ギターが「上手になる」ということ

ギターは最初かなりしんどい

以前、Fender社の何かの動画で見たんですが、ギターを始めて一年後に続けている人の割合は、たった一割程度なんだそうです。

実際、ギターは最初かなりしんどい。アコギでコード(和音)をじゃかじゃか弾くところから始めるのか、エレキギターでリフやソロを弾くところから始めるのか、それによっても多少違うけれど、いずれにしても「それまで生きてきてやったことのない指や手首の使い方」というか、「えっ、そんな指の形できる?」「人ってそんな風に手動かせる?」みたいな、イメージ的には新しい神経回路を繋ぐというか、リハビリに近いというか、それくらいしんどい感じ。

ギターは左手で任意の音程を押さえて(右利きの場合。押弦といいます)右手で弦をはじく(ピッキングといいます)楽器なので、左手の押弦が右手のピッキングより「刹那の瞬間」早いわけです。このタイミングが同時になってしまったり、押弦よりピッキングのほうが早かったりすると綺麗に音が出ません。

プロミュージシャンや上手な人を見ていると、「さも、こともなさげに」コードチェンジしたり速いパッセージを弾いたりしていますが、その実やっているのは「ものすごい精度の両手のコンビネーション」で、曲芸と言っていいです。

せわしなく動く左手ばかりが注目されますが、実際は弦振動のきっかけを生む右手のほうがより繊細なコントロールが必要で、だからこそ利き手の担当なんですね。

人間ってすごい。できるようになってしまう

初心者の人にとって鬼門とされるのが「バレーコード(Fのコードと言われたりします)」の押さえ方で、伸ばした人差し指で6本の弦を押さえ(セーハといいます)、さらに中指で3弦を、薬指で5弦を、小指で4弦を押さえるフォームなんですが、最初はこれが実に難しい。にも関わらず「キホンのキ」なので、これができないと先にいけない。ここで挫折というか、やめてしまう人は結構多いと思います。

しかしながら人間の能力は本当に凄まじく、最初は時間をかけても押さえられないコードの形や運指、ピッキングが、100回〜500回〜1,000回と、何度も何度も繰り返すうち、つまづきながらもできるようになり、やがてテンポに合わせて弾けるようになります。

最初は手がプルプルするほど力を込めてもしっかり押さえられないのに、やがて力を入れる感覚すら要らなくなる。「えっ、そんな指の形できる?」「人ってそんな風に手動かせる?」ようなことが、「こともなさげに、半ば無意識に」できるようになっちゃうんです。ほんとに人間ってすごい。

ギターが「上手になる」ということ

何度も何度も繰り返し練習して、相当の時間を費せば、おおよそ誰でもギターを弾けるようになります。最初は到底できっこないと思えることでも、やがてはできるようになっていきます(もちろん、逆にいくらやっても越えられない壁もたくさん出てきます)。

ただ、「上手になる」という意味では段階や種類があって、これは人によって本当に差が激しい。

①その曲の、そのギターを弾くのが上手になる
②ギター自体が上手になる
③音楽自体が上手になる

初心者の人をはじめ、一番多そうなのが「①その曲の、そのギターを弾くのが上手になる」という人。そういう練習をしてしまっている、といってもいいかもしれません。その曲のそのギターは弾けるけれど、それだけ。

「②ギター自体が上手になる」というのは、その曲のそのギターはもちろん、両手のコンビネーション自体の精度を高めることができている人。そういう練習ができている人。①の人とは明らかに違う上手さ。

「③音楽自体が上手になる」というのは、音楽の中でのギターの役割をちゃんと果たせる人。ギターを操って音楽をより音楽的に表現できる人。そういう訓練ができている人。

どれが良いとか悪いとかではないし、どこまでいってもゴールなんてないのですが、視座が違うと身に付くレベルが違ってくる。同じだけ練習していても歴然とした差が出るわけです。ギターに限らず、仕事でも何でも同じですよね。

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