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地方財政あるある#3.とりあえず円グラフにしがち(歳入予算1)

-先輩。財政のこと教えてほしいんですけど。

なんや、藪からスティックに。

-・・・。

・・・。

-えーと。正直、財政のことを勉強したいと思っても、どこから手を付けていいか分からなくて。

せやな。オレもそうやったわ。財政課に異動してきて、めちゃくちゃ苦労したわ。

-そうなんですか。

せやねん。で、正直、今も「これ!」というオススメの勉強法はあんまりイメージできてへんのやけど、まずは市民さんも目にする広報紙を眺めてみるところから始めてみよか。

まず、広報に載ってる財政情報って、どんなもんがある?

-予算とか決算ですかね。

そう。どっちから見たい?

-どっちからと言われましても。。。じゃあ、順番的に予算から。

了解。

宇治予算R1

これで何が分かるか。

-はい。

お金をどう使おうとしているかが分かる。

-そのままですやん。

そのままや。収入の円グラフはどんな収入がある見込みか、支出の円グラフは、どのような目的でお金を使う予定か。

-いや、それはそうなんですが、どう見たらいいのか、この円グラフをどう受け止めたらいいのか、うーん、何を感じとったらいいのかみたいな、そこら辺が分からないんですよ。

その分からん気持ち、分かるわぁ。一概に説明でけへんところもあるけど、思いつくままに言ってみよか。あ、その前に、グラフは収入、支出とあるけど、財政用語では歳入、歳出という表現が正確なんで、その言葉で話するようにするな。

-分かりました。

まず歳入予算から。グラフを見なくていいので、まず自治体の収入、じゃなかった歳入って、どんなものがある?

-税金。

そう。税収入があるな。「市税」やね。他には?

-国からもらうとか。

そう。補助金と言われるもの。円グラフでは「国庫支出金」。府からもらう場合は「府支出金」。他は?

-えーと。。。

答えを言うと、「地方交付税」というのがある。地方交付税を正確に説明するのは実はめっちゃ難しいんやけど、ざっくり言うと地方自治体の財政格差を小さくするために、国から配分されるお金のこと。補助金と違って、使い道は自由というのがポイントやね。専門用語でいうと補助金は特定財源、地方交付税は一般財源

-はい。

あとは借金もあるな。円グラフでは「市債」となってる。他、細かい所で言うと基金、まぁ貯金みたいなもんで、それを取りくずすというのもある。円グラフでは「その他」に含められてしまってるけど、正確には「繰入金」って言うねん。

というわけで、主な歳入はこんなところかな。①税収、②国・府交付金、③地方交付税、④市債、⑤繰入金(基金とりくずし)ぐらいを抑えれば、まずは十分。

で、たぶん気になるのは、それが多いのか少ないのか、妥当な金額かどうか、みたいなところやんな、たぶん。

-ええ。気になります。

でも、この円グラフをいくら眺めても答えは出てこーへんねん。

-えっ?

そのそれぞれの金額とか割合が大きい、小さいという場合、そもそもその大小の基準は何なのかという話で。

-近隣の自治体とか、規模が同程度の自治体とかは基準にならないんですか?

あまりならないと考えた方がええやろね。例えば同じ人口でも産業構造が違ったら状況は全然違うし。

一応、総務省が人口や産業構造で全国1,700あまりの自治体を35の類型に分類した類似団体というのもあるにはある。

https://www.soumu.go.jp/iken/zaisei/jyoukyou_shiryou/h22/setumei.html#ruiji

でも、一つの目安にはなるかもしれんけど、目安でしかないねんな。総務省も「あるべき姿ないしは理想図を示したものではないが、それだけに身近な尺度として利用できるはず」 と言ってるし。

自治体の収入の傾向というか特徴を把握するという意味では他の自治体との比較は意味があるかもしれへんけど、そこから金額とか割合の大小とかは判断できない、というのは大事かなと思うな。

-なるほど。

ただ、経年変化を見ることで、気付くことはあるかもしれんな。例年に比べて、極端な動きがある場合は、何か理由があるはずやし。財政課としてはまず、昨年度比は注意するかな。なんでそんな増減を見込むのか、その辺の説明は求められるしな。

とは言え、市債と繰入金はちょっと注意して見てもいいかもしれん。

-と言いますと?

①税収、②国庫・府交付金、③地方交付税は、基本的には自治体の意思に関係なく金額が決まると言っていい。税率を上げるとか、そういう特殊な場合は別にしてな。

ただ、④市債、⑤繰入金(基金とりくずし)は自治体の意思で大小を一定コントロールできる。要は、どれだけ借金するか、どれだけ貯金をとりくずすか、ということやし。

-たしかに。

じゃあ、どれぐらいまでなら借金しても大丈夫か、どれぐらいなら貯金を取りくずしても大丈夫なのか、その問いに対してバチっと答えるのは相当難しい。でも、今どれぐらいの借金があるのか、今どれぐらい基金があるのか、そこと予算額を比べると感じるところはあるかもしれへんな。予算上、基金のとりくずしを5億円としていても、基金が20億あるところと6億しかないところではインパクトが違う。

-たしかに。

ただ、今どれぐらいの借金があるのか、今どれぐらい基金があるのか、これは円グラフでは分からへんねんな、これが。家計簿を見ても、今、どれぐらいローンが残っていて、どれぐらい貯金があるのかが分からんのと同じ理屈。

-たしかに。

せやろ。というわけで、円グラフをいくら眺めてもそれぞれの金額とか割合が大きいとか小さいとかは分からない、というか答えが出ないというのは分かってくれた?

-分かりました。けど、じゃあ、何のために広報に出してるの?という気もしますが。

そこを突かれると正直ツラい。繰り返しになるけど、歳入の多くは自治体の意思で金額を決定できない部分が多いし、「これぐらいを見込んでいます。変なところはないでしょ?」というぐらいにならざるを得ないのかな、と。

でもな。歳出、つまり支出は自治体の意思を如実に反映するところやから、注目やな。

-歳出予算ですね。

そう。あ、でもその前に、せっかくやし、基本的な財政知識についてちょっと触れとこか。でも、ちょっと長くなったし、今日はこれぐらいにしとこか。

-あ、長時間すいません。

全然ええよ。ほな。

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