日本の航空産業はメーカーと政府の無能で自壊する。


MRJは開発中止となり失敗が決定しました。

三菱重工、国産ジェット旅客機撤退へ 開発会社も清算
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC023ED0S3A200C2000000/

>三菱重工業が国産ジェット旅客機の事業から撤退する方針を固めたことが6日、分かった。2020年秋に「三菱スペースジェット(MSJ)」の開発を事実上凍結していたが、今後の事業成長を見通せないと判断した。開発子会社の三菱航空機(愛知県豊山町)も清算する方針。累計1兆円の開発費を投じながら納期を6度延期するなど空回りが続いた。新たな産業育成に向けた官民による国産旅客機の構想は頓挫した。

>三菱重工は今後は日本と英国、イタリアの3カ国で35年の配備に向けて次期戦闘機の開発を目指している。国産ジェット機の開発で得られた知見を生かしていく。


メディアは型式証明取得でつまずいたからだ説明していますが、それは川の中流の話です。
そして反省していないので同じ過ちを今後も続けるでしょう。

源流の話をどこもしません。
そもそも論でいえば、三菱重工は航空機メーカーとはいえなかったことが原因です。
航空機産業というビジネスをやっていなかったことが原因です。仕事をビジネスとしてみていなかった。

防衛省という、天下りさえ受けれておけば、作れば自動的に買ってくれる役所に寄生してた寄生虫のような仕事しかしてこなかった。あとは外国企業の下請けです。
独立した航空機メーカーとしてビジネスをしてこなかった。しかもMH2000なども過去の失敗から学ぶこともなかった。ビジネス=商売であることを理解していませんでした。

防衛省の戦闘機を作っていた我が大三菱の実力を持ってすればリージョナルジェット程度チョチョイのチョイだとおもっていたのでしょう。夜郎自大もいいところです。

まるで童貞のAVマニアが3Dの女性を口説き落としてヒイヒイ言わせるのは簡単や、といってナンパして玉砕したようなものです。

そして政治にも経産省にも航空機産業育成のビッグピクチャーや戦略がありませんでした。自動車は紆余曲折はあってもやがてはEVに移行していくでしょう。であれば機械モノを作って輸出するという大規模な産業が日本にあるのか?
無いでしょう。であれば航空機産業に注力しようという意識はあったが戦略も構想力も無かった。
だから挙国一致体制が取れずに、自衛隊がMRJを採用することもなかった。

あいも変わらず弱小零細航空機メーカー4社、エンジンメーカー3社体制です。世界で戦えるはずもない。そして、将来民間市場に参入するきもない、川重のP-1やC-2といった出来損ないを他国の数倍の調達費、更にその倍の維持費を払って税金で食わせてやっている。借金まみれで定年間近の親が働かない「子供部屋おじさん」を借金して養っているようなものです。自衛隊機としても将来大型機なんてプロジェクトにはないでしょう。

他国が当たり前のようにやって航空作業の再編すらでないというのは業界と行政、政治に当事者意識も能力もなかったからです。

今から約15年前に文藝春秋社の月刊「諸君!」に書いた原稿です。
https://kiyotani.seesaa.net/article/201807article_5.html
>だが、筆者にはMRJのプロジェクトは途中で挫折し、経産省が投資する資金は死に金になると予想している。その理由として第一に、当の三菱重工にプロジェクトを何が何でも成功させるといった気魄が感じられない。第二に、このような巨大プロジェクトには三菱のみならず他の国内メーカーの協力が必要だが、そのようなコンセンサスが業界にない。第三に政府に防衛航空産業育成のグランドデザインが欠如しており、明確なビジョンがないことが挙げられる。
> 防衛省、国交省、財務省など関係省庁の間に充分なコンセンサスが出来ていない。そんな現状のまま、思いつきで小出しの補助金を出しても、軍事において下策とされる「兵力の逐次投入」を行うに等しい。


>6月に開催されたパリ航空ショーにおいて、三菱重工がスポンサーとなってMRJプロモーションのためのレセプションが日本大使公邸を借りて行われた。ところが筆者の得た情報によると参加者約300名の内日本の業界関係者が約250名、フランス人が30名、その他20名ほどがスウェーデン人など他の外国人であったという(なお、在仏日本大使館に確認したところによると参加者は約280名、内外国人が90名とのことである)。いずれにしても国際的な航空ショーでのレセプションとして日本人の比率が多すぎる。
 
>パリ航空ショーは英国のファンボロウ航空ショーと並び、世界中の航空業界関係者が集まる航空業界最大のイベントである。レセプションを開くのであれば、国内の業界関係者よりも潜在的顧客である各国のエアライン、プロジェクトに投資をしてくれそうな投資会社や銀行、リース会社(旅客機はリースで運用されることが多い)、メディア、特に航空専門誌などの関係者を優先的に招待すべきだろう。

>海外への情報発信の千載一遇のチャンスで、日本人同士で飲み食いしているようではやる気を疑われても仕方あるまい。在仏日本大使館によると外国人の参加者を絞ったのは、「大使公邸のキャパシティの問題」であるとのことだったが、ならば初めからホテルの宴会場を借りればいいだけの話である。大使公邸を借り切るメリットはない。
別な事例を挙げよう。


>そもそもMRJの計画自体に無理がある。まず三菱重工の航空宇宙部門の規模が過小である。先に述べたように、MRJの場合、開発費が約一二〇〇億円、事業化に七〇〇〇億円ほどかかると見られている。三菱重工の売り上げは06年度で3兆600億円、経常利益は830億円ほどで、その事業規模は世界の防衛産業メーカーのランキングで第4位のノースロップグラマンに近い。だが、航空宇宙部門は売り上げが五〇〇〇億円弱、経常利益は約一四四億円に過ぎない。開発費の内四〇〇億円は国が負担するとしてとしても、残りは800億円。この金額は同社の航空宇宙部門の経常利益の5.5年分であり、事業化の経費七〇〇〇億円は実に同社の経常利益の半世紀分に相当する。

> 端的に言えばMRJ事業は三菱重工一社(三菱グループが支えるにしても)が背負うには、その企業規模からみても荷がかちすぎる。しかも多くの事業部門を抱えるデパートのような三菱重工には専業メーカーのように果敢に判断を下して、迅速に投資を行うといった経営判断が出来ない

>ボンバルディアは元来スノーモービルや鉄道車輛のメーカーだったが、八〇年代に低迷していた国営カナディア社および英国のショート社を買収して旅客機ビジネスに参入、高収益の航空部門に育て上げた。またブラジルのエンブラエルも赤字の国営企業だったが、民営化によってこれまた優良企業として蘇った。
 
>両社に共通しているのは経営者が強いリーダーシップを発揮してリストラクチャリング(単なる首切りではなく本来の意味での事業の再構成)と果敢な投資を行ったことである。つまり、リスクを厭わぬ企業家精神とリスクマネジメントこそが航空産業で成功する条件である。これが日本の航空業界には決定的に欠落している。
我が国ではYS―11に続く国産旅客機の構想は通産省と業界で練られていたが、熾烈な競争を目の当たりにして足踏み状態を続け、市場参入の決断は先送りされてきた。

>航空メーカー各社のぶち上げている民間機市場への参入プランは、現実性があまり高くない。むしろ現実離れしているといってよい。これが我が国の航空産業界の認識なのである。
 >これら既存の航空機メーカーよりもむしろホンダやトヨタなど自動車メーカーの参入プランの方が現実的かつ堅実で、民間機市場で成功する可能性が高い。両社は長年にわたる入念な準備を経て、ビジネスジェットを開発、北米を中心に粛々と事業化に向けて活動している。実は企業のVIPや大金持ちをターゲットにしたビジネスジェットは、空飛ぶリムジンといえる存在で、経済効率やコストパフォーマンスよりもオーナーの趣味で購入が決定される傾向がある。しかも旅客機のように経済性を最優先する必要もない。

航空ショーでも三菱の「世間知らずぶり」が目立ちました。
胴体モックアップにしても、シャーレー内部に作って、招待されないと入れない。
こんなナイーブなことやっているのは、秘密主義、隠蔽主義の防衛省の仕事しかしてこなったからです。まともなビジネスセンスがあれば、こんな事はしないし、社内から批判の声が上がって然るべきですが、無かったか上層部に届かなかったのでしょう。


そしてビジネスメディア含めたメディアの責任も大きかったわけです。
もう成功する前提でテクノナショナリズムを煽る記事が非常に多かった。

>7月3日付けの日経新聞一面は「競合するボーイング、欧州エアバスが旅客機を転用しているのに対し、トラックをそのまま積めるなど積載能力が高い」と報じているが、現在の航空貨物はその殆どが規格化された航空コンテナないしパレットで輸送される。誰が好き好んで貨物本体より重く嵩張るトラックごと空輸しようか。そもそも軍用輸送機であるCXは民間機と比べて頑丈につくれられており、その分生産コストも高い。また高翼機であるので低翼の旅客機を転用した輸送機に比べ速度が遅く、燃費も悪い。故に傑作軍用輸送機であるC-130ハーキュリーズやC-17グローブマスターIIなども殆ど民間に転用されていない。経済専門紙がこのような与太を一面に掲載してはいけない。


こういう初歩レベルの知識がない記者が、無敵皇軍的な記事を量産して、オタク意外の読者や三菱の株主も信じてしまった。その罪は大変重いと言えるでしょう。


三菱も経産省もこの失敗から何も学ばないでしょう。
没落していく国とはそうしたものです。

そういえばこの記事ついてのJSF君のブログがこれです。

「諸君!」の三菱リージョナルジェット(MRJ)批判記事について
http://obiekt.seesaa.net/article/88694095.html
>三菱や日経新聞が文藝春秋社に抗議してきたら、一体どのように言い訳するつもりなのでしょうか?

プロとアマチュアの差とはこういうものです。

Japan in Depthに以下の記事を寄稿しました。
オスプレイは陸自から海自に移管すべき
https://japan-indepth.jp/?p=73052

European Security & Defenceに次期装輪装甲車の記事を寄稿しました。
https://euro-sd.com/wp-content/uploads/2023/01/2023_01_ESD_P.pdf



■本日の市ケ谷の噂■
自衛隊横須賀病院などは地区の救急医療輪番制度に参加しているが、年末に看護官の自殺をだした自衛隊入間病院はやる気なし。「航空自衛隊は、三沢病院、岐阜病院、那覇病院をつぶして入間病院を新設、高機能化する」という発表は大本営発表でヤルヤル詐欺、との噂。

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