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事前審査に通っていたら、ほぼ融資は降りるんだから、融資特約解除はできなくなる?

Q.五代さん夫婦は、古いアパートに住んでいましたが、子供ができて手狭になったことと、毎日のアパート住民による宴会が途絶えることは無いことを思い知らされ、一戸建てを買うことにしました。


アパートの近くに気に入った建売物件を見つけ、建売業社B社との間で融資特約付売買契約を締結して建売住宅を購入し、手付金300万円を支払いました。


金融機関により事前審査は承認されたのですが、特約期限までに正式審査の承認は得られませんでした。


五代さんは一度仕切り直したいと思い、B社に対して売買契約の解除を通知し、手付金300万円の返還を求めました。


しかし、B社は事前審査で承認されれば特段の事情がない限り正式審査も承認されるのであるから、事前審査が承認されたことにより本件融資特約の要件は満たさないと主張しています。


五代さんはB社に手付金300万円を返してもらえるでしょうか?

A.返してもらえる。


正式審査の承認が得られない限五代さんは融資を受けられないのであるから、事前審査の承認を得ていたとしても正式審査の承認を得ていない以上、本件融資特約の要件を充足します。

★世戸弁護士のコメントです
ローン特約条項による解除には、解除の効力の発生要件に関して,①融資が不承認となった場合には、売買契約は当然に効力を失うとして、融資の不承認を解除条件とする解除条件型(当然失効型)、②売買契約の解除権を買主に留保したとする解除権留保型(解除権行使型)の2つのパターンがあります。


①解除条件型(当然失効型)では、融資が不承認となった事実によって当然に売買契約の効力が失われるため、ローン特約条項で定めた期限内に融資不承認の結果が生じれば、売買契約は自動的に解除となり、売主に対する解除の意思表示は要件ではありませんが、②解除権留保型(解除権行使型)では、融資不承認となった後、買主が留保されていた解除権を行使することが要件となるため、買主は、解除権の行使期間内に、売主に対し解除の意思表示をしなければなりません。解除権の行使期間が経過した後には、ローン解除を行うことができません。

このように融資の不承認の事実が生じても、ローン特約条項が上記2つのどちらのパターンかにより、売買契約の効力が失われる時期に違いが生じます。したがって売買契約にローン特約条項を設けた場合には、①②のどちらの趣旨で定めているのかを、売主・買主の双方で明確にしておく必要があります。また、②解除権留保型(解除権行使型)では、解除権の行使期間を明確にする必要があります。

https://myfm.jp/H4UPLE/rc/493547/anonymous7347

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