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地方財政あるある#18.地方交付税を頼りにしがち(地方交付税1)

-先輩。また教えていただきたいことが出てきまして。変な質問なんですけど。

ん? どした?

-地方交付税って、「税」なんですか?

おっ。目の付け所がいいねぇ。水木一郎が喜びそうやね。

-???

マジンガー、税ーッ!

-へ? 水木一郎って誰なんですか?

知らん?

-知らないです。

そ、そうか。世代が違うんやな。。。

◆なぜ国からお金が回ってくるのか?

で、何やったっけ?

-地方交付税は「税」なのか、という質問なんですけど。

そやったそやった。その答えに入る前に確認やけど、地方交付税は誰からもらうもの?

-国ですよね?

そう。国からもらえる。じゃあ、なんでもらえんの?

-えーっと。たしか自治体間の財政格差を小さくするためのものでしたよね?

そのとおり。

-だいぶ前ですけど、ちらっと仰っていたのが記憶に残ってました。

地方交付税を正確に説明するのは実はめっちゃ難しいんやけど、ざっくり言うと地方自治体の財政格差を小さくするために、国から配分されるお金のこと。補助金と違って、使い道は自由というのがポイントやね。専門用語でいうと補助金は特定財源、地方交付税は一般財源

ほんまやね。よく覚えてんなぁ。地方交付税制度って「財政調整機能」が目的って言われててな。

-財政調整機能。

そう。もう少し詳しく言うと、①地方自治体の財政力格差を解消する「財源調整機能」と、②各自治体が一定水準の行政サービスを提供するために必要な財源を国が保障する「財源保障機能」があると説明されるんやわ。せやから、地方交付税は使途は限定されない、つまりは一般財源ってことになるわけやね。

◆そもそも地方交付税とはいったい何なのか?

で、地方交付税は「税」なのか、という話。そもそも、地方交付税は国からもらってるわけやけど、国から見たときに各自治体に交付する地方交付税の財源って何?

-普通に考えたら、国が集める税金ですよね。

正解。詳しく言うと、所得税、法人税、酒税、消費税、たばこ税の一定割合と、地方法人税の全額やね。せやから、国税の一部やねんけど、これって一体だれのもの?

-誰のものって、どういう意味ですか? 国税なので国のものではないんですか?

と、思うやろ? 違うねん。これって地方のものやねん。

-え?

小泉純一郎が言い出してん。

“地方交付税改革の中で交付税の性格についてはという話ですが、地方交付税は、国税五税の一定割合が地方団体に法律上当然帰属するという意味において、地方の固有財源であると考えます。”(平成17年2月15日 衆議院本会議における答弁)

ま、実務上、全然意識するところとちゃうけどな。ってことで、地方交付税は「税」なのかという質問に対する答えは「自治体の歳入から見れば地方税ではないので税ではない。しかし、財源は国税。ただし、それは地方の固有財源。」ってな感じかな。

-なるほど・・・。

◆ほとんどの自治体は地方交付税頼み?

ところで、地方交付税が地方自治体の財政力格差を解消する「財源調整機能」を有してるってことは、財政力が強い自治体には地方交付税は配分されないってことは分かるやんな?

-はい。

地方交付税は配分されない自治体のことを不交付団体って言うんやけど、じゃあ、全国1,700近くの自治体のうち、不交付団体ってどれぐらいあると思う?

-全然、見当つかないですね。

令和2年度は76団体。東京都+75市町村やね。全国の自治体数はざっくり1,700程度やから、不交付団体は20団体のうち1団体。ということは、20団体のうち19団体は財政力が強くないということで、地方交付税をもらっていることになるわな。

総務省資料→https://www.soumu.go.jp/main_content/000700624.pdf

-そうですね。ほとんどの自治体と言ってもいいですね。都道府県にいたっては東京都以外の全部ですもんね。

そう。東京都は不交付団体やけど、不交付団体は都市部とは限らないというところは制度の妙やねぇ。一覧を見たら、どんなところが不交付団体になってるのか、なんとなく分かるよね?

-はい。なんとなく。

◆財政力指数

ちなみに財政力が強いとか弱いとか言ってるけど、地方交付税が配分されるかどうかの基準、気にならへん?

-気になります。

やんなぁ。定義としては、財政力指数が1.0を上回れば不交付団体

-財政力指数。

そう。財政力指数=基準財政収入額÷基準財政需要額。

-はぁ。

言い換えれば、基準財政需要額が基準財政収入額をこえる自治体に、普通交付税が交付されるってことやね。

と言われても、全然わからへんやんなあ。

-はい。全然わかりません。

一応、定義は地方交付税法第2条に規定してあんねんけどな。

三 基準財政需要額 各地方団体の財政需要を合理的に測定するために、当該地方団体について第十一条の規定により算定した額をいう。
四 基準財政収入額 各地方団体の財政力を合理的に測定するために、当該地方団体について第十四条の規定により算定した額をいう。

でも、この11条とか14条を追っかけていくと間違いなく戦意喪失するから、深く考えんと、とりあえず「基準となる財政需要額」「基準となる財政収入額」と抑えておいてもらってええかな。

-はい。

◆普通交付税と特別交付税

-ところで、聞き間違いかもしれないんですけど。

何?

-「普通」交付税って仰いました?

言ったよ。

-突然、「普通」交付税って言葉が出てきて、「何?」と思ったんですけど。

鋭いねぇ。地方交付税には種類があって、普通交付税っていうのと特別交付税っていうのがあってな。で、今まで喋ってた内容は基本的には普通交付税の話やねん。

-何が普通で、何が特別なんですか?

普通交付税の方は今まで話したように、財源が不足すると考えられる団体に交付されるもの。一方、特別交付税の方は、普通交付税で捕捉されない特別の財政需要に対して交付されるもの。

-ちょっとピンと来ないんですが。

特別の財政需要の代表格は災害とか。除排雪なんてのもあるかな。超ざっくり言うと、臨時でかかる必要経費みたいなもんかな。とりあえず、それぐらいの理解でいいんとちゃうかな。

-分かりました。

ちなみに、そういうことなんで、普通交付税の不交付団体でも、特別交付税は交付されることがあるっていうのは豆知識。地方交付税の前提知識はこれぐらいかな。

-これで前提なんですか?

そう。地方交付税でよく誤解される、めっちゃ重要な話があんねんけどな。でも、ちょっと長くなったし、また日を改めさせてもらえる?

-分かりました。いつもありがとうございます。

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