ブックレビュー:にわとりが先か、卵が先か?女性の「私なんて」問題。

さて、少し前に呟いたブックレビューにまつわるツイートについて、多少のいいね!やRTをいただいたので、初めてのnote投稿に際して、こちらの本のレビューを選んでみました。

少し反響があったという該当のツイートはこちら。

さてみなさん、こんな経験はないでしょうか。例えばあなたが女性の場合、自分や周囲の女性社員よりも仕事ができるとは思えない(仕事内容が雑だったり、あらゆる思慮が欠けるような行動をとったり・・・)と思える男性社員が、「自分はデキる」と疑うことなく評価者にアピールしながら、どういうわけだか実際に出世をしていく。あるいはあなたが男性の場合、仕事ができると周囲から一目置かれるような女性でも、昇進を打診すると嫌に謙虚で、「私では皆さん納得されないと思うので、他の方を当たってください。」と自信のなさそうな返答をする。この本は、こういう誰もが経験した事がある、男女の中にある自信格差(Confience gap)について、あらゆる世界の女性リーダーへのインタビューや科学的なエビデンスを持って検証した本になっています。

世界の大企業にFacebookを押し上げた敏腕のひとり COOのシェリル・サンドバーグでさえ「この役職に自らが適しているという自信がなかった」と証言しているように、米国において何の遜色もない経歴持ち、さらには特に熾烈な差別と戦う必要がないはずの白人女性である彼女でさえ、自身の役職において才能が足りないように感じていた、というのは驚くべき事です。本の中では、彼女だけでなく、オリンピック選手、政治家や、政府高官、経営者に至るまで、数々の才能ある女性が同様の「私達は男性に比べて、自らの能力に自信を持つ事ができない」といった趣旨をインタビューで答えています。

一方で男性はというと。女性に比べて自身の能力をそこまで疑うことなく雇用主に昇給の打診をし(カーネギーメロン大学での調査によると、昇給の交渉をする男性は、なんと女性の4倍!)、または仕事内容の欠陥を指摘されても「まあ僕の考えは間違っていないと思いますけどね」と悪びれる様子もない・・・。あはは、目に浮かぶ(笑)なんにしても、これ、女性の立場からすればさかのぼること小学生の時から「男の人って、なんでそんなに自分のやってる事が正しいと信じ込めるの?もしくは、自分の行動の是非を考えたこと、なさすぎじゃない?」と思った経験が数知れないわけです。さらには、私には2人の息子がいるわけなんですけど、3歳の長男が通う保育園の女の子を見ても行動の前に少しジッと考えて「これは先生に怒られるんじゃないか?」という思慮深さがあるのに対し、男児のそういった考えのなさよ・・・。それもそのはず、男女においては先天的には脳の構造や出ているホルモン、後天的には社会的な育てられ方(育ち方)が違うのですよね。私のツイートに関しては、こちらの後天的な「育てられ方」について本書で描かれていることを簡潔に述べたものになっています。

ツイートにもありますけど、女児は早くから大人の顔の表情の変化を読み取る事に長けています。自分の行動を大人がどう評価するか?をよく見て、褒められた内容に応じて自らの行動を決定しているわけです。つまり女児の行動の基準は早くから自分ではなく他者に預けられがちだという事になります。自分のやる事の基準が他人にあるという生活を続けていくうちに、深刻な男女間の自信格差が生まれる事への指摘がされています。実際に男女におけるこの自信格差が、「のろい」として収入や社会的立場にも影響を与えているわけで、ひとことに「男の人って自信たっぷりよね〜」みたいな笑い話ではないですよね、というのが本書の出発点です。

ところで、この「女児はどんな行動を褒めてもらえるか?」については、その子供の育つ社会が考える女児のあるべき姿への価値観が圧倒的に反映される事になります。例えばとある女の子が育つ社会において、「自分の考えに自信を持つ」「意見を戦わせる姿勢が評価される」という評価基準が持ち込まれた場合には、先天的な脳やホルモンの差を十分に埋めうるような「自信」の形成につながる可能性もあるわけです。実際に女性が権力を持つような社会では、圧倒的な自信に支えられた女性リーダーの姿を見る事ができます。

「女がすべてを決める島」は、男にとっても「究極の理想郷」だった!|母権社会ギニアビサウを訪ねて クーリエ・ジャポン

https://courrier.jp/news/archives/77456/

私はたまたま、男性が力を持つ社会において女性の自信がなぜないのかをひとつの切り口として語っていますが、たとえば性的マイノリティや、社会における人種のマイノリティ間にも、もしかすると自信格差はあるのではないかと思わざるをえません。自信とは自分の意思決定を誰かが疑ったり否定したりしても、根拠なく正しいと信じられる意思なのであり、長い人格形成の期間においてあらゆる行動の是非を誰かから疑われ、期待された行動に沿うことを求められてきた人間が、その意思を折るプロセスを賢さとして身につけてしまう事は十分に考えられる事です。たとえば能力に見合う自信に伴い意思決定できる優秀な人材を性別や国籍に関係なく企業や国が獲得していきたい場合には、その悪しき習慣を身につけさせない、または改めさせる事のできる風土や制度が必要になってきます。脳の構造の違いは卵だとしても、それを育てる鶏によっては物事はガラリと変わる可能性を本書は示しています。

自信の源泉とは「自尊心を育てる訓練」にこそあるのだ、というところに向けて、どのように自信を育てるべきか?子供の自信を育てるときに必要なものとは何か?という具体的な方法にも本書は踏み込んでいます。ところでこちらの本、邦題が「なぜ女は男のように自信を持てないのか?」であるものの、現代は"THE CONFIDENCE CODE"。「自信の法則」といったところでしょうか。語りの入り口としては確かに「なぜ女性は自信を持てないのか?」なのですが、本書の一番の本質は「自信はどこから生まれるのか?」「自信とはどう育てるべきなのか?」であり、自分に自信が足りないと感じる女性だけでなく、たとえば子供の自信を育てたい、もしくは部下に自信を持って意思決定をさせたい、と思っている人にもとても役に立つ内容となっているので、気になった方はぜひ手にとってみてください。

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