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地方財政あるある#27.予算切りがち(予算編成1)

あー、いややわ。

-お疲れさまです。

おう、お疲れ。

-なんか、めっちゃ疲れてらっしゃいません?

もうめんどくさいねん、「現場のこと知らんのに、どうやって査定してるん?」っていう質問。正直、ちょっとイラっとすんねん。

-イラっとします?

オレはね。「現場のこと知らんのに」って言うけど、その現場の部署以外の人間が現場のことを「知ってる」わけないし。

-まあ、そうですけど。

だからこそ、知らない人に対して知ってもらって、理解してもらえるような工夫とかしてますか?って逆に聞きたくなるわけよ。そう言えば、どんな視点で予算査定、予算編成を進めているか、具体的に知りたいって言ってたっけ。

-はい。

ほな、せっかくやしその話しよか。

-お時間、大丈夫ですか?

ま、気分転換やな。

◆財政課は何を気にしているのか

理解してもらえる予算要求の話に入る前に、まず大前提として絶対抑えおいてほしいことがあんねんけど。何やと思う?

-法律とかですか?

せやな。法令上の定めでやっているってことは説明してもらえると助かるな。義務付けられてるものはむやみに予算を削るわけにはいかんしな。でも、他にもあんねん。忘れたらあかんけど、忘れられがちなやつ。

-何でしょう?

何やと思う?

-・・・。

パッと思い浮かばんかぁ。ざんねーん!

-なつかしー!

不要な予算、切り~っ!

-ちょっとうまいですやん。

ありがと。で、話を戻すと、イの一番に思い浮かべてほしいのは、総合計画。

-あ~。それはそうですね。たしかに忘れられがちかも。

総合計画に掲げる将来の自治体のありたい姿を実現するために、何をどうやっているのか、という視点やね。

-はい。

と言っても、行政の仕事は経常的なやつも多いやんな。基本的に去年と同じ、っていうやつ。そういう場合は、少なくともこれぐらいは意識してほしいかな。

①効果性、費用対効果(もっと他にいい方法はないか)
②義務的であるか(法的義務だったら根拠法令を示すこと)
③過大でないこと(昨年度からの増要因を示すこと)
④制度変更等の場合は、その趣旨と新旧比較

特に3つ目は重要やね。「単価とか数量が変わったから」では説明としては不十分で、「なぜ単価とか数量が変わったか」を説明してほしいな。

-なるほど。

それ以上に、やっぱり新しいことを始めたいというときは、丁寧な説明が要るわな。

①そもそもなぜ必要なのか…そのことを始めようと思った経緯とか。

②他にいいやり方はないのか…他の手段との比較検討の結果。これがないと、後で財政課がヒアリングで「他に○○というやり方じゃあかんの?」って確認することになるので、お互いにとってめっちゃ面倒。

③なぜこのタイミングなのか…次年度ではダメなのか。逆に、今すぐにでも始めないといけないということはないのか。

④実現可能性は担保されているか…言い換えれば「年度内執行は可能か」。先行き不透明なものについて予算は付けられないのが原則(執行できなかったら、後々その理由を説明する必要が出てくるので、事業課としても面倒なことになる)。スケジュールを示すことは必須。特に関係者合意等が必要な場合は、現状や期限も含めて見通しを示すことが大事。

⑤財源は確保できるのか…何回も言っていること。リソースは有限。財源が見込めない場合は、かわりに何をスクラップ(事業再編)するのかを示すこと。

⑥過度な後年度負担につながらないか…後年度負担は後々に新しいことができなくなることにつながる。後の世代の首を絞めることにならないかという感覚を持つこと。

-盛りだくさんですね。

せやな。現場も忙しいやろし、そこまで説明を求めるのも恐縮する部分もあるけど、やっぱり市民さんからお預かりした税金の使い方を決めるには、それ相応の議論が必要と言うしかないわな。自分のお金の使い方として許せるかどうかって考えたら、これぐらいのことは検討するやろ?

-はい。

よく「どうやったら予算がつくねん」って聞かれることがあるけど、これ全部説明してもらっても、「必ず予算がつきます」とは口が裂けても言えへんのが、財政課としてはツラいところやねんけどな。理由はわかるやんな?

-何度も仰ってる「リソースは有限」ということですよね。

そう。これだけ説明を尽くしてもらっても財源に限りがある以上、必ずしも予算配分できるとは限らへん。でも、これぐらいの説明が無ければ、予算配分すべきかどうかの検討、判断がでけへん、ってことやな。

◆忘れがちなこと:行政職員の義務

っちゅうことで、財政課は煙たがられる。

-複雑ですね。

そう思ってもらえると嬉しいわ。ただ、財政課があれこれ考えてるように見えるけど、そもそもこういうことは行政職員全員が考えるべき法的義務があんねんで。

-法的義務ですか?

そう。あまりに有名な地方自治法第2条第14項

地方公共団体は、その事務を処理するに当つては、住民の福祉の増進に努めるとともに、最少の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならない

あと、同じような趣旨で地方財政法第4条というのもあるな。

地方公共団体の経費は、その目的を達成するための必要且つ最少の限度をこえて、これを支出してはならない。

「最少の経費で最大の効果」というのは、どこかで聞いたことがある気がします。

せやろ。新人研修とかで絶対触れられてると思うけど、どうなんかな。

-そうだったかもしれません。

と、ここまでは基本的な話で、もう少し続きがあるんやけど、今日のところはこの辺にさせてくれる。

-はい。いつもお忙しいところありがとうございます。

全然ええよ。

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