死神と少女感想

パッケージで一目惚れ買いし、やろうやろうと思いつつ何年か寝かせてしまった表題の作品を、最近やっと開封した。一通りコンプリートしたのでつらつら感想書く。ネタバレ注意。

○遠野紗夜
シンプルに頭抱えた。今までいろんなヒロインと出会ったけど、一番やばかった。素直に恋愛なんて応援できない。攻略キャラにときめくどころじゃない。ヒロインが心配でそればかりだった。闇が深いどころじゃない。ゲームにガチめの症状をいれないでくれ。
昔、薬物中毒で酷く錯乱した男が四つんばいで歯茎を剥き出しにして獣のように吠えてるのを警察官が取り囲む番組を観たことがある。それをずっと、私は忘れられずにいる。そういう人がこのヒロインと正面衝突すればどうなるのか。酷い傷を遺された。

○遠野十夜
一番辛かった。ヒロインが幻覚見る描写がすごく辛かった。蒼のあとにやったから人間じゃないってことはしってたけど、だからこそ辛かった。初手で日生やってたときに、あれだけ妹に執着してた兄の存在が急にぷつりと途絶えて逆に怖かったが、こういうことかと頭を抱えた。いるけどいない。触れられるけど触れられない。あなたは千代が見えてないと言ったけれど、それもやはり嘘だったのですね。ところでハッピーエンドのあれ、本当に現実の話ですか??速達でお返事ください。

○蒼
ヒロインによって人間にさせられた男その2。その1は十夜。いや、正真正銘こっちは人間だったけれど。
あとお前が運命の男で賞を受賞した。このこやってるときにずっといろはがちらついて仕方なかった。
ダブル死神以外のルートだと必ず消息がわからなくなるんだけれど、たぶん、十夜の存在が消えたことによって本物の死神になったんだろうな。彼を救うのも殺すのもヒロインちゃん。個人的には後味が一番爽やかだった。最後にやるのがおすすめ。

○日生光
日生光の話をしよう。この男の真相は本当に頭ぶん殴られた衝撃だった。偽物ってなに。本物ってなに。せめて記憶喪失に留めてくれ。お前のせいで他のルートでもヒロインちゃんぼろっぼろになってたし、私も泣いた。継母につぐ喪失をもたらした男。
でも、ヒロインちゃんを救うためのスピードは目を見張るものがあった。偽物エンドも、本物エンドも用意されていて、どちらもすき。
ラブシーンに入るのが早いわ回数は多いわでびっくりしたけど、全部クリアして納得した。まあ、ただ単に好きな女の子とイチャイチャしたかっただけかもしれないけど。
気になったところは謎の協力者の正体(なぜか私の中だと夏目くんのフラグが立ってる)と、日生光(偽物)の年齢。絶対18歳じゃないでしょ。

○桐島七葵
物語の傍観者でありながらあとがきでとんでもない爆弾を落とした男。幼少の頃から人には見えないものが見えていて、ある意味主人公と似た境遇にいた。千代をきっかけに普通の人たちと同じ視野になる。
ハッピーエンドで子どももいたけど、お兄さんの正体、気づいてたのかな…。桐島ルートも日生ルートも結局ヒロインは真実には蓋をしたまま忘れ、新たな生を歩んでいる。もし真実を知ったとして、彼らの手を取れたかどうか…。

○千代
狂わされた。あつ森の秋桜気軽に伐採できない身体にされた。物語に出てくる御伽噺のなかで一番すき。ライターの方に熱い拍手と抱擁と金一封を送ります。
おそらく、秋桜の思念とそれに引っ張られたあの男の霊が合体した存在が千代だと思うのだけどどうだろう。
無邪気なところも人ならざるものっぽくてすき。桐島さんとの関係性も大変よかった。切ないエンディングだけど、彼の話が一番きれいだと思う。
桜の盆栽手に入ったら真ん中においてあげるね。

○春夫へ
どうして十夜と話できたの??どこまで見えていたの??何者??蒼への関心の薄さもそうだったけど、お前が一番こわい…。

○夏帆ちゃんへ
遠野十夜ルート終わったあと放心してた私を救ってくれてありがとう。やっぱり親友エンドに勝るものはない。


○まとめ
物語のなかで何度か幻想というキーワードが強調されてた。まさにこの物語の本質だけど、ファンタジーを期待していた私にはあまりにも生々しくリアリティーのある幻想だった。おそらく、switchに移植されることはないだろうけれど、私のようにふと手に取った誰かの傷を抉り返さないことを願う。
一生忘れない。それくらい、刻み付けられた作品だった。