見出し画像

地方財政あるある#7.いつも財政が厳しいと言いがち(その1)

やば。給料日前、昼飯代が厳しくなってきた。カップ麺ですませるか。

-先輩、カップ麺ですか。

せやねん。カネ無いねん。

-ボク、弁当なんで、会議室で一緒にどうですか。ついでにと言ってはなんですが、聞きたいことがあるんで。

全然ええよ。

(会議室にて)

やっぱりUFOはうまいな。

-すごいにおいですね。

せやな。事務室で食ってたら、よく言われるわ。で、聞きたいことって?

-はい。前から「無い袖は振れない」とかおっしゃてて、あとよく「厳しい財政状況」と聞くんですが、正直ピンときてなくて。

なるほど。結論、これを読んでくれい。

画像1

https://shop.gyosei.jp/products/detail/9885

-こんな本があったんですね。

せやねん。読みやすいで。「財政の入門書ではありません」と書かれてるけど、十分、入門書やし。前に言った予算の大事なポイント2つ「収入の範囲でなければ支出できない」「予算は議会が承認しないと使えない」というのは、ここからパクった話やし。

-そうだったんですね。

と言って話を終わらすのもなんやし、今日もその本から話をしようか。文字通り「“財政が厳しい”ってどういうこと?」の話。

-ぜひお願いします。

超ざっくりまとめると、「財政が厳しい」というのは、自由に使えるお金が少なくなっているということ。で、その原因は大きく2つの要素があるということかな。

◆歳出は減らせないけど、税収が劇的に伸びることはない

義務的経費って覚えてる?

-はい、人件費、扶助費、公債費。

正解。よく覚えてたねー。で、義務的経費って、減らせるんだっけ?

-基本的には減らせないとおっしゃってましたよね。

そう。人件費は採用人数を抑えるとか多少の工夫はできるかもしれんけど、まぁ基本的には減らせんわな。義務的経費も含めて、経常的にかかる経費というのは減らしにくいし、扶助費なんかは高齢化で、むしろ今後増えていくし。なわけで、歳出は増えていく。

一方、歳入の今後の見通し。どう思う?

-減っていきますよね。

そう。高齢化は生産人口の減少を意味していて、つまり税金を払ってくれる人の数が減るということだから、税収は減っていく。

歳出は増える、歳入は減る、結果は?

-厳しいです。

そう、厳しいねん。ここら辺はイメージ通りやと思うし、実際、いつも見ていた円グラフの経年変化を見れば、なんとなく想像ができるんとちゃうかな。

スライド6

義務的でない経費は、自治体独自の政策推進のために使われる経費という意味で政策的経費と言ったりするけど、用語自体はそこまで意識しなくてもええかな。

あと、自由に使えるお金が多いか少ないか、小難しく言うと財政が硬直しているかどうか、その代表的な指標に経常収支比率というのがあるけど、今は深く立ち入らんことにするわ。

◆公共施設の老朽化という“隠れ負債”

あと、円グラフで見て取れない要素があんねん。何やと思う?

-全く思い付かないですね。

ほな、聞くわ。ウチの庁舎、めっちゃボロくない?

-めっちゃボロいですね。

築50年は経ってるしな。これ、いつまで使えると思う?

-築50年だったら、そろそろ限界なんじゃないですか。

せやな。大規模修繕か建て替えせんとあかんやろな。で、修繕するにもカネかかるし、建て替えようもんなら莫大なカネがかかる。庁舎に限らず、自治体が抱える公共施設、たとえば学校、保育園、図書館、公民館とかとか、どんな状況?

-分かりませんが、全体的に古い印象があります。

そう。今、ボロくなった公共施設の維持管理費、たとえばトイレが詰まったとか空調が壊れたとか、あるいは外壁にひびが入って危ないとか、そういうことにけっこうなカネがかかってて、今後、こいつらの維持管理の費用やら建て替えの費用が重くのしかかってくるという事情があんねんな。公共施設以外にも道路やら橋やら、インフラコストが重くなってくる。ここら辺のことは円グラフを見ても分からへん。

-たしかに。

そういう意味で、オレは公共施設の老朽化対応経費のことを“隠れ負債”と言ったりしてんねんな。

スライド7

「公共施設マネジメント」っていう言葉が流行ってるけど、なんで流行っているかというと、こういう事情があってのことやねんな。もちろん、財政面の話だけではなくて、少子高齢化社会で今ある公共施設全てをそのまま維持する必要があるか、という必要性というか機能面の話もあるけどな。

というわけで、①義務的経費は減らせないけど、税収が劇的に伸びることはない、②公共施設の老朽化という“隠れ負債”の存在、この2つの背景から「自治体が自由に使えるお金が少なくなりつつある」という話。これが「財政が厳しい」の正体やと思ってもらって構へんと思うわ。

厳密に言うと、前に言った「一般財源」とかを持ち出して説明せんとあかんのやけど、総論としてはこれぐらいでええんちゃうかな。

-なるほど、よく分かりました。ただ、分からないんですが。

どこらへんが?

-自分の自治体が「どれぐらい厳しい」のかがイメージ湧かないんですけど。めっちゃヤバいのか、まだマシな方なのか、みたいな。

あー、難しいこと聞くね。それを説明しようとするとかなり長くなるから、また改めてにさせてくれる?

-分かりました。ちなみに、先輩も財政、厳しそうですね。

え?

-カネが無くてカップ麺にされてるじゃないですか。

ああ、確かに。でも、財政は厳しくないで。

-え?

金回り、資金繰りが厳しくなっているだけ。

-資金繰りが厳しいのと財政が厳しいのと違うんですか?

厳密に言うと違うもんやと思ってる。行政の仕組みの話で言うと、資金繰りのやりくりは会計課の仕事。財政課と会計課、ごっちゃになるよな。また、そこら辺の話しよか。

-ぜひお願いします。

全然ええよ。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?