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高級テイクアウト弁当の罪と罰

まったく、気が合わなかった

本当におもしろくなかった

ろくに現場経験もないカッコつけたコンサルティングなんかに分かってたまるか

ぼくがまだ25歳くらいの時だ

そのコンサルティングの洒落た親父とは最初から最後までまったく意見が合わなかったのだけれど、当時のぼくは駆け出しの見習いで、彼の言うことに従うしかなかった

そのお店はコンサルティングを入れたにもかかわらずその後も軌道には乗らず、鳴かず飛ばずのままオーナーチェンジすることになる

ぼくは仕事に私情を挟むタイプではないのだけれど、彼の言うことには(心の中で)全て反発していた

なぜか

今思い返してみると、彼が着任してみんなの前でスピーチした時の「あの」一言がぼくの心にずっと引っかかっていたからだ

「レストランは舞台です。主役は料理です」

あれから数多くの経験を積み、歳を重ねた
今でもぼくの意見は変わらない

**レストランという舞台の主役は料理ではない **

さて、今回の本題に触れていきたい

新型コロナウィルスの流行による経済的な損失は、ぼくらの想像をはるかに超えた

皆様ご存知の通り飲食業界にも甚大な被害をもたらしている

営業自粛を余儀なくされたレストランの多くが、売上補填のためにテイクアウトやデリバリーに力を入れて高級弁当の販売を開始した

その高級弁当に関して賛否両論、大論争が巻き起こっているのである
多くのお客様、レストランファンが高級弁当が高すぎる(と感じる)理由を分析している

多くの人がレストランの支払額には、場所やサービス、お皿や調度品が含まれているからだという

面白いからという理由だけでぼくはamazonで弁当箱を買って自分用の弁当を自炊で作っている。高級店とは味も素材も違うだろうが大満足だ、値段は半分にも満たない


またある人は、弁当は食費でありレストランというのは接待交際費だからだ、そもそも勘定項目がちがうんだという

そして料理人の立場からは、店で美味しいと感じる料理とテイクアウトで美味しいと感じる料理の味付けや調理方法は違うんだ、唐揚げの揚げ方ひとつ違うんだ、新規参入は舐めている

みんなそれか分かっていないという

これをレンジでチンして載せただけ
(5月6日まで販売中/宣伝)

ミシュラン3つ星店のお弁当が、方々から高すぎるとバッシングを浴びる

それらの批判的意見や分析に対して、ぼくは概ね賛成である
レストランの価値をテイクアウトに落とし込むことは不可能である
短距離走とフルマラソンのように似て非なるもの、まったく違う種目なのだ

テイクアウトをドライブスルーと見せ方を変えても、コース料理をまるごとお持ち帰りできるようにしても、それが例えばレストランで食べる時の半分の価格であったとしても、人々の心を掴むことは難しい

月見バーガーにもなれないし、吉野家の牛丼にもなれない

さて、長年飲食業界の現場に身を置き続けるサービスマンの立場から言わせてもらう

レストランの価値と高級テイクアウトの違いについてだ

最初のセリフに戻る

なぜ、その小洒落たコンサルティング親父の発言が気に入らなかったか
ぼくの考えは

レストランという舞台の主役はお客様

なのだ
料理は主役ではない、もちろん我々サービスマンは舞台の袖で主役をサポートするための黒子でしかないのだ

勘違いしてはいけないのは
お客様が神様だ、顧客ファースト無理にでも何でも応えるべきだ
という日本独特の偽物ホスピタリティとはまったく違う

店のコンセプトを守りつつ、お客様を舞台の上で輝かせる
それがレストランである

サービスについていてせっかちなお客さんと分かっていたらコースのスピードは上げるべきだ
接待をしていても早い時間に接待を切り上げて二次会は禁止という大手商社もある
スピーディかつ、話がまとまらないことがないように2時間以内にまとめなくてはいけない
女性と良い雰囲気で話をしていて、もしもお互いが夢中であれば、少しばかり放っておいても良いだろう
完璧なタイミングでワインをサーブして、皿を下げるタイミングから料理説明の立ち位置、喋り方まで気にするような強烈なホストとなるお客様だっている

ゲストとサービスマンのキャラクターの相性もある

我々、レストランで商売している人はそこに気づかれることなく、当たり前のように舞台の上の主役を輝かせてあげなくてはいけない

料理は、そのための武器の1つでしかない

勘違いしてはいけない
レストランにとっての主役はその時間を楽しみに来るお客様なのだ

まあ
近頃はパッケージ化(ぼくはそう呼んでいる)された演出、料理説明、料理のサプライズを含めて総合演出したような高級店ばかりだ

どいつもこいつも、同じように決められた台本を大げさに読み上げる
隣の席でも、向こうの席でも同じだ

別にぼくが嫌いなだけで、世の中の多くのお客様はそこに価値を感じで季節ごとに変わるお店側が用意した「おまかせ」なる長ったらしいコースを大金をはたいて食べに行く

これはぼくの考えからいうと、レストランではないまた別の飲食店の形だ
そんなお店が弁当箱の中に何万円の(と本人たちが認識している)料理を詰め込んだところでお客様の心を掴めるはずがない

また一方でまともなレストランはそんなバカ高い値段で高級食材を詰め込んだ弁当がうまくいくとも思っていないし、シェフのスペシャリテをテイクアウトさせようなんて考えにも至らない

まともなレストランにおいて主役はお客様だし、彼らはテイクアウト(弁当含む)の主役が料理であるという事をよく分かっている

まあ、自由だけどね

とにかくぼくも色々なお店のテイクアウト弁当を試しているけれども
その辺を理解しているお店と、まったく分かっていない流行りに乗った点数の高い予約の取れない有名店との差は歴然だ

新型コロナによって続く自粛生活

我々の生活は大きく変わったし、心の持ちようも大きく変わった
そんな中でぼくたちは今一度レストランの存在意義を、価値というものを見つめ直している

お客様はバカではない

勘違いした商品を提供するレストランがあるとしたら自分たちが積み上げてきた信用を失い、将来その罪に対して、痛いしっぺ返しを受けることになるかもしれない

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アソビカタSalon プロデューサー / キヨ地下 キュレーター / Twitter @KiyotoDrives

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コメント (2)
レストランの価値をテイクアウトに落とし込むことはできない,まさに共感です。オンライン料理教室などものすごくささります!
同感!!
ツーゴーで高級品を販売するなどと思います。
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