令和4年度財政制度分科会の防衛関連資料を読む その7


財務省では毎年財政制度分科会が開催されています。これは国の予算、決算および会計の制度に関する事項などを調査審議するものです。
その中に防衛に分科会があり、そこで使用される資料が毎年公表されています。意外に注目されていないのですが、防衛省では出さない資料や防衛省には都合の悪い指摘も含まれており、防衛に関しては貴重な資料となっています。これは「資料」と「参考資料」があり、今回から数度に渡って、この「資料」を解説していきます。

「資料」
https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/proceedings_sk/material/zaiseisk20220420/03.pdf
「参考資料」
https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/proceedings_sk/material/zaiseisk20220420/04.pdf


<参考>防衛関係の研究開発に係る諸外国の取組(P22)


○ イタリアやスウェーデンにおいて、研究開発費(国費)は約80億円と少額。⼀⽅で、企業⾃⾝が国の10倍以
上のR&D投資を実施し、国際市場を⾒据えた経営資源の⾒直し、装備品の開発・⽣産を実施。
○ 国は、企業の国際共同開発・⽣産、グローバル市場への移転に向けた取組を後押し。
※ 例えば、航空機はグローバルサプライチェーンでの開発・⽣産がよく⾒られ、各国・各企業は、そこへの参画を模索。

諸外国では軍事メーカーが「企業」「事業」として機能しています。対して我が国では「公共事業」です。しかも戦争さえなれば結果を出さなくていいですから気楽なものです。ひたすら防衛省に寄生していればいい。防衛省もどうせ戦争なんてないから、組織防衛と社内政治ばかりを優先します。

諸外国のメーカーは国際市場で生き残るために必死です。ですからより高性能な装備を開発し、コストを低減し、競争力を高めようとします。そして開発やマーケティングにはカネがかかし、株主の目もあるので、利益をしっかり確保します。
また必要な事業は買収し、不採算部門は売却ないし、撤退します。このようなダイナミズムは国内には殆どありません。

【イタリア政府】

国防関係の研究開発費(2019)︓約80億円

各国の産業基盤を有効に活⽤して⾃国の防衛⼒を維持

装備品の多くを欧⽶諸国と国際共同開発・⽣産

デュアルユース技術の管理を含め、経済開発省が装備品
輸出政策を担当
【レオナルド社】

R&D投資(2020)︓約2,000億円

主要領域は、電⼦機器・セキュリティシステム、航空機、ヘリコプター、宇宙

通信事業、レーダー事業、サイバー事業等を強化するため、「事業⾒直し」を実施
- 国内の宇宙・通信事業会社を買収
- BAE Systems社(英)よりアビオニクス事業の資産買取
- ⽶軍のシステム関連委託先を買収

ユーロファイターやF-35の国際共同開発、英国の次期戦
闘機の開発にも参画

ヘリコプターは欧州では二社に集約されています。対して我が国ではほぼ防衛省に寄生している「子供部屋おじさんメーカー」が機体3社、エンジン2社も存在しています。ヘリコプターこそ民間市場は大きいのですが、彼らは内外の市場に打って出る気はサラサラ無い。ひたすら高いコストで細々と防衛省向けの生産を続けていれば損をすることがないからです。当然ながら将来性はありません。諸外国の何倍も高いコストで何十年も調達し、上げ挙げ句に、彼らは撤退するでしょう。
政府も防衛省も経産省も、業界もヘリ産業すら統合する気はありません。
将来性がないならばヘリ産業を潰すことも処方です。将来にたり何倍も高いヘリを調達しても産業として自立する気はなく、
やがて事業規模が小さくなってバンザイして終わり、税金を食い散らかして終わるだけです。

将来性のない事業にとうするのは馬鹿者です。それが税金ならば尚更です。

レオナルドはBASシステム同様に、米国企業を買収し、拠点も持っており半ば米国の会社と言ってもいいほどです。


【スウェーデン政府】

国防関係の研究開発費(2019)︓約80億円

冷戦後、装備品の調達政策は独⽴から国際協⼒に転換

装備品開発が必要な場合、国際共同開発が主

国防輸出庁が装備品輸出政策を担当
【サーブ社】

R&D投資(2020)︓約900億円

主要領域は、航空機、兵器システム、センサー、指揮管制システム

国内の造船企業、兵器システム企業を買収し、国内の防衛関係事業を「集約」(買収した事業の中で、陸上戦⽤の戦⾞システムは売却)

戦闘機「グリペン」は、BAE Systems社(英)と、当時、JVを設⽴して開発するなど、⾃前での開発部分は絞ったうえで、国際協⼒を実施

スウェーデンも輸出に熱心です。そして自国の強みのある部門を強化して、合併や買収をして、コア事業とならないものは売却します。CV90やバイキングなどのへグランド社はBAEシステムズの傘下ですが、拠点はスウェーデンです。外資となっても国内で開発、生産拠点を持つ企業は少なくありません。

同様にフィンランドもパトリア社に防衛産業を集約しています。

我が国は輸出の制約があるにしろ、そのような合理化をしてきたかといえば、全く行って来なかった。過去の装備調達合理化もやっているフリだけです。

処方箋は既にでています。それを政府も防衛省も防衛産業もやる気がないだけです。


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