3周遅い、米英との防衛装備規格統一


以前からぼくは防衛装備に関して、NATO規格を採用すべきと主張してきました。
何を今更な話ですが、やらないよりはいい。だが本当にできるのでしょうか?

防衛装備規格、米欧と統一 政府方針案
補修機会、国内企業に期待
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO72066580Q3A620C2EA2000/

>政府は20日、国内企業による防衛装備の開発や生産に関する基本方針案を自民、公明両党に示した。米欧などの友好国と装備規格を統一すると盛り込んだ。装備の維持費圧縮や稼働率向上、国内企業が他国軍装備を補修する機会の拡大を期待する。

これは逆に言えば外国からコンポーネントが流入してくるよ、国産で品質、コストで対抗できるんですか、ということがまず問題となります。

>日本の防衛関係費に占める比率は1990年度に1割強(4763億円)だったのが2023年度はおよそ3割(2兆355億円)に上昇した。
>米国の24会計年度予算で国防費8863億ドルのうち「運用・維持費」は3297億ドルで37%を占める。

>装備価格が高騰した結果、運用期間は長くなっている。自衛隊のF15戦闘機は1981年の運用開始から40年以上が経過する。古い装備が増えれば安全性のための点検や部品交換といった維持費が一段とかさむ。

>これまで自衛隊が導入した装備の多くは独自の規格で、米軍など他国軍と部品を融通しにくかった。

それを非関税障壁にして国内産業を保護してきたわけです。共通化するならば国産兵器の設計や開発も抜本的に見直す必要があります。例えば装甲車ですが、パワーパックはまだしもエンジンやトランスミッション、油圧などのコンポーネントを三菱重工の事実上専用品にするのをやめる、ということも必要でしょう。事実16式MCVの油圧システムは外国製です。ちなみに瞬間消火装置も全部輸入品です。
たかだか数百両、年にせいぜい数十両の装甲車のために専用を採用するのはコスト、有事の調達性でも圧倒的に不利です。エンジンならキャタピラー、カミンス、MTU、シュタイアー、トランスミッションならばアリソン、レンク、ZFなどの一流どころを使ったほうがコストも安いし、有事に輸入することもできます。
つまり設計思想から見直す必要があります。


>政府の基本方針案は国内企業がこれから開発・生産する装備について北大西洋条約機構(NATO)加盟国やオーストラリアなどと互換性の高い設計を求めた。
>装備の規格統一は他国軍のメンテナンスや部品輸出などの拡大につなげる狙いがある。
>防衛装備の供給網を「同盟国・同志国と相互に補い合う」とも明記し、調達に関する国際協力を広げる方針も打ち出した。米軍には日本の民間造船施設で艦船を恒常的に補修できるようにしたいとの期待がある。

そうであれば検査などもNATOに準ずる必要があります。その場合、どの規格に適合するのかも明らかになります。「手の内を明かさない」とか寝言をいっていられなくなりますが、大丈夫ですか? 他国からお前ら精薄じゃねえのか、と言われるようなナイーブな隠蔽主義に別れをつげられますか?


>友好国と同規格の部品を使えば、部品メーカーは従来よりも生産量を増やして単価を下げやすくなる。自衛隊は部品不足で装備を動かせない事態も防ぎ、継戦能力を高める効果も見込む。

素材はともかく、海外コンポーネントに果たしてどれだけの企業が部品などを供給できるでしょう。航空機のエンジンのような国際共同開発にはじめから噛まないとむりでしょう。
多くの国内下請け企業は淘汰されます。


>日本は殺傷能力のある装備の輸出に関し「防衛装備移転三原則」に基づく規制があるものの、政府・与党は緩和案を検討している最中だ。

こういう買春はいいが売春は悪いみたいな子供じみた話は早く変えるべきですが、果たして「平和企業」の看板下ろしてまで「火の出る玩具」を積極的に輸出したい企業がどれだけあるでしょう。例えばニコンが潜水艦や装甲車輌用のペリスコープやら軍用スコープ、双眼鏡といったものを本気でつることは無いと思います。かと言って経営陣が無能なので防衛産業から撤退もしない。こういうやる気がない企業が防衛産業西が見つているのが一番迷惑です。

>一方で独自規格のため納入先はほぼ自衛隊に限られ、少量生産で利益率が米欧企業より低い。直近20年で撤退した企業は100社を超える。

だからその下請け企業二輸出のやる気があるのか。その実力があるのか。ずっと防衛省やプライムの言いなりにつくるのが仕事だった会社に事業欲をもてといっても、無理ではないでしょうか。

>基本方針案は部品を供給する中小メーカーに補助金を出す方針も打ち出した。
>装備の完成品を製造・輸出する大手企業との取引先が対象になる。防衛省が要件や金額を詰め、8月にとりまとめる2024年度予算案の概算要求に盛り込む。

同じ分野での弱小零細企業の事業を統廃合をするといいう意志は防衛省にはありません。
それができれば事業規模も売上も小さいまま、それを維持するために細々とした調達をつづけるしかない。そのような企業に補助金だしても競争力を弱めるだけです。

そして輸出やマーケティングに商社を活用しようともしません。市場も知らない素人にレッドオーシャンの海外市場開拓ができますか?

更に申せば国内規格を見直せるのか。ヘルメットにしてもJIS規格に準じているので未だにハーネス式です。電波法の規制や周波数帯もそうですが、こういった規格や規制を見直すことは、防衛省と自衛隊が一番嫌いなことです。
それをあえてやる気が防衛省にはあるとは思えません。その辺の事情を自民党の国防部会の先生方は知らないし、知ろうともしません。テクノナショナリズムの無敵皇軍に浸って自慰にふけっているだけです。

いっそのこと調達は外国の民間軍事会社に丸投げした方がいいと思います。



Japan in Depth に以下の記事を寄稿しました。
陸自の広帯域多目的無線機は使えない(上)
https://japan-indepth.jp/?p=76248
陸自の広帯域多目的無線機は使えない(下)
https://japan-indepth.jp/?p=76277


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