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ブックレビュー「ロビー・ロバートソン自伝 ザ・バンドの青春」

昨年8月に亡くなったRobbie Robertsonだが、長年の親友だったMartin Scorseseの映画”Killers of the Flower Moon”の音楽担当として初めてAcademy AwardのOscarにNominationされたらしい。

何と言っても「初めて」というのに驚く。と言うのも今回取り上げた本書では彼が映画に大変興味を持っていたことがうかがい知れるからだ。同じMartin Scorseseの遠藤周作原作の映画「沈黙」のMusic DirectorもRobbieだった。

本書の原題は”Testimony”(日本語で「証言」)。これはLevon Helmが”This Wheel's on Fire: Levon Helm and the Story of the Band”でThe Bandの解散についてRobbie Robertsonを糾弾したことに対して「真相は違う」と主張したいという意思が感じられる。Guitar Magazine2023年11月号に掲載されているRickとの対談でもその確執が吐露されている。

当事者間の意見の相違はあるとしても、本書を読むとRobbieの強い個性と他のMembersとの確執がより理解できる。

とは言え、遡るとLevonが途中離脱し、Bob DylanがElectiric化する中、ほぼどこの観客からもBooingを受けるという不思議な体験を経て、1st  Albumである”Music from Big Pink”と次の”The Band”の発表前後がこのバンドの全盛期だったことは間違いないだろう。

その後のDrugによるMembersの不調、曲作りにおけるRobbieへの負担、最初の二枚を上回ることがなかなか出来ないDilemmaを経て、大団円”The Last Waltz”で解散していくStoryは痛々しく、同時に残念でもある。

この頃の時代の流れから言うとどのMusiciansもほぼDrugによる影響は避けられなかったのかもしれない。27クラブ("The 27 Club"、27歳で亡くなる多くのMusiciansをこう表現する)が同時代的に始まったことを考えると当時の音楽sceneは我々の想像を超える環境だったのだろう。

私自身にとってはBob Dylanがそうなのと同様、The Bandは決して同時代に嗜んだバンドでは無い。が、その後の米英両国におけるMusic Sceneに対する大きな影響力とその残された素晴らしい作品を鑑みると彼らの奇跡的な足跡に大きなRespectを表さずにはいられない。

ここでは本書に取り上げられたThe Bandの曲や数多くの他のMusiciansとの共作から興味深いエピソードを織り交ぜながらご紹介したい。

1. ”I Wish You Would” by John Hammond

Levon and the HawksがRonnie Howkinsと分れてNew Yorkでデビューを飾った際に友人のJohn HammondとSessionで演奏した曲の一つ。この1967年の録音はGuitarがRobbieでBassはBill Wyman。

 2. ”Chest Fever” by the Band

GarthのOrganとRichardのVocalをFeatureした曲。GarthのOrganは彼の音楽的素養を十分に発揮した素晴らしい演奏だ。彼の音楽的な背景から、The Bandに加入した際にはGarthの両親は大層驚いたらしい。

3. ”Up on the Cripple Creek” by the Band

この曲ではGarthがClavinetにWow Wowをつけて弾いている。裏声の部分も含めてLevonのVocalが素晴らしい。ここではEd Sullivan Showの演奏を。

4. "4% Pantomime" by the Band

WoodstockにはThe Band以外にもいろいろなMusiciansが当時集まっていて、Van Morrisonもその一人。これはRichardとVanの二人が酒を飲みながら歌う中録音した曲。

5. ”Life is a Carnival” by the Band

この曲にどうしてもHornを入れたかったRonnieは当時気に入っていたLee Dorseyの”Yes We Can”を手掛けたAlaint Toussaintに連絡。New Yorkでかき集めたMusiciansは当初その譜面に困惑するが、次第にAlaintの陰謀に気がつき、かすかな笑みを浮かべた、というエピソードが面白い。

6. ”Raised on Robbery” by Joni Mitchelle

RobbieとはTronotという同じ基盤を持つJoniとはDavid Geffinを通じて知り合った。Session Guitaristでは無いRobbieは、曲をToughなものにしようと少しばかりGuitarを泣かせてみた、という。

7.  "Mockingbird” by Carly Simon

Richard Perryを通じて昔馴染みのCarlyの本曲録音依頼を受けたRobbieだが、スタジオに揃ったそうそうたるメンツにも関わらず凡庸な演奏に驚く。そこで少しLaid Backしたアプローチを提案したのがこの曲。

8.  ” Forbidden Fruit” by the Band

Malibuに念願の新しいClub House”Shangri-La”を完成し、すぐにRecordingに入ったBand Members。当時の彼らの状況を表現したような”Forbidden Fruit”では「自壊する前に自戒せよ」との皮肉なMessageが。

9. "Lady-Oh" by Neil Diamond

友人や音楽関係者に「お門違い」といわれたNeil DiamondからProduceを依頼されたRobbieは早々たる顔ぶれを集めて本曲を含む”Beautiful Noise”を完成させた。

10. ”Cold Dark Mornin’” by Hirth Martinez

Shangri-Laでの初プロデュース作。本曲では優秀なJazz GuitaristでもあるHirthとのGuitar Battleが聞ける。

この5曲を含むRobbie Robertson絡みのPlaylistをApple Musicに公開中。The Bandに影響を受けた日本のMusiciansの作品も含んでいる。


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