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地方財政あるある#22.借金しがち(臨時財政対策債2)

メンマの話やっけ?

-???

あ、思い出した。ザーサイ、じゃなくて臨財債の話やった。

-・・・。

◆地方債の例外

閑話休題。で、臨財債、地方債の代表的な「例外」って言われてるんやけど、どういう意味か分かる?

-前の話からすると、なんとなく例外っぽい気もするんですが、何がと言われるとよく分からないです。

そっか。もうほとんど答えは出てるんやけどな。地方債の機能の話。

-あ。金欠を理由にした借金というところですか?

まあそうやな。復習やけど、地方債は原則、限られた場合にしか起債でけへんかったよね。「原則は地方債はダメ。但し、公共事業とか災害対応の場合はOK。」っていう地方財政法5条

(地方債の制限)
第五条 地方公共団体の歳出は、地方債以外の歳入をもつて、その財源としなければならない。ただし、次に掲げる場合においては、地方債をもつてその財源とすることができる。
一 交通事業、ガス事業、水道事業その他地方公共団体の行う企業(以下「公営企業」という。)に要する経費の財源とする場合
二 出資金及び貸付金の財源とする場合(出資又は貸付けを目的として土地又は物件を買収するために要する経費の財源とする場合を含む。)
三 地方債の借換えのために要する経費の財源とする場合
四 災害応急事業費、災害復旧事業費及び災害救助事業費の財源とする場合
五 学校その他の文教施設、保育所その他の厚生施設、消防施設、道路、河川、港湾その他の土木施設等の公共施設又は公用施設の建設事業費(公共的団体又は国若しくは地方公共団体が出資している法人で政令で定めるものが設置する公共施設の建設事業に係る負担又は助成に要する経費を含む。)及び公共用若しくは公用に供する土地又はその代替地としてあらかじめ取得する土地の購入費(当該土地に関する所有権以外の権利を取得するために要する経費を含む。)の財源とする場合

この地方財政法5条に基づいて借り入れする地方債のことを「5条債」って言ったりするんやけど、臨財債は5条債かどうかというと?

-違います。

そう。だから、臨財債は地方債の例外。ぱっと読んでも分からん条文やけど、地方財政法の規定を読めば、臨財債が「5条債」ではなく、特例のものやということが分かるねんな。

(令和二年度から令和四年度までの間における地方債の特例等)
第三十三条の五の二 地方公共団体は、令和二年度から令和四年度までの間に限り、第五条ただし書の規定により起こす地方債のほか、適正な財政運営を行うにつき必要とされる財源に充てるため、地方交付税法附則第六条の二第一項の規定により控除する額についての同項の規定に従つて総務省令で定める方法により算定した額の範囲内で、地方債を起こすことができる。
2 前項の規定により地方公共団体が起こすことができることとされた地方債の元利償還金に相当する額については、地方交付税法の定めるところにより、当該地方公共団体に交付すべき地方交付税の額の算定に用いる基準財政需要額に算入するものとする。

-たしかにこれだけだと臨財債って分かりませんが、2項は交付税措置率が100%だってことが書いてありますね。

せやね。ほんでさらに言うと、地方債は一般財源か特定財源か、どっちやった?

-使いみちを特定して借り入れる収入なので特定財源でしたよね。

その通り。でも、臨財債は?

-え? 一般財源・・・ですか?

臨財債は一般財源。だって、もとはと言えば、一般財源である地方交付税の財源不足を補ってるだけやから。これも臨財債の特殊なところ。決算カードの歳入欄で地方債の項目の下に「うち臨時財政対策債」って、わざわざ内訳が載ってるのは、こういう意味があってのことやねんな。

決算カード

-細かい!

そう。細かいねん。そんなん分かるかい!って感じやんな。でも、ここまで話をしたら、めっちゃ重要やってことは分かると思うけど、どやろか?

-重要なのは分かりました。覚えてるかどうか怪しいですけど。。。

それはしゃーないな。財政実務をやってへんとイメージしにくいしな。でも、臨財債は地方財政を理解する上では必須の知識やし、行政職員なら、そんなけったいな制度があることぐらいは知っておいてもええんとちゃうかな。

-はい。

で、この臨財債の収入が一般財源であることが、これまた不思議な現象を生んだりしてな。

◆経常収支比率と臨財債の不思議な関係

-不思議な現象って何ですか?

臨財債を借りると、経常収支比率がよくなる。

-え?

経常収支比率って何やった?

-えーと、財政の硬直性を示す指標でした。

すばらしい。率が高ければ高いほど、財政が硬直していることを示す財政指標やったやんな。

経常収支比率

経常収支比率の分母は、経常収入のうちの一般財源分(「経常一般財源」)で地方交付税は分母に含まれる。当然、臨財債の借入れ分も地方交付税と同じ扱いやから、分母に含められることになる。そうすると分母が大きくなって、率全体は小さくなる。というわけで、臨財債を借りると、経常収支比率はよくなる。

-・・・。

絶句するわな。でも、そういうもんやねん。あ、一応補足しとくけど、臨時財政対策債やけど、経常一般財源やしな。

-あ、気付きませんでしたけど、なんでなんですか?

臨時財政対策債の「臨時」っていうのは、経常/臨時の意味の「臨時」ではなくて、一時的な制度っていう意味での「臨時」やねん。もう一回条文を見てもらったら分かるけど「令和二年度から令和四年度までの間における地方債の特例等」って書いたるやろ?

-え? 令和2年度からの制度なんですか?

ちゃうねん。これ、臨財債って平成13年度からの制度で「臨時」って言って始まった制度なんやけど、その「臨時」がズルズルと今も続いてるってことやねん。

-そうなんですね。

◆将来負担支比率と臨財債の不思議な関係

で、話を戻すと、臨財債を借り入れるとと経常収支比率がよくなるという話やったけど、臨財債の借り入れは財政負担を後年度に送っていることを意味しているにも関わらず、将来負担比率は基本的には影響しなかったりもするという、これまた不思議な話もあんねん。

-え?

将来負担比率の計算式、眠くなるけどもう一回見てみてくれる?

スライド10

臨財債を借り入れたら、当然、将来負担額Pが増える。でも、100%交付税バックがあるから、式で言うと地方債現在高等に係る基準財政需要額算入見込額Sも同額分が増となる。結果、分子はプラスマイナスゼロ。で、将来負担比率は変わらない、となるわけやな。

-・・・。

また絶句しとるやん。まあ、気持ちは分かる。ウソみたいな本当の話。怪しげやろう?

-怪しさしか感じません。

でも、多くの自治体がこの臨財債の借り入れを行っているということは事実としてあるし、一概にダメダメな制度と言い切るのも早計かな、とも思うねんな。せやから、賛否両論の臨財債制度で、賛成か反対かと言われても正直分からん、って答えてまうねんな。

-なるほど。いやー、ほんと難しいですね。

かなりマニアックな話やったけど、財政課職員じゃなかったら完璧に覚えておく必要はないと思うわ。まあ、財政指標とか、臨財債とか、財政の世界って奥深いな~ぐらい感じてもらえれば、それでええんとちゃうかな。

-分かりました。ありがとうございます。

全然ええよ。

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