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卒業に寄せて

先日、国際基督教大学を卒業しました。休学期間を入れて5年間、私は高校もICUなので都合8年間という長い時間をこの学校で過ごしてきたので、つらつらと、振り返りのようなものを書いてみようかなと思います。

私は中学校まで長崎県に住んでいて、高校進学と同時に家族と一緒に上京してきました。上京した理由は私の進学のためということになっています。が、実は私には、自分から東京に行きたいと言った覚えがありません。地元の公立に進むものだと思っていましたが、母に「きよちゃんには長崎は狭いと思う!」としきりに言われてなんとなくその気になり、なんとなく東京の高校を受けることに決めました。というよりなりました、という感じでした。私の中では。母は東京に行きたかったのだと思います。

ICUを選んだのも、強い自分の意志があったわけではありませんでした。他人に聞かれた時は「色んな分野の授業を受けてから専攻を決められるのがいいと思って…」と説明していましたが、本当のこと言うと「母にすすめられてなんとなく」です。

ただそこに私の意志が全くなかったのかというとそんなことはなく、東京に行きたいか行きたくないかと聞かれたらそりゃ行きたいし、「きよちゃんにぴったりの学校がある」と言われて、高校や大学のサイトをのぞいたりパンフレットを見たりして「ほえー、よさそう」と思ってはいました。私は本当にやりたくないことに対しては全く体が動かないのですが、高校の受験勉強もけっこう頑張れました。

卒業式の2~3日前、大学内を散歩していて、「ああ、私はこの場所が好きだ」としみじみと思いました。そして中学2年生の時、一人でICU高校の文化祭を見に行って、敷地内を歩きながら「ここに通いたいなあ」と思ったその時の気持ちを、ちゃんと思い出しました。

高3の冬ごろ、母に「あなたはそんなに演劇をやりたいんだったら大学に行かなくていいのではないか」と急に言われて、長い長い言い争いになったことがありました。(今なら母の気持ちも分かるけれど、もうこの人を信じて何かを委ねることはやめようと思ったし、未だに色んなことを考えてしまう。これだけでもう一個noteが書けてしまいそうなので置いときます。)結局私は大学を卒業して、就職はせずに演劇をやろうとしているので彼女の言った通りになっているわけですが、そしたらやっぱり私は大学なんか行かない方がよかったのか?

「そんなことはない!」と私は確信を持って言えます。この5年間は私に必要な時間でした。私はこの大学に通えて本当によかった。

ああなんか、着地点を決めずに書いてきましたがこれが私が一番言いたかったことだと今思いました。

でも「あなたは大学でどんな学びを得ましたか?簡潔に述べてください。」みたいなこと聞かれるととっても困ってしまう!まあそれっぽいことは、聞かれたら言えるけど、それは本当の私の言葉ではない。

じゃあお前は大学でいったい何をしてきたんだい?と問われると、分からない…と言うしかないのですが、ただ、今の私には、これからの自分の人生が豊かなものであるだろうという謎の確信があり、そういう気持ちを持つことができているのは、この5年間のお陰である部分が大きいだろうと思っています。

私は、私が困難な状況にあっても自分が必要とするものを考えて選び取ることができると信じているし、感受性っていうんですか?よいものを見たら喜んで、よくないものを見たら怒ることができると信じています。こんな確かな気持ちは今だけかもしれないけれど。でもとにかく、ICUで過ごした時間が私にそういう感覚をくれたのだと思います。どういう風にとかなんでとか分かんないけど。

もう一個大事な収穫として、大学での時間を通して勉強って楽しいなと思えるようになりました。もともと私は学校が好きで、先生の話を聞くのが楽しくて発言や質問を積極的にする子どもだったのですが、高校に入ってからだんだんその気持ちを失い、高3になってからは完全に学校に行くモチベーションが切れ、ちょこちょこ授業をサボるようになっていました。多分母にはバレてて、それもあって演劇やるんだったら大学行くなとか言われたんでしょう。

さっき書いたその言い争いの中で、母に「私は勉強がしたいと思っているんだ」と言ったことをすごく覚えています。そのとき私は泣いてたと思います。正直その時期は学校に行くのが全く楽しくなくなってたので、そういう言葉が自分から出てきたのにびっくりしました。大学に入ってからも2年生くらいまではサボりがちだったので、「引き続き演劇をやりながら、安定した職に就けるような保険をかけとく逃げの選択肢のために適当な嘘ついちゃったんだな私は…このまま虚無人生を歩むのかな…」とちょこちょこ自己嫌悪に陥ってました。

休学したのは、他人に理由を聞かれたときは「オンライン授業が嫌で…」と説明していましたが、コロナは正直きっかけというか口実に過ぎなくて、そういう気持ちを感じながら大学に通うことに疲れてしまったからでした。演劇の予定もいっぱい決まりつつあってこんな状態では両立も難しいだろうとも思いました。

1年間、思いっきり演劇をやって、遊んで、バイトして、すごく楽しかったのですが、このまま大学を辞めてしまいたいという気持ちにはなりませんでした。あ、私ってちゃんと勉強がしたいと思ってるんだ、とちょっと安心して大学に戻りました。

離れると見えてくるものがある的なことなのか、復学してからはなんか授業がすごく楽しくて、レポートやプレゼンに真面目に取り組めるようになったし、卒論もかなり頑張って書きました。こないだ恐る恐る成績表を見に行ったら卒論の評価がAだったので本当に嬉しかったです。

ICUで学んで、胸を張れるような具体的な成果、例えば英語がペラペラになるとか専攻した分野(社会学です)についてものすごく深い知見を得たとかそういうのは本当になくって、私にはそのことを恥じる気持ちがあります。ほんとにいったい私は大学で何をしてきたんだ?でも今の私は、考えることや、本や資料を読むことを楽しいと感じられていて、そういう状態で卒業できたことっていいことなんじゃないかと思うわけです。

母はよく「教育は親ができる最大の投資だ」と言っていました。すごく正しい、正しいと思うのだけど、私はこれを言われるのが苦しくて、だってデカい投資に見合うだけの利益を私が返せる保証なんてないんだよ?うちの学費ってほんとバカ高くって、ここまで私が書いてきたようなことって客観的に見たら「無」なので、たぶん投資としては失敗です。なので申し訳ない気持ちがやっぱあるんだけど、

でも、私は、ICUで学ぶことができて本当によかったと思っています。本当に。

だから今度母に会うときにちゃんとお礼が言えたらいいな。言えたらいいなとかじゃなくて、言わなきゃですね。言います。

それから受験の時にお世話になった先生、高校〜大学で教えてくださった先生、先輩と後輩とお友達と、あともう授業で一回だけ喋った人々とかにも感謝の気持ち!東京に来て、ICUに入って、とても良い時間を過ごさせてもらいました。ありがとうございます。

大学の振り返りを書こうと思ってたのになんか母の愚痴記事になってておれってなんてダサいんだ…と落ち込みました!このnoteは何かを誰かのせいにできてた時期の最後の記録なのかもしれない。これからは全てにおいて自分の意志と責任でやっていくんだぞ!戒め!それってとっても怖いけど素敵なことでもあるはずだよね。

新生活、がんばります!


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