で進展していることにどう対応するかということもありますが、ここで注視すべきことは、その先進技術側が何かセキュリティーに問題あるというだけではなくて、例えば自治体が活用する場合は、そもそもそうしたものを使うかどうか以前に、従来備えるべきどういった情報を、機密性のレベルを持たせておくかとか、それを誰が管理をするか、監査をするかといったような行政機関としてそもそも確保すべきセキュリティーのガイドラインあるいは事柄があっての話であるということにまず注意が必要だと思います。かつ、そうしたことが初めてあって職員も安心してデータを活用できるという関係だと思いますし、そもそもそのデータを持っている元々の本人の安全性を高めるということだと思います。
こうしたことは、その御紹介いただいた大阪の中でも非常にセキュリティーポリシーのガイドラインをいかに最前線のものにしていくかということは各自治体もニーズが高く、外部デジタル人材が大変寄与しているということも見聞きしております。国の取組もそうですし、自治体もそうやって相互参照的に先端的な取組を勉強しているところでありますので、国が今回方針を立てて、それに従って、それも参考にしながら義務付けをされていく中においては後追いにならないように、国も地方も、いずれも今はプロアクティブに取り組んでいかないと自ら選んでいくセキュリティーの確保は目指せないんだというふうにこの規定は機能すべきだと思いました。
委員御指摘のとおり、その間に合わない自治体が増えてくるおそれはあろうかと思います。現状でも調査はしているようでありますけれども、全体像が見えないということで、それがかえって各自治体の疑心暗鬼とは言いませんけれども、悩みを増やしている側面は否定できないかと思います。
なお、その延長するべきかどうかはなかなか判断が難しいところであろうかと思いますが、まず1つに、こういった標準化スケジュールを待たずして移行を進めている自治体もあります。そう考えると、グラデーションは元々伴っているものでありますので、お尻の議論をすることもそうでありますけれども、移行した団体がどのような成果が出ているかということも併せて考えるべきことかなと思いました。
小規模自治体への対応、自治体DXを進める上での支障といったようなところだと思うんですが、委員御指摘のとおり、体制がこの数十年で非常に少なく、人が少なくなって、かつ高齢化の部分も進んでいるのは確かです。
でも、ただ一方で、高齢化も進んだ局面はやや終了を迎えつつあって、若い職員が増えてきているということがあります。それが先ほど私が意見の中で申し上げましたアンケートの中に表れておりまして、職位でいうところの係員とか係長レベルの若手の職員と、あそこはボリューム的に増えている中で自治体DXに対する期待と不安が表れているということが見て取れていますので、全体としては議員の御認識の部分と重なるところがあろうと思います。
そうしたとりわけ小規模自治体への対応につきましては、国もそうでありますし、国会もこうして御議論いただくことそのものが、小規模自治体にどのような支援を行うべきかと、とりわけ都道府県の役割が重要だと思っておりまして、そのような機会だと思います。
事例で申し上げました大阪府に限らず、とりわけ近年、都道府県が、東京都でありますとか愛媛県でありますとか、総務省の事例集の中にも都道府県がとりわけなかなか体制を築きにくい小規模の自治体に対して伴走支援を行うという取組があります。それに対して国が財政支援を行っておりますので、こうしたものの期間を延長するとか措置率を上げるとか、様々な重み付けを行うことは考えられるかなと思います。
前提としてお断りするんですが、私、参与でございまして、直接何か権限を持って何かをするという立場ではなく、あくまで地方公務員法に基づいて専門的な知見から助言をするということですので、申し上げる取組もあくまでその当該自治体の職員さんが成し遂げたということかと思います。
先ほど別の委員からの御案内の中にもありました日野町においてのワクチンメーターみたいなことは、デジタル庁がワクチンの接種状況を全国的に更新をしていたときに、私どもの小さい町でありますけれども、日々行う集団接種の状況をリアルタイムで更新をするということに多くの職員が取り組んでくれました。
これによって、先ほども少し申し上げました、町民さんがどうしても、ワクチンは本当に行き渡るんだろうかでありますとか、役場はきちんと接種しているんであろうかというような、根も葉もないことではないんですが、やっぱり不安を持っているとどうしても見えている事象が違うように見えてくるところをリアルタイムにその状況をお示しすることで、役場は「歩みは遅いけれどもきちんとやっているんだ」ということをデータで示すことができる。あるいは、そうした業務の流れを役場の各部門の人たちと協力してつくることができたということがあろうかと思います。
それ以外のことも、「私が」ではないんですが、そうしたワクチンメーターを通じてああいう非常時のときに多くの住民さんに情報提供し続けるという自治体が数多く現れておりまして、そういった取組は今後もまだ続いていくんじゃないかなと思います。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?