ネコゴコロとヒトゴコロ その5

猫をかぶる

 以前、『猫に名言』(主婦と生活社刊)という本を書いたとき、そのお披露目イベント用に作ったのが写真の猫のお面。「猫をかぶる」という言葉がありますし、来場してくれた皆さんに猫のお面をかぶってもらえたら場が和むのではないかと考えて。結果はまずまずの反応で、ホッとしたのを覚えています。

 そもそも「猫をかぶる」ってどんな意味で、なぜ“猫”なのでしょう。
 久しぶりに重たい広辞苑を引っ張り出して調べてみたら「本性を包み隠して、おとなしそうに見せかけること、また、そういう人」とありました。
 では、なぜ猫なのか。
 猫は一見おとなしい動物として可愛がられていますが、時に手がつけられないほどヤンチャになることがあります。自慢の鋭い牙と爪で飼い主にだって容赦なしです。そのような二面性から、猫のように本性を隠しておとなしそうに見せかけることを「猫をかぶる」というようになったという説が一般的。
 では、どういうときに耳にするかというと、「あの人、おとなしそうに見えるけど、絶対猫をかぶっているわよ」などと、ネガティブな意味で使われることが多いような。ニュアンス的には「ぶりっ子」に近いのかも。

 けれど、「猫をかぶる」ことは必ずしも悪いことではありません。人間関係やビジネスにおいては、時には本心を上手に隠すことも必要。うまく猫をかぶることで、他人に対して優しさや思いやりを示すこともできます。
 繊細なまでに感受性の鋭い人の場合、わざと猫をかぶる訳ではなく、人に不快感を与えないようにとする気遣いから、自然と猫をかぶる言動に走ってしまうことだってあります。
 要は、いかに本音と建て前を上手に使い分けできるかにかかっていますが、上手に使い分ける人ほど傍から見ると「猫かぶり」に見えてしまうことがあるから困りもの。
 そういう場合は、自己申告するに限ります。
 例えば、「あなたってホントに人づき合いがお上手ね」といわれたら、「いえいえ、猫をかぶっているだけですよ」とニッコリ笑って自ら打ち明けてしまうのです。
 心理学では『自己開示』といいますが、ありのままの自分をさらけ出すことで、相手に「この人はオープンマインドな人なんだな」「信用できそう」といった好印象を与えることができるのです。
 周囲から「猫っかぶり」「ぶりっ子」といった評価をもらいがちな人は、
チャンスがあったらトライしてみませんか。 








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