地方財政あるある#6．とりあえず円グラフにしがち（予算まとめ）

あー、腹減った。

－先輩。どこ行くんですか？

メシ。マクドかな。

－ご一緒していいですか。前の話の続きをお聞きしたいんで。

おお、ええよ。

（マクドにて）

あ。前の話の続きってことやったけど、何やったっけ？

－なんか大切なことを言うのを忘れてたとか。

ああ、思い出した。せやったな。予算についての大事なこと。とりあえず２つのことを抑えておいてほしいのよ。ちなみに、円グラフ持ってる？

－一応、持ってきました。

さすがやね。やる気やねぇ。

◆収入の範囲でなければ支出できない

収入と支出、正確には歳入と歳出、これを見比べて気付くこと無い？

－えー、金額が同じとか？

そう。そこ重要。

－え？

歳入予算って、収入の見込みのことやったやんね。で、歳出予算は使い方の予定。ということは、当然「歳入予算＜歳出予算」になるとおかしいことになるよね。

－はい。

裏返して言うと、収入の範囲でなければ支出できないという、ごくごく当たり前のことがここで示されているというわけ。

－はあ。当たり前ですね。

あたりまえ体操～♪

－・・・。

ただ、原課にいると、このことを忘れがちになるんよね。目の前にいる市民さんに対してよりよいサービスを提供しようとするあまり「もっと予算が欲しい」という発想が強くなりがち。でも、あまり歳入のことを意識しないから、結果、予算要求の場面では歳出の要求が膨れ上がって「歳入予算要求額＜歳出予算要求額」となってまう。で、どうなるかと言うと…

－どうなるんですか？

財政課が忙しくなる。

－ああ。

前にも同じことを言ったけど、無い袖は振れへん。で、財政課が何をするかと言うと、無駄がないか、費用対効果的にどうか、他にもっといい手段はないか、本当にこのタイミングでやらないといけないのか、政策的な優先順位はどうか、議会で説明がつくような内容なのか、、、とかとか、いろんなことを考えて、歳出を切り詰めて、なんとか見込める収入の枠内に収めようとする。ここに膨大なエネルギーが投入されてるというのが現状なんやね。

－なるほど。

あまり最初から財政課が口うるさく言い過ぎると、原課で新しいアイデアがあったとしても予算が付かないから…と言って、アイデアを出さなくなってしまうのも困るから難しいところなんやけど。

◆予算は議会が承認しないと使えない

あと、もう１つ。地方自治法で大事な条文があってな。

（予算の調製及び議決）
第二百十一条　普通地方公共団体の長は、毎会計年度予算を調製し、年度開始前に、議会の議決を経なければならない。

予算は議会が承認しないと使えない。住民を代表する議会で認められたお金の使い方でしかお金は使えへんし、その金額も決められているということやねんな。

－これも当たり前ですねえ。

せやねん。当たり前やねん。さっき、原課は目の前にいる市民さんに対してよりよいサービスを提供しようとするって言ったけど、その市民さん以外に多くの市民さんがいるということもまた、ちょっと忘れがちなんじゃないかなと思うことがあってな。

－と、おっしゃいますと？

たとえば、「商工業支援にもっと予算を！」という場合、そのことが他の行政サービス、たとえば福祉だったり農業支援を抑えることになるという発想を持っていますか？という話やね。議会は市民さんの代表やから、いろいろな観点から「ツッコミ」が入る。「商工業支援の前に福祉の充実を！」と言われることも当然予想されるわけで。それでもなお、商工業支援をしないといけないのか、その理由や必然性はどこにあるのか、そこまでの論理立てができているのか。

－はあ。

予算要求に対して財政課がいろいろ原課に質問する理由はここにあんねんな。

－でも、それを言い出すと、原課の方も何も言えなくなりませんか？

まあ、そうやな。財政課が言い過ぎると原課が委縮しちゃう、というさっきの話に通ずるところやね。ただ、そういう論理立てをしっかりする前に「財政課が予算を切った」とか言われるのは心外やね。あ、商工業支援の話は例で言ってるだけで、特定の部署のことをどうこう言ってるわけじゃないから、勘違いせんといてな。

－分かりました。

あと、たまに予算は自由に使えるお金と勘違いしている人がいてるけど、違うねんな。たとえば、何か、そうやな、学校の空調設備の更新に100万円の予算があったとして、入札したら80万円で済んだ。そのときの20万円を余ったから別のことに使いたいと言ってくる人がいるけど、それはおかしいといことは分かってくれるよね。

－はい。議会を通じて、使い方が決められているということでしたから。

そう。それをＯＫにしてしまうと、何でもありになってまうしな。モラルハザードというか財政規律の崩壊というか。

－そうですね。

というわけで、言いたかったのは以上２点。①収入の範囲でなければ支出できない、②予算は議会が承認しないと使えない。当たり前すぎて忘れがちやけど、めっちゃ重要。

あ、言うてる間に、昼休み終わりそうやん。

－ほんとですね。急ぎましょう。

はよポテト食べてしまお。