充電になりかけた話 てらっち②
またまた、前の学校に勤務していたときの話。
生徒が面談を希望し、学校まで会いに来てくれた。大学受験の相談だった。
生徒は教室に入ると大きな紙袋を僕に渡してくれた。
「家族で九州に旅行へ行ってきたんです。先生たちにも食べてもらいたいなと思って選んできました。職員室で皆さんで食べてもらえたら嬉しいです」
「わあーありがとう。お小遣いの中から買ってきてくれたんかな?職員室に戻ったら先生たちに配るね。美味しそうやなー。どれにしようかな?」
大学受験の相談が終わり、僕は紙袋を抱えて職員室に戻った。荷物を自分の机に置くと先生方に生徒からもらったお土産を渡して回った。席を外している先生以外には
「〇〇君が九州旅行のお土産を先生方にと言ってくれました。どうぞ」
と言いながら手渡しした。
余った分はポットの横に先生方が旅行に行った際にお土産を置くスペースがあるので、そこに並べておいた。
その直後、校長先生に同じ学年の学年主任の先生が呼ばれて職員室を出て行った。
金銭授受にあたる行為をお前は何故見逃したのか。今すぐ注意しなさい。
そんな内容だったようだ。
僕は学年主任に呼ばれたので一連の流れを説明したが、聞き入れてもらえなかった。
すぐに校長先生に事の経緯を伝えに行く学年主任。そのやりとりは僕の職員室の席からも聞こえている。
直接呼んで言ってくれたらいいのにな。
「どうすれば正解だったんですか?」
学年主任の先生に訊ねると
「学校ではこういうのは受け取れないと言って持って帰らせるのが正しい」
そんな回答だった。耳を疑った。
「生徒が自分のお小遣いを使って一生懸命選んで重たい思いをして持ってきたお土産を受け取らずにまた家まで持って帰らせるのが正解なんですか?」
「そういうことではなくて、受け取らないってことが大事なんだよ。問題になってからだと大変だから。」
「生徒の優しさや思いよりそれが大切で、優先されるってことですか?」
お土産を受け取ったからという理由で成績に色を付けるという偏った教育指導方法に対する言及はなく、お土産を受け取った人間が糾弾される。
学校ってこんな場所なのか。僕は学校にはやっぱり馴染めないかもしれない。
受け取る、受け取らないの問題よりも先に
「お土産を買ってきてくれてありがとう」
の一言が何故伝えられないんだろうか?
その上で申し訳ないけど、ルールとして受け止れないことになっていると事情を説明して生徒に理解してもらうことが大切ではないか?
生徒から受け取って、職員室で配ることなく、自分のものとして自宅まで持って帰るのが正解だったのか。それとも気心の知れた先生たちだけで分けて食べれば良かったのか。
僕は生徒の優しい気持ちを無下にすることができなかった。人への思いやりや優しさを持つことを教えるのが教育だと思うから。
生徒に居心地の悪さを感じさせる学校は充電を経験した教員をも充電中に追い込みかねない。
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