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Covid-19がもたらすウミガメ保全の次の展開

フィリピンのアポ島でのウミガメの保全に関する記事が紹介されていた。この取り組みの素敵なところは、ウミガメの生態学的価値を上から押し付けることなく、地域の住民の方々と話し合いを重ねて、地域の理解を得た上でウミガメの保全が進められているところです。

“科学の有用性を人々に理解してもらうのではなく、まず科学を理解してもらい、その上で人々を納得させる。アポでは、シリマン大学の研究者が、保護区を設立する前に、まず人々を組織化しました“

科学の有用性ではなく、科学を理解してもらう。これを現場で自分がやるとすると、
科学を理解してもらうとき、科学をある出来事(や対象)を客観的な方法で系統的に研究すること、だとすると、プラスチックゴミがどの程度ウミガメの採食行動に影響しているか、温暖化が海の資源量の変化とどう関係しているか、を話すことになるでしょう。
科学の有用性を理解してもらうときは、科学によってこんなことがわかってきたんだ、とか、今の状況を改善する方法にこういった技術がある、とかそんなことを話すようになるでしょう。
これ、前者の「科学を理解してもらう」というのは、事実を伝え、そこから何を考えるかは、話を聞いた人に委ねられている、ということなんですかね。

500〜600もの漁業従事者を集めて、ウミガメの生態やこの海の状況について説いて、みんなで管理する方法を考えるというプロセスは、本当に大変なことだと思います。

漁業者にウミガメのサンクチュアリを設置するようプレゼンすると、漁獲量の高くないエリアにサンクチュアリを設置してはどうか、と提案され、研究者もそれに従った、とあります。漁業者たちが禁漁区を設置を認める代わりにその場所は保全研究者が妥協する、この部分がとても大事ですが、あまり実現されないことです。最も保全すべきエリアを優先し、地域の経済はそっちのけ、という強引な仕切りを何度もみたことがあります。住民の生活を勘案せずに保全区が設置されるより、ある程度双方が妥協した部分で取り組んでみるというこの解が、とても素敵だと思います。こういう姿勢で私も保全管理に臨みたいです。

上述した保全プロセスを経て、地域の漁業者は、漁業で得られる利益と、ウミガメを保全することで得られる利益とを天秤にかけ、ウミガメを守る方向にシフトした。しかしながら、コロナによる環境客の減少が、サンクチュアリの存続を困難にしているという。

そういった場合でも、一度地域がエンパワメントできていれば、大きく揺らぐことはないでしょう。問題が生じたら、それに対してどうしたらいいか、これまでの思考を続ければいいのだから。国がただある生き物を保全するために保護区を設置するとなると、問題が生じたら国がどうするか(お金を出すか、出さないか)を決めることになります。ですが、その生き物をそばで見ているのは地域の方々です。やはり、最もそばで見ている人たちが味方になってくれることほど、頼りになるものはありません。

生き物を保全するための地域ベースの取り組みは、じっくりと時間をかけて強い根を張りちょっとやそっとでは倒れないようにすることが、支援する研究者の役目だと、改めて実感しました。

コロナが落ち着いたらぜひアポ島に一度訪問してみたいな。

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