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陸上自衛隊に装備の開発・調達する能力はない

岸田政権は5年間で防衛支出を43兆円に拡大、年平均すると8.6兆円に増やすとしている。防衛費は長年6兆円前後だったのでざっくり今までの防衛費を1.45倍にするという大幅な増額だ。

これだけ巨額の防衛費増額が効率的に使われるか、実は大変疑問である。その中でも特に陸上自衛隊(以下陸自)の装備調達は軍隊として失格レベルだ。大幅に増額された防衛費が単に税金をドブに捨てることになりかねない。

小さな話だが、ポーチ類の留め具の問題を挙げよう。陸自の個人装備の弾帯などのポーチには金属の留め具が使用されている(写真)これは第二次大戦で米軍が採用したもので、21世紀の現在でも使用しているのは陸自ぐらいだ。米軍はベトナム戦争あたりからプラスチック製のバックルに置き換えている。この金具は部品数が多く、その分故障も多い。また表面処理がはがれて光るので非発見率が高くなる。この程度のものすら変えられないのは陸自に「軍隊」としての当事者意識と能力が欠如しているからである。一事が万事なのだ。

まず陸自では拳銃小銃といった小火器から攻撃ヘリなどの航空機に到るまで予備の装備を調達しないという悪癖がある。このため他国の軍隊や海空自衛隊と比べて装備の稼働率が極端に低い。
例えばヘリコプターの定数10機が必要な部隊だと調達するのは10機だけで予備機は調達されない。航空機は何年かごとに機体をメーカーや整備工場に送ってIRAN(Inspection and Repairing As Necessary:定期整備)を行う。それには数ヶ月がかかるので、その間他国の軍隊や空海自衛隊では予備の機体を部隊で使用する。だが陸自には予備機ないので、部隊で稼働できる機体はIRANの分だけ低下する。更に使用している機体に故障が起これば、それを修理するために更に稼働率は低下する。構造的に低稼働率なのである。

防衛省は今年、装備の非稼働率を5年以内に解消する発表した。これは部品の調達ができず、Aという機体から部品を外してBという機体で使用する「共食い整備」が多用されるなどして、稼働率は平均5割に留まり、部品在庫の不足や故障による非稼働率は3割に近い。これを解消するといっている。だが陸自ではそもそも予備の装備がないから、稼働率は構造的に低くなっている。

小銃も同じだ。陸自の小銃を見ていると、地金が見えてピカピカなものが少なくない。これはよく手入れされているからではない。整備が行われていないからだ。こういう小銃はミャンマーやアフリカの最貧国で多々見られる光景である。
本来小銃などの小火器も一定年数ごとに、工場に送り返して、摩耗した部品を取り替えたりして、またフレームの歪みなどによる射撃精度の低下を直し、表面処理も行う。とろこが陸自では隊員の数しか小銃が配備されていないので、このような定期整備ができない。

銃の整備の基礎知識がない。陸自の教範には清掃時にブラシを銃口から入れるように書いているが、これは本来反対側の薬室からいれる。そうでないと命中率が下がる。また弾丸に披せられている銅が銃腔内に付着する「銅着」という現象が起きるが、これは薬剤を使って溶かす必要がある。だが陸自では採用していない。当然銃の命中精度が下がり、故障率も高くなる。また表面処理が剝がれていれば、戦時には敵に発見され易くもなる。

筆者は浜田大臣や吉田圭秀陸幕長(当時:現統幕長)会見で質したが、この問題を解消するための予備の装備の調達を行うのか、ということについて明確な回答は得られなかった。つまり現状防衛省も陸上自衛隊幕僚監部も陸自の装備調達で予備装備導入する改善する具体的な予定は立てていない。防衛省や陸自の装備稼働率向上は画餅でしかない。

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