AMVと共通戦術装輪車のねじれ。装備庁、陸幕の当事者能力の欠如


次期装輪装甲車にAMVを採用し、一方共通戦術装輪車にMAVを採用したことで、理、陸自の装甲車体系に大きなねじれが生じます。それに軽装甲機動車の後継の小型装甲車の調達も問題です。

そもそも殆どキャラクターがかぶる8輪装甲車を二種類調達が必要だったのか、ということです。
共通戦術装輪車は16式機動戦闘車とともに機動連隊に配備されるもので、より高い脅威に対処する必要があるわけです。対して次期装輪装甲車はより脅威度の低い環境で使う車輌です。
ところがMAVよりもAMVの方がより機動力も高く、より高い脅威に対応できる高位の車輌なわけです。事実としてMAVと競ったAMVが選ばれたのもそれが理由でしょう。

共通戦術装輪車も次期装輪装甲車も同じ車輌であれば兵站や教育が共用化できるというメリットがあります。また三菱重工に装甲車メーカーが集約されるということもメリットでしょう。反面、国際的にみて性能の劣るMAVを大量に配備することは大いなる問題となります。既に装甲車両では我が国は南ア、シンガポール、トルコ、UAE、韓国などから比べて、相当劣っています。それはこれらの国が輸出に励んで、性能、コスト、品質がこの20年ほどで飛躍的に向上して先進国レベルになったのに、我が国はそのような世界のトレンドに無関心で、昭和の時代に取り残されているからです。

これがまだ共通戦術装輪車も次期装輪装甲車もAMVであれば事情は大きく異なったでしょう。

そもそも、防衛省には共通戦術装輪車は三菱重工に発注し、次期装輪装甲車はコマツに発注して2つの装甲車メーカーの温存を図っていました。本来ならば規模の小さく、開発予算も按分される状態を打破するのであれば、装甲車メーカーも集約は必要でした。ところがそのようなことを考えずに、現状維持を狙ったわけです。

コマツとしては是が非でも次期装輪装甲車も取らないといけない案件でした。取らないと装甲車事業がなくなります。そのため無理して極端な安値で落札しました。結果戦闘車両としては使い物にならないNBC偵察車をベースに安かろう、悪かろうの試作車を提出して、これが試験でダメ出しを食らったわけです。この駄目な車輌を選んだのは装備庁であり、陸幕でした。

そしてもう一つの小型装甲車も問題です。これはタレスオーストラリアのハウケイを三菱重工がライセンス生産する案が本命だと見られています。

ですが、そもそも現用の軽装甲機動車という4人乗りの小型装甲車を主力装甲車として使っていることが陸軍としては異端ですし、軍事の常識を外れています。とても軍隊の体をなしているとはいえません。軽装甲機動車の後継に何かを調達するという安易な発想が小型装甲車プロジェクトです。

そこには仏軍のスコーピオンのような次世代の装甲車のポートフォリオをつくり、それかから各車両を選定するという大局的な計画が存在しません。

本来ならば
① 共通戦術装輪車
② 次期装輪装甲車
③ 小型装甲車

この3つのプロジェクトは2つに集約すべきでした。そしてその前提としては装甲車メーカーは一社に集約するという大前提が必要でした。

小型装甲車は本来1個分隊が搭乗できる普通の装甲車にすべきです。本来このクラスの車体は連絡や、対戦車、偵察などの任務に用いるものであり、それが必要ならば別途調達すべきです。
共通戦術装輪車は装備も重く、重防御の車輌です。
次期装輪装甲車はそれほどまでの性能は求めず、調達性を重視すべきです

例えば
①+②、③
あるいは
① 、②+③ という選択があるでしょう。

3車種が2車種に統合されれば兵站や教育は効率化できます。
例えば①+②は8輪装甲車で、②に関しては増加装甲はつけない、あるいは薄くする。③は8人乗りの6輪あるいは4輪装甲車でもいい。

または①は8輪重装甲にして、②③を共通化して8人乗りの6輪あるいは4輪装甲車にするという方法もあります。

予算は限られています。その中で装甲車両のエレクトロニクス、ソフトウエア、すなわちセンサー、RWS、状況把握装置、ナビゲーション、バトルマネジメントシステム、ドローンジャマーなどとその統合が必要であり、価格面でも大きなウェイトを占めています。
であればドンガラである装甲車本体はできるだけ安価に調達すべきです。

それから開発調達のシステムを見直すべきです。
メーカーは三菱重工一社に集約してもいいでしょう。そして開発と生産を分離すべきです。
開発は重工にさせた上で、外国の車輌と競合させて性能、コストなどで重工案があればそれを採用する。外国製が勝てばそれを重工がライセンス生産する。この方針ならば技術開発のモチベーションも維持でいるし、確実にメーカーは仕事を取れます。仕事量が確保できるので開発費も捻出も容易になります。ただ必要数が少ない車輌であれば輸入として、整備を重工が担当すべきです。

更に申せば、航空機から小銃に至るまで、部隊分しか調達しない陸幕の悪癖を正すべきです。例えば部隊で必要数が100両ならば100両+予備車輌を20両は調達する。
これによって故障車を修理中の代用に使ったり、損耗分の補填につかうべきです。そうでないと構造的な低稼働率が解消しません。また戦時の際の予備にもなります。メーカーが集約されて年の調達数があがれば予備を調達してもコストは対して変わらないでしょう。

本来このような構想とスキームを作った上で、装甲車両を調達すべきですが、防衛省、陸幕にはその当事者意識と能力が欠如しています。


陸自「次期装輪装甲車にAMV」の問題点
https://japan-indepth.jp/?p=71629

■本日の市ケ谷の噂■
11式回収車は10式戦車を牽引走行する試験において、急な坂を上れず身動きが取れなくなり、結局90式回収車を呼ぶ事態になった。履帯改修という小手先の形で、一応の決着をみたが、10式戦車側が実戦仕様で弾薬などをフル装備した状態であれば、平地でさえ牽引走行は厳しい、との噂。

#AMV #次期装輪装甲車 #共通戦術装輪車 #小型装甲車

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