【WEDGE】青息吐息の防衛産業 「安保の基盤」の崩壊を座視するな


青息吐息の防衛産業 「安保の基盤」の崩壊を座視するな

https://wedge.ismedia.jp/articles/-/27283?page=3

全体的にバランスの取れた良記事です。ですが一点間違いがあります

>中国化薬(広島県呉市)江田島工場である。
>同社の神津善三朗代表取締役会長は「ここ30年間、防衛省向けの売上金額はほぼ変わっていない」と苦しい現状を吐露する。限られた防衛予算の中では、市場規模も小さくならざるを得ない。その間も原材料費は否応なく上がり、設備の維持・更新費用は経営に重くのしかかる。かつて700人いた社員も、今や470人となった。
>省人化にも限界がある。神津氏は「防衛装備品は、〝多品種少量生産〟。1つの生産ラインで、時期によってさまざまな規格の砲弾を製造するため、手作業に頼らざるを得ない部分がある。爆薬を扱う上での、保安上の細かな制限もあり、ラインを常に稼働させることはできない」と話す。実際、小誌記者が江田島工場を訪れた6月下旬には、TNT製造設備は停止していた──。

以前から申し上げておりますが、防衛産業が生き残るには血と涙を流さないと無理です。それはある会社は事業から撤退、ある会社は他社と合併しなければならない、ということです。その過程では職を失う人も出てくるでしょう。

防衛産業で弾薬関連だけで16社も存在します。他国から見れば圧倒的な小ささです。これらを統廃合しなければ生き残りは無理です。件の中国火薬にしももそのよう気はないでしょう。ただひたすら問題先送りで、目の前の弥縫策を繰り返しているだけです。
本来事業として成立しないものを無理やり続けているだけです。最後はバンザイするしかない。そうなれば結果として国民は他国の何倍から一桁高い弾薬を、将来発展するはずもない競争力の弱いメーカーに税金を無駄使いしてきたことになります。

これは防衛省や経産省も同罪です。事業統合しか道がないのに、問題先送りで改革するふりを続けてきました。であればいっその事国内調達を止めるべきです。それが納税者の利益です。

>日本の防衛産業が存亡の危機に瀕している。機関銃の生産から撤退した住友重機械工業、軽装甲機動車(LAV)の開発中止を決めたコマツ、艦艇・官公庁船事業を三菱重工業へ売却した三井E&Sホールディングス(旧三井造船)など撤退が相次ぐ。あえて撤退を表明しない企業もある。

コマツは装甲車事業からの撤退です。特機部門の売上は装甲車1に対して、弾薬2でした。実は弾薬の方が多かったのですが、多くの投資家は知らなかったでしょう。その弾薬も誘導砲弾開発中止もあり、外国製誘導砲弾が導入されれば売上が激減でしょう。
昨今陸自OBが今にもロシアが北海道に攻めてくるとかトンチキなことをいっているのは、ありもしない危機を煽って、戦車や火砲の数を増やしてコマツの弾薬事業の継続を狙っているのかもしれません。



>防衛装備庁が行ったアンケート調査によると、2017年の防衛装備品生産企業における総売り上げに占める防衛関連売り上げの割合は、平均でわずか3%であり、「利益率も低い」と、防衛関係者は口を揃える。

だから事業統廃合が必要なのですが、造船を除けば官民共にやる気がありません。造船で実現したのはそれがコアの事業であって、数%の売上ではなかったからです。
利益率が低いといいますが、現在7パーセント程度です。それを業界では15パーセントに引上ようとしています。ですが、7パーセントといってもその実、かなり嵩上げをしていますし、何の努力もせずに、取りはぐれもないわけです。むしろ事業の規模拡大が先でしょう。


 また、防衛装備品は市場価格が存在しない場合が多い。そのため、一般的に、競争入札にしても、随意契約にしても、契約時に原価などから「予定価格」を算出し、契約履行後に実績額の監査を行い、支払代金を確定する契約方法がとられる(下図参照)。だが「企業が努力してコストダウンを行っても、その分、支払代金が下げられ、利益が取り上げられてしまう仕組みになっている」(防衛省OB)という。


>三菱重工や富士通など、国内に15社ある「プライム企業」(防衛省から直接受注する大手企業)のうちの、ある企業の幹部は「従来のインセンティブ契約制度で得られるメリットは限定的だった。一方、インセンティブ契約制度を適用するための申請手続きでコストの妥当性やコストが下がる理屈を証明するための膨大な資料を求められ、その対応が負担になり申請には消極的であった。最近になって制度の見直しなども行われており、企業努力も報われるようになりつつあると感じる」と打ち明ける。

ここは大変重要なところです。インセンティブを強めて、コストダウンをすれば官民ともにメリットがあるのですが、防衛省にはビジネスの感覚がわからず、やる気がありません。数少ないやる気と能力のある人材を疎んで装備調達から外したりしています。


>「海外の防衛市場と比べると、防衛省は国内の防衛市場をうまくつくれていない。参入した企業が適切な競争環境にさらされ新陳代謝されながらも、長期にわたって企業側が満足する利潤をあげる市場が作れない場合、健全な防衛産業の構築はできなくなる」と指摘するのは、大規模防衛展示会「DSEI Japan」を共催するクライシスインテリジェンス(東京・豊島)代表取締役の浅利眞氏である。

防衛省が大事にしているのは既存の防衛産業だけであり、新参者を排除する文化があります。しかも新規参入のメーカーが失敗すると担当者が責任を取らされる。だから失敗するのがわかっていても大手に仕事を発注します。UAVやUGVなどはその好例でしょう。

>さらに浅利氏が問題点として指摘するのが「単年度主義」の予算制度だ。防衛に限った仕組みではないが、日本の防衛装備品の調達は単年度の予算に基づき、1年ごとに契約を結び直すのが主流である。しかし欧米や韓国など先進工業国では、たとえば「5年で戦車を200両」といったように、複数年の総量契約を行うのが当たり前だ。そうすればスケールメリットが生まれるだけでなく、事業の予見性も上がり投資も促進される。だが単年度主義の日本では、企業側が先を見通すのは困難だ。「これで生産ラインを維持できるはずがない。調達も毎年の予算に応じて場当たり的なものになる。複数年契約、総量契約をより広範に認めていくべきだ」と浅利氏は言う。

ここが大きな間違いです。どこの国でも単年度です。それとは別にメーカーとは調達数、期間、予算を契約します。その契約を各年度で実施しています。そこに凸凹が生まれるから米国などでは特定の装備に関して3年間の予算を決定したりしています。
ですがメーカーと調達契約を結ばないので、本来メーカーや商社が事業計画を立てることができません。これを改善することは絶対必要です。これはずーっと申し上げており、防衛省内部にその考えがあるのですが、未だに実現していません。

つまり防衛省には調達をする気がなく、「改革詐欺」を繰り返しているだけです。

>防衛部門を企業のレピュテーションリスク(評判を害する危険)と捉える向きもある。小誌の取材に応じた防衛産業に携わる大手企業の幹部たちは「防衛というニュアンスの部署名をつけられない」「株主から、もっと儲かる事業に投資を、と言われ、会社上層部からは、『利益も少なく、会社のホームページにも堂々と載せられないので、もう撤退してはどうか』と言われることもある」など、苦しい立場に置かれている人が多い。

撤退すればいいのです。ニコンのように防衛産業は卑しい、汚らわしいと社内的に思っている企業は大変多い。嫌なことはやめればいいだけの話です。
それをやめられないのは経営者が無能だからです。コマツの坂根氏のような名経営者と言われた人たちでも防衛は問題先送りで、これに関しては無能です。
>防衛装備品には、弾薬や車両など比較的従来の技術で続けられる分野と、戦闘機などのハイテク分野がある。前者は純国産を追求する理屈も立つはずだが、製造基盤の弱体化が進んでいる。また後者についても、欧米ではもはや1国で開発・製造を行う時代は終わり、共同研究・開発が主流になっている。国産技術のボトムアップを行いつつ、過度な国産信仰には走らない。そのバランスが問われている」

その気があり、製品が優秀ならば、例えばいすゞなどは軍用トラックを輸出しているはずです。法的な規制の問題もない。ところがいすゞがトルコで開発、生産している軍用トラックはタトラ社のものをベースにしています。同社には軍用トラックを海外展開する気が全く無いか、その実力がないのか、あるいはその両方でしょう。
であればそのようなやる気、能力のない企業は防衛産業から撤退すべきです。


>戦闘機という超ハイテク兵器の生産技術維持に、日本はどこまでこだわるべきなのか。F2の開発計画にも携わった元空将の平田英俊氏は、戦略の重要性と、懸念を語った。

>「部品やサブシステムなどを世界に提供できる技術力や能力があればよしとするのか、それに加えてF35並でなくともある程度の性能の戦闘機を作り上げる能力を求めるのか、ここは明確にしなければならない。共同開発についてはまだ何も決まっていないに等しいが、後者を求めるならば、武器やセンサーなどの多様なシステムや技術を戦闘機として一つにまとめ上げる『システムインテグレーション』の経験を積む機会を日本の防衛産業が得ることが必須だ。必要な性能を有する戦闘機をつくりあげることはもちろんだが、国際的な競争力を持つ防衛技術・産業基盤を目指す機会を失うようなことになっては意味がない」

防衛省や空幕に戦闘機の開発や調達の構想力はありません。それがあるならばF-2のあとの戦闘機でも海外からの技術移転と国内生産が可能なユーロファイターにしていたでしょう。そしてF-15の改修も自国で行っていたでしょう。開発や生産を長年止めれば、ベンダーが逃げるのは当たり前であり、また設計者や技術者の技能が向上しないばかりか途絶えます。対して韓国はロッキードマーティンやエアバスの支援を受けて、頻繁に新しい機体を開発しています。30年に一度の設計で先端航空機が作れるというのは妄想の類です。

防衛省も空幕もアメリカ空軍と同じ玩具が欲しい、という子どもじみた「趣味」を優先したわけです。先のFXは米国製ステルス戦闘機を買うか、国内の開発生産基盤を維持するからの選択でした。そして彼等は前者を選んだのです。

その上大人しく、輸入にすればよかったのに、単にコストを上げるだけの国内組み立てを選択しました。それを財務省から安い輸入に切り替えろと指摘され、慌てて交渉して国内組立のコストを輸入より下げました。これまた当事者能力の欠如です。

>F35など、「有償軍事援助(FMS)」による米国からの武器購入が増加している (DVIDS)〝無策〟のまま防衛費を国内総生産(GDP)比2%へ倍増したとしても、結果として米国製の高い兵器を輸入するだけになりかねない。同時並行で、継戦能力を高め日本の安全保障の「足腰」を強化するための戦略も忘れてはならない。冒頭の中国化薬のような企業が撤退すれば、日本の安全保障の土台は根底から揺らぐことになる。元防衛大臣の森本敏氏はこう話す。
>「ロシアのウクライナ侵攻について、米国ですら戦争のシナリオを予測しきれていない。ロシアによる核兵器の使用や、その影響が拡散すると欧州大戦の可能性すらあり、中国もその隙を逃さないだろう。そのような地政学的な変わり目にある中で、日本の防衛産業の生き残りを考えないといけない」

いや、まるで他人事です。森本氏が大臣当時どのような改革をなされたのでしょうか?

>6月にも自民党国防議員連盟は、防衛産業へのテコ入れを求める提言を提出した。「まずは防衛産業を財政支援する法的枠組みをどのように構築するかを考えないといけない。そして『戦略3文書』改定が迫る中、『国家安全保障戦略』などの下に『調達戦略』を新設すべきだろう」(同)。

国防族議員は単に予算増やせばいい、補助金ばらまけばいいという考えでしょう。ですがそれは農業と同じで、出せば出すだけ業界は弱体化します。
国防族の多くは軍事を知らずに、軍事常識が欠如している防衛省、自衛隊の「ご説明」と既存防衛産業大手の陳情をソースにしているわけですから実態を知りません。

防衛省、自衛隊という「頭がおかしい」レベルで、当事者能力がない「発注者」と仕事をして、まともな成果がでるわけがありません。ましてや事業の将来性がある分けがないでしょう。まともな経営者であればそれはよくわかっているはずです。


世界で、軍事市場で儲けているのは、日本の防衛産業からは嫌がらせで参入できない、防弾繊維などの世界的大手である帝人とか、軍服やバックパックなどのファスナーなどのYKK、光学・電子センサーやミサイルシーカーなどの光学センサーのSONYなど軍事をやっていません、みたいな顔をしているメーカーです。

■本日の市ヶ谷の噂■
航空医学実験隊では自衛隊に必要な航空医学等の書籍、国際雑誌の購入整備は程んどなく、
教科書や国際標準の資料が無いので、すべて世間話のレベル。空間識失調による戦闘機の墜落も、対策については世間話のレベル、井戸端会議レベルで堂々巡り。陸海空自衛隊の将官レベル、防衛装備庁の専門家もこのレベル、との噂。


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