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氣づきの国語辞典「煮」編

「台上に芝を集め積んで火を炊く」象形と「燃え

立つ炎」の象形から、「にる」を意味する「煮」

という漢字ができた。

「者」が「煮」の原字であったが、「者」が「も

の、こと」の意味を表すようになったため、

「火」を付けて区別した。

※「煮」は「煮」の略字。

水やだし汁などの液体の中に食材を入れて火を通

し、調味する調理法で、関西では「炊く」ともい

う。「茹でる」との違いは、加熱した食材だけで

なく、煮汁も料理の一部となる点。

とろけるように柔らかくなるまで煮る「煮込

み」、うす味の汁でさっと煮てそのまま浸してお

くことで味を染みこませる「煮びたし」、油で炒

めてから煮る「炒め煮」などがある。

「山のぬしと煮た笹の葉」という昔話がある。

飛騨の山奥で、焼畑を作って暮らす夫婦がいた。

この夫婦には娘が一人おり、これが色の抜けるよ

うな白い肌の美しい娘だった。

両親は 娘をとても大事にしていた。

この娘を山のぬしが見染め、家まで押し掛けたと

き、両親は留守だった。山のぬしが入口に下げた

むしろを捲って中に押し入ろうとしたが、叫び声

をあげて退いた。入口には山の魔物を退ける霊

力を持つ煮込んだ笹の葉がぶら下がっており、山

のぬしの霊氣が通じなくなった。

今度は小さな蛇に化け、わらびの葉の上で娘が家

の外に出るのを待ちくたびれた山のぬしはわらび

の葉の上で昼寝を始めた。

そこは娘がいつも小用を足す場所だったので、山

のぬしは蛇の姿のまま、娘の小水を頭から浴び、

女の不浄に触れて術が敗れてしまう。

今度は若い男に化けて娘の家に近づいた。その

年、「畑を整えてくれる者があったら娘の婿に迎

えても良いのだが」という話を聞いた山のぬしは

瞬く間に田畑を綺麗に整えた。

両親は若者を見て「娘には過ぎた婿殿だ」と大喜

びしたが、若者が魔除けの笹の葉を見て気味悪そ

うにしたり、昼飯に作った笹のちまきを酷く嫌が

るのを見て母親が怪しみ、山の魔物の化身かも

知れないと思い、こっそりと笹の煮汁をお茶に混

ぜた。それを知らずに飲んだ若者は叫び声をあ

げ、黒雲のような 姿になって逃げ去った。

以来、魔除けにお茶に笹の葉を入れて煮出すよう

になり、わらびの葉の上に眠る蛇はどんなに小さ

くとも、山の魔物が化けたものだと恐れられるよ

うになった。

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#氣づきのがっこう
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