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Zoomの株価が上がらない理由

超高成長でぶっちぎりの好決算を連発しているにもかかわらず

なぜZoom Video Communications(ZM)の株価は冴えないのでしょう?

理由を考えてみました。

1つは成長鈍化(ピークデジタル)懸念です。

以下は2021年4月30日現在のZoom video(ZM)の売上高推移及び見通しです。

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コロナ禍の20Q1、20Q2で成長率がぐっと上がっているのが見て取れます。前年比(YoY)は169%、355%と3桁の伸びになり前期比も74%、102%と激しく増えました。

一方で、今期(21Q1)以降の伸び率は大きく鈍化する予想です。21Q1, 21Q2 の売上予想値はYahoo Financeの集計した23人のアナリストの中でいちばん良い数値を入れているのですが、その水準でも前期比4%、2%の成長率まで鈍化する予想です。もしこの程度のポジティブサプライズに留まるならば2022年は二桁増収が危うくなります。一桁成長ならもはやグロースとは呼べなくなってしまいます。つまり会社ガイダンスが保守的すぎるだけだと思います。前期比増収率は逓減するでしょうけど17%増収、14%増収ときていきなり1-3月期に4%増収まで鈍化するならよほど増益しないと壊滅的な売りを浴びそうです。市場予想は予想と呼べる水準になく、おそらく1-3月期実績は前期比7%以上の伸び率になると思います。ただそれだけで株価の押し上げ材料になりません。

今回の決算シーズンは特に4-6月期のガイダンス(見通し)が重要です。従来通り保守的なガイダンスならば、せいぜい前期比フラットくらいしか出せない気がします。へたをするとガイダンスが出ない可能性もあります。その場合は売られます。前期比一けた台半ばの増収率、予想PER50倍台になる程度のガイダンスが欲しいところです。Zoomなら可能な着地だと思いますが、保守的なガイダンスを踏襲するとここまで出てこないと思います。

2つ目は外部環境の悪化です。

景気循環から見て景気回復&金利上昇局面であり、(高成長ながら赤字というような)Low Quality Equityはバリュエーション調整(同じ成長期待でも評価が落ちる)場面にきています。一方Low Quality Equityの中でもコロナ禍に急成長したような企業はピークデジタルによる成長鈍化懸念とバリュエーション調整のダブルパンチを被っています。黒字企業とはいえZoomもこの部類だと思います。

マーケット全体を見渡せば4-6月期はコロナ克服期でかなり好業績となるリア充銘柄だらけ。そんな中でわざわざピークデジタルリスクに向かいたくない投資家が増えています。弱気のストラテジストの中には不吉な予兆を指摘する向きもいるようです。

例えば

”ポジティブサプライズ決算にここまで反応しないのは2000年Q1以来”

というもの。2000年のITバブル崩壊の理由の一つとされるのが前年にY2K対策の投資需要が積み増されていて前年比較が厳しくなったからという説です。それを言うなら今回はコロナ禍によって3年先まで時代が進んだ(マイクロソフト幹部)と言われるほどのIT特需があったのが昨年4-6月期以降。

”前年比較は2000年当時以上に厳しいかもしれない”

と身構える投資家が出てくるのはむしろ自然です。

他にも、

マーケットの標準偏差が一定水準(数字忘れました)を超えたのは過去4回あって、そのうち3回は翌年マイナスパフォーマンス

という不吉なデータもあるようです。昨年は超乱高下してるので当然該当します。

4-6月期にピークデジタル。FEDによる景気刺激効果も年後半にはピークアウトするとなれば、リフレ(リア充)銘柄も株価は夏までに全部織り込んでしまって年後半は株安という見方

等もあります。これらはバロンズだったかな?

因みに2000年近辺のITバブル崩壊の主要銘柄の株価推移は以下の通りです。

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高値からの下落率を見ると今更ながらゾッとしますね。上がっていた銘柄は3か月程度で半値以下になり、黒字のアドビやマイクロソフトですら大幅下落です。アップル、エヌビディアの回復が比較的早かった一因はそれまで負け組だったアップルが2003年にiTunes Musicを開始してビクトリーロード歩み始めたからでしょうか?エヌビディアも間接的にその恩恵を享受したのかもしれません。アドビは主力銘柄の中でいちばん回復が早かった印象があるので敢えて載せました。勝ち組銘柄でさえも元値回復にはかなりの年月を要していることがわかります。

2000年のケースと昨年のIT系株価推移から、超悲観的な直観予想をすると、4-6月にピークデジタルが確認された場合、次は半導体に過剰発注が発覚しシリコンサイクルピークアウト懸念で売りの標的になる順番があり得ます。

こういう思考回路の投資家はいくら半導体決算が良くても買わないはずです。好決算で株価が上がらずPERが下がっていく状態は典型的なシリコンピークだからです。

ピークデジタル懸念や過当競争になっているテーマから距離を置きたくなる理由はたくさんあるわけです。

3つ目として、指摘されているのがZoom固有リスクです。

一部でZoomのビジネスモデルはサステナブルなのか?といった指摘があります。例えばネットスケープ化懸念です。ネットスケープはウェブブラウザーの草分け企業で当時は有料ソフトウェアでした。ところがマイクロソフトがIEを無料配布してしまったためネットスケープが生きていけなくなったという経緯があります。有料だったウェブ閲覧が課金できなくなったようにサブスクモデルとは言え、ビデオ会議だけで課金し続けることは難しいのではないか?と指摘されているようです。マイクロソフトはTeams単体で課金しませんし、Nuance communication買収でTeams、 Skypeの競争力は強化されます。

以上の3つが個人的に見つけたZoom株低迷の理由と思しきものです。1と2はZoomに限ったことではありません。昨年IT特需の恩恵を享受した銘柄すべてに共通します。全体から見るとこれらは少数派で逆に4-6月期ロックダウンからの回復が期待されるものが多数派です。しかも、グロース銘柄といっても多様化していて黒字で割安なものもあります(Zoomもグロースのなかでは割安です)し、特需はなくて毎期着実に業績を積み上げているグロース銘柄もありますので、そういうものはむしろ一時的に連れ安したとしても風雨が過ぎた後反発力の強い(resilientな)銘柄になるんじゃないかと思います。







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