傍から見るとそこそこ幸せなわたし

姉が、
「私は誰にも本心は言えないし、誰も本当の私なんてわからない」
と、アンニュイに語ってくれた。
いやそりゃみんなそうでしょうねえ。
誰も本心なんて言わないし、他人なんてわからないって。
「場面によって顔を使い分けて、どれが本当の私なんだろう」
いやそりゃみんなそうでしょうねえ。
親の前、子の前、顔色を窺わなくてはいけない人の前
マウントとって勝った人の前では、違う顔してるって。
「一生本当の自分をさらけ出す事なく終わるのかな」
いやそりゃみんなそうでしょうねえ。
出ているいくつもの顔、それぞれがそれぞれ本当の自分なんだって。
20代後半の、人付き合いにちょっと疲れたOLの様な発言をする
還暦の姉。
この姉は、結婚後実家を二世帯住宅にし、いまだに元気に健在の
両親と一流企業に勤める夫、同じく一流企業に勤める息子と暮らす、
女性界では誰もが羨む超絶の勝ち組である。
遠方に嫁いだ次女の私にしてみれば、嫉妬の対象ですらある。
私は、姉を呪い、姉を選んだ両親を憎んだ。
その気持ちも、実家から遠方に住み、心の中で姉と両親をすこしずつ
殺していくことで薄まっていった。
と、おもう。
ほらね、お姉さん、お姉さんだって、私の本心なんてわからない。









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