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地方財政あるある#28.予算きりがち(予算編成2)

あー、疲れた。

-お疲れさまです。

おう、お疲れ。

-なんか、めっちゃ疲れてらっしゃいません?

とりあえず予算要求書がチラホラ提出されてきたから、チェックし始めててん。

-前に仰ってたやつですね。めっちゃいろんな角度から要求書を見るっていう。

せやねん。

◆一件査定と枠配分予算

予算項目一つひとつ、前に言ったようなことを確認していかなあかんねん。

-財政課って大変ですね~。

せやろ~。大変やねん。ってゆーか、無理。

-はは(笑)

笑うてるけど、まじでムリやで、ほんま。優先順位付けして予算配分するって言ってるけど、そもそも財政課に優先順位なんて付けられると思う? 前に「現場のこと知らんのに、どうやって査定してるん?」って言われたらイラっとするって言ったけど、「現場のこと分かってるんやったら、そっちで上限決めてちゃんと予算配分しろよ!」って言いたくなるもん。

-それも一理ありますね。

ってことで、「枠配分予算」っていう考え方が出てくるわけよ。

-枠配分予算、ですか。

そう。前からやってる一つひとつの予算項目について、要る要らんを判断していくやり方のことを一件査定って言うんやけど。

-はい。

その一件査定の、ある意味アンチテーゼみたいなもんで。枠配分予算っていうのは、要は各部局に「おたくは○○円の枠内で予算組んでね!」って言ってしまって、部局内で予算配分をしてもらうという考え方やね。さっき言った「現場のこと分かってるんやったら、そっちで上限決めてちゃんと予算配分しろよ!」ってのをまさに具現化した予算編成の手法やね。

-たしかにその方が合理的ですよね。

せやろー。けどな、なかなか導入に踏み切れなかったりすんねんな。

-そうなんですか? なんでなんですか?

まずそもそも、その「枠」をどうやって決めるかというところが第一のハードル。

-たしかに。枠を決める時点で、いろいろ揉めそう。。。

せやろ? あと、財政課が気にするのは、予算を枠内でおさめたとしても執行段階で「足りません」と言われること。後で足りなくなるのが分かってるのに、予算編成時は費用を小さめに見積もっておくみたいなことをされると、枠配分予算の趣旨が骨抜きにされてまうってことやな。

-あ~。それもあり得そうですね。

逆に「枠に収められません」って言って、事業課が開き直るということも考えられるし。「こんな予算でできるわけないやろ!」って。

-まあ、想像できますね。

気持ちは分からなくはないで。でも、100万回言ってきたように財源は有限やし、「そんなに金あるわけないやろ!」って言い返すことになるだけやねんけどな。枠配分予算の意味を事業課のちゃんと理解してもらえるかどうか、ここが財政課の不安材料。

ということで、財政課は「細かいところまで“監視”せんとあかんわ!」という発想にいたる。言葉悪いけど。

-難しいですね。

要は、これまでの財政課は事業課への不信の上に成り立ったっとったわけやね。

-ははは(汗)

まぁ、極論やけどな。そら、予算要求の段階から何の工夫もなく「とりあえず多めに要求する」ってことが常態化してたら、そりゃ信じられんくもなるで。伝票チェックしてても「これホンマに要る?」って思うこともあるもん。

-そう言われれば、そうかもしれませんが。

でも、そういうふうに見ている限り、財政課の忙しさは減らんと思うねんな。事業課を子ども扱いしてるようなもんで、いつまで経っても自立でけへんって感じ。枠配分予算の目指すところは、各部局の自律経営。一定任せるということせんと、いつまで経っても事業課が自律的に予算をコントロールしようという気にもならへん。で、そういう機会、訓練の場がないから自律経営のスキルとかノウハウもたまらへん。

-そうですね。

でも、やっぱり財政課は、自身の目の届かないところでお金がコントロールされることの危惧感を払拭でけへん。「変なお金の使い方をされるんとちゃうやろか?」って。ここを思い切れるかどうかってことちゃうかな。

-なんか、巡り巡ってますね。ニワトリ・たまごの関係と言うか。

せやな。

◆忘れがちなこと:財政課の説明責任

ってことで、財政課(要は予算査定する側)からは、散々、事業課に対していろんなことを求めてきた訳やけど、この話、そのまま財政課にブーメランで返ってくるってことを財政課としては認識しておかんとあかんと思うねん。

-と仰いますと?

要は、財政課の説明責任やな。

-財政課の説明責任。

まず、今まで言ってきた内容を財政課がちゃんと事業課に伝えてますか、ってこと。オレが事業課で予算要求側にいたとき、こんな説明を受けた記憶がない。説明会とか説明資料はあんねんで。でも、難しい言葉が並んでてな。「ちょっと何言ってっかよく分かんない」。

-(富澤、2回目・・・)

で、結局、よく分からないまま予算要求事務は前年度を踏襲。で、財政課側は「こんな予算要求書じゃ査定でけへんわ、ちゃんと説明せぇや!」とか思いながら、深夜まで残業する、、、って、そらそやろ。何をしとんねん、と。

-たしかに。

あともう1つ。要求に対して認められなかった場合、財政課はその理由を正直に説明していますか、ってこと。

-どこかで聞いたことがあったような・・・。

財政課も、そういうことをしっかり説明せんとあかんのやけどな。オレも財政課に異動する前に予算要求する立場も経験したけど、理由も示されず「認められません」と言われて愕然としたこともあるし。今考えても、なんで要求が通らなかったかも分からんし、誰がどう見ても必要な予算で、市民さん100人に対して100人全員に「それは必要だよね」と言ってもらえそうな内容やったんやけどな。あの時はモチベーションだだ下がりやったわ。

そっか。前にも同じことを言ってたか。

-そうみたいです。

ここをすっ飛ばすから、「予算切られた」って言われてまうねん。

-なるほど。

歳出予算要求額が歳入の見積額より大きい以上は、予算要求を「切る」ことはせなあかん。じゃあ何を「切る」かって言うと、その要求が本当に必要な予算だということを部長、市長、議会、市民さんに説明でけへんものを「切る」わけで。

-はい。

事業課としては、なんでその必要性が感じられなかったかを説明してほしいよな。もっと言うと「じゃあ最初からその視点を言っといてくれよ!」ってなるわな。

-そうですね。

もちろん、必要性は認めながらも、財源がないから予算を付けられない場合もあるけど、それはそれで説明してほしいよな。結局、財政課の説明不足が事業課の財政課に対する不信感につながってるんとちゃうかなあ、って思うねん。

-たしかに。

というわけで、事業課と財政課がお互いに不信感を抱いてて、結果、予算査定に膨大な時間と労力を割くことになってるという。ほんま、何やっとんねんって感じやね。

あ、ちょっとヒートアップしてもうたな。ま、何が言いたかったかと言うと、財政課がいろいろ事業課にヒアリングするのは、その必要性を見極めて、その必要性が上位者や市民さんに胸を張って「必要です」と言えるまでに確度を高めるためで、決して予算を「切る」ことありきではないということやね。せやから、事業課にはしっかりと検討をして、その経緯と結果を予算要求で示してほしい。で、そういうことを財政課は積極的に説明することが大事ってことかな。

-熱がこもってますね。

あ、そう? とにかく、この忙しい財政課を何とかしたいねんな。そのためには、まず財政課が財政課の思いをちゃんと事業課に伝えることから始めなあかんと思うてな。

-なんか、かっこいいっすね。

知ってる。溢れ出るオレのかっこよさ。

-・・・。

あ、そろそろ行くわ。

-あ、すみません。お時間とってしまって。

全然ええよ。

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