財政制度分科会(令和3年11月15日開催)「防衛関連資料」読む。その9 調達改革その7


財政制度分科会(令和3年11月15日開催)の防衛に関する資料、参考資料を解説評論していきます。
https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/proceedings/material/20211105zaiseia.html

「資料」と「参考資料」2つがあります。既に「資料」編が終わったので「参考資料」を解説していきます。

https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/proceedings/material/zaiseia20211115/02.pdf

今回は調達改革についてその7です。

量産開始後の実態把握 ~部品枯渇、追加コストの発生~(P17)

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○ 直接材料費である部品コストの上昇のほか、装備品のライフサイクル全体でコスト上昇要因がないか、P-1哨戒機を例に、量産開始後の実態把握に係る追加調査を実施したところ、次の実態を把握。
- 量産開始後13年で、部品枯渇対策のため、約334億円(機体2機分)に相当する再設計費等の費用(いわゆる「初度費」)を計上
- 初度費発生原因を確認すると、海外製の一部構成品の製造中止や仕様変更等によって、部品全体の設計見直し等が発生
○ 装備品ライフサイクルを踏まえた部品の供給見込みを十分に確認せず、部品選定・管理や装備品全体の設計を行っているため、結果的に、部品枯渇が判明し次第、都度対処。

P-1哨戒機における部品枯渇対策
初号機導入(H20)から令和3年度予算までの部品
枯渇対策に係る初度費(設計費、専用治工具費等)
76品目 約334億円
(当初量産単価2機体分の価格に相当)

レジスタードマーク 枯渇部品の内訳は、送受信機、ライトなど様々であるが、
電気電子部品を中心に多くの部品枯渇が発生。
主な部品枯渇理由は次のとおり。
A部品:部品(あるいは構成品)の製造中止
B部品:民生品の仕様変更
※ 各部品の構成品レベルでの情報は十分に把握できておらず、国産部品であっても、海外製の一部構成品(集積回路や電力変換装置等)の製造中止や仕様変更等によって、部品全体の見直しが必要に。
レジスタードマーク 設計の際、期待性能や価格を中心に部品選定が行われており、部品製造企業の中長期の供給見通しの確認は不十分。


部品枯渇対策がずさん過ぎます。
また本来、例えば10年ごとに60機P-1があるならば10機とか20機とかずつを、トランシェ1とか近代化をしていくのが普通です。それが全くできていない。
空自のF-15の近代化も場渡り的に遅れて、まるでガウディのサクラダファミリアの如くです。それは「近代化」が目的化しており、F-15を一線の戦闘機として留めるということが目的ではなくなっています。ですから近代化の途中でレーダーなど採用コンポーネントが旧式化したりしています。

昨今は民生部品の流用も多く、その場合はそもそも20年も30年も部品の生産や保管はしていません。そして昨今は電子化、ソフトウェアの多用によって枯渇部品を別な部品に換装した場合、ソフトとの適合性やソフトの改修も必要となります。
それは近代化のパッケージ化をしなればいけません。

ところが毎度毎度ですが防衛省にはまともな調達計画がありません。何をいくつ、いつまでに調達(そして戦力化し、何年間使い続けるのか)、総予算はいくらか。それが不透明です。ですから、契約社は事業計画が立ちません。主契約社ですらそうですから、ベンダーなんてもっとわかりません。
それでも国内企業は防衛調達の異常さに慣れているので、これを当然と思いますが、海外のメーカーやベンダーはそんなことをしったことじゃありません。
生産や運用がいつまで続くかも分からない。調達も毎年単年度でいくつになるかもわからない。ですから「こんなものはビジネスじゃねえ」とOH-1の海外ベンダーにケツをまくられたわけです。これを国内で作るととてつもなく高くなる。
故にOH-1の調達が打ち切られました。

そして初度費の不明瞭さ。
グラフ「P-1の部品枯渇対策の初度費」
を見て分かるように、初度費が延々と払われています。
本来初度費とは生産に必要なジグやライン構築費などを賄うためのものであり、生産開始の初期に必要な費用です。防衛省も当初はそのように説明していました。ところが実際には不具合の改修などに延々と払われつづけています。
これを「初度費」というは詐欺みたいなものです。このような不透明な「初度費」も調達コストを押し上げております。
また電子機器などは長期の保存ができないものがありますが、経年劣化しないものはまとめ買いするも手ですが、そのようなことをしてこなかった。必要になってほそぼそと発注するので当然コストは高くなります。

「結果的に、部品枯渇が判明し次第、都度対処」ここに集約されています。ずさんなわけです。
それはこれまた繰り返しますが、防衛省の装備調達が調達自体が目的化しているからです。
実戦をおこなる機体の性能と稼働率を維持するという視点がありません。調達すれば目的が達せられるわけですから、不断の近代化や近代化のパッケージ化など考えてきませんでした。
ずさんな仕事で済むので他国のように調達に多数の人員を割いてこなくて良かったわけです。ですからいくら改革案をぶち上げても人手が足りないので絵に描いた餅となります。

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